愛川欽也 死去

   

text:高良俊礼(Sounds Pal)

役者 愛川欽也

高倉健、菅原文太といった大物俳優の訃報が続いたが、私達「昭和のTVっ子」にとってはまた一人テレビの顔がいなくなってしまった。

愛川欽也といえばまず役者である。

石原裕次郎、長門裕之、大橋巨泉、坂上二郎、藤村俊二といった錚々たるメンツと同じ年である(いわゆる「昭和9年組」)。

役者としてはもちろん大物であるが、私の中で「俳優、愛川欽也」といえば菅原文太との共演作「トラック野郎」で、演じた、とことんドジでおっちょこちょい、おまけに貧乏子だくさんという、憎めないキャラの「やもめのジョナサン」のコミカルなイメージがあって、先に挙げた重鎮達のような重い存在感ではなく、どんな役柄にも彼が演じる役どころには良い意味での軽薄さと愛嬌があって、その演技からにじみ出る人柄を思いながら楽しんで見ていたものだ。

司会者 愛川欽也

しかし、多くの人々にとっては、愛川欽也といえばバラエティ番組の司会者、あるいはうつみ宮土理とのおしどり夫婦としての「キンキン」であろう。

彼が「なるほど!ザ・ワールド」「出没!アド街ック天国」という、バラエティとしては驚異的な人気番組の司会を長年に渡って務めた。

どの番組もテンポがよく、彼自身が持つ”軽妙なリズム感”があった。

人情の人

それにやはり人情の人である。

彼が司会する番組には、どこか独特の団欒的な暖かさがあったのかも知れない。いや「かも知れない」と書きたくなるほどそれはじんわりと、そこはかとなく滲み出るものであったのだ。

晩年には「アド街ック天国」に長年携わってきたこともあり、独自の「街」に対する考え方を持論として述べていた。

「街というのはやはり人の暖かみがあって、それぞれ個性的な店があって、それが街全体の個性になっているもの。現代の画一化されてゆく街並みを見ていると、どうもそれは違うんじゃないかというような気がする」

と、いった感じの彼の発言には、やはり「昭和っ子」としての人情の深さと、それに基づく信念みたいなものが感じられ、私も「街っ子」としては大いに共感した。

“キンキン”は「テレビを点けたら当たり前のようにいる人」だった。

普段から強く憧れていたという訳では決してなかったが、「当たり前のようにいる人」がいなくなるということはやはりとてもショックでそして淋しい。

ご冥福をお祈りしたい。

記:2015/04/19

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●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

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