カフェ・モンマルトル

高野雲の雑記帳。音楽・映画・読書・模型。

inner flight #1/ベースソロ

      2022/12/14

tunnel

カフカとドルフィー

エリック・ドルフィーの死後、ブルーノートから発表された『アザー・アスペクツ』というアルバムがあります。

Other Aspects
Other Aspects

一言、怪しいアルバムです。
「ジャズ的」な4ビートのリズムを期待するとあっさりと裏切られる実験音楽。

そして、曲によっては秘密結社の儀式っぽい、なんともいえぬ「のぞいてはいけなかった世界」的なムードが濃厚に音から漂いまくっているので、まあ聴く人を選ぶアルバムだといっても過言ではないでしょう。

そういえば、その曲のタイトルは《ジム・クロウ》だった。
1曲目ね。
ジム・クエルじゃないよ(それはガンダムのモビルスーツだ)。

もっとも、私はこの『アザー・アスペクツ』というアルバムは大好きですけどね。

最初にコレを聴いた瞬間から、「そうそうそうそう、コレだよ、コレ!」とジャンプをして天井に頭を打ったくらいですから、いかに私の脳味噌の中で形作られている感受性とやらがイカれているかが分かります。

冒頭のジム・クロウの怪しい…と通り越した「怪奇スリラー」というか「怪奇大作戦」的なピアノを弾いている人は、「unknown(知りません)」との表記ですが、近年では、ピアノの主はボブ・ジェームスだという説が有力ですね。

えっ?! あの爽やかフュージョンのボブ・ジェームスが?! と最初はノケぞったものですが、案外、こういうオドロオドロしいことを演り、地獄の窯の淵を見た人だからこそ、その反動と「もう怖いもんないもんね」的な開き直りから、あっけらかんと涼しい顔をして爽やかフュージョンを演れるようになったのかもしれません。

もちろん、ピアニスト・アンノウン(もしくはボブ・ジェームス)の《ジム・クロウ》のような怪しい儀式のようなナンバーから、フリージャズがかった演奏、それに民俗音楽的なアプローチの演奏もはいっており、おそらくドルフィーにとっては実的なレコーディングだったのでしょう。

生前ドルフィーは「この音源は発表してくれるな」と友人に言っていたという話をどこかで読んだ記憶があるのですが、思いっきり出ちゃってますね~。

このエピソードは、なんだかカフカを思い出します。

フランツ・カフカは、友人のマックス・ブロートを遺稿管理人にし、自分の死後に自分の作品(メモや書簡、草稿も含む)を焼き捨てるように遺言しましたが、友人はカフカの作品を発表しちゃいましたからね。正確には、『判決」『火夫』『変身』『流刑地にて』『田舎医者』『断食芸人』のみを自身の作品とし、それ以外の作品はすべて焼却するようにと頼んでいたそうなんですが、ブロートはその約束を破ってなぜか発表しちゃった。

というより、なぜカフカは自ら燃やさずに人に頼んで焼き捨てるよう指示をしたのかがよく分からないのですが、生きている間は、自分が書いたものは存在していて欲しかったのかな?

幽界フルート

まあそれはともかくとして、天国のドルフィーにとっては、おのれ~出したヤツめ!なのかもしれませんが、ドルフィー好きとしては、ドルフィーのまったく別の一面を垣間見れた嬉しさと、覗いてはいけないものを覗いてしまった背徳感からく妙な喜びのようなものもあり、いつも複雑な気持ちで聴いております。

特に《ジム・クロウ》と《インプロヴィゼーション・アンド・タクラズ》という二つの曲がヤバ怪しくて最高なんですが、この2曲に関しては、いずれ別な記事で触れるとして、これらヤバヤバ曲のナンバーの合間に挟まれるフルートソロがいいんですよ。

幽玄な雰囲気をたたえている上に、ドルフィーらしい軽やかさもあるこれらの曲のタイトルは《inner flight #1》と《inner flight #2》。

おお、タイトルかっこいいぞ!

ベースで「内面への飛翔」を試みたら、どんな感じになるんかいな?と考え、当時愛用していたフェンダー75年製ジャズベースのフレットレス、ピックアップはバルトリーニを取り付けたものに、マクソンのアナログディレイをつなぎ、何も考えずに即興で弾いたものを録音したのが、以下の動画でアップした《inner flight #1》です。

ドルフィーさん、すいません!タイトルをパクってしまって。

録音したのは1993年なので、もうあれから22年も経っているのですね。

月日が経つのは早い!

しかも録音した季節は真夏の夜だった記憶が。

汗水たらしながら、自室の隅っこでテープ式のMTRにシールドを差し込み、何も考えずにフラフラとベースを弾き、録り直しはすることなく、一発で録音を終了させた記憶があります。

20年ぶりぐらいに聴いてみると、ディレイをかけすぎな気もするのですが、それがかえて眠気を誘うので、個人的にはなかなか心地よいマドロミミュージックかなぁ、などと思っておりまする。

ジャズベース特有の、カドカドした成分が綺麗に取れて、甘く丸~い音になっているので、この音色は個人的には結構気に入っています。

記:2015/10/08

 - 創作