カフェモンマルトル

text:高野雲

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ジャズ喫茶のイタい客 その2

      2016/11/16

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beer

その客は、閉店1時間前に突然やってきた。

50代半ばの恰幅のいい自営業・社長さんタイプ。

したたかに酔っ払っているらしく、心なしか千鳥足。

ただし、機嫌はよく、「たまにはジャズなんかお洒落に聴くのも悪くないだろ? なぁ、おい?」と、付き添いの30代半ばの部下とおぼしき青年に豪快に語りかけている。

「マスター悪いね、ビールをもらおうか、お前も、同じでいいよな?」

店中に響きわたる大きな声。
痩せて、気の弱そうな付き添いの青年は、ただただ社長殿のいうことにうなずくばかり。

豪快にビールを飲み干し、若者に語りかける。

「カーッ! やっぱりジャズはいいねぇ。 男は酒とジャズだよ。分かるか?」

「俺が若いころは、もっとこういうジャズを流す店がたくさんあったんだけどねぇ。今は少なくなってきているなか、こういう店は貴重だよ! うん! マスター、えらい!」

「うちはべつに骨董品屋さんじゃないんですけどね」と自嘲気味に小さく笑うマスター。

「おう、マスター、ところでリクエストしてもいい? やっぱ、こういう店に入ったらリクエストしないとね、リクエスト

「何かけましょう?」

「そうだなぁ、コルトレーンかけて、コルトレーン。」

「コルトレーンの、どのアルバムですか?」

「う~ん、そうだなぁ、《レフト・アローン》がいい! コルトレーンがやってる《レフト・アローン》かけてよ。有名なやつあるじゃない」

「あのぉ~、コルトレーンは、《レフト・アローン》演ってないんですけど……」

「そんなバカな! あの有名なコルトレーンが、有名な曲やってないわけがないだろ!?

「といわれましても……」

「おかしい、バカな、有名な曲だし、コルトレーンだって有名なジャズマンだよ!?それなのに何で演ってないんだ!」

大きい声でブツブツと独り言を繰り返しながら、結局、その男性と部下は、ビール1杯を空けて店を後にしましたとさ。

記:2010/04/27

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