カフェモンマルトル

ジャズと映画と本の日々:高野雲

ニンテンドーDSを買いたがる親たちと、「脳トレ」本ブームに疑問符

      2015/05/31

Pocket

enogu

安易な「脳トレ」ブームは、いかがなものか

今日は息子の音楽教室だったので、いつものように迎えに行きました。

レッスンが終わる時間前になると、待合室にはお母さんたちが集結するのです。

この教室が終わるのは、だいたい12時半から午後1時の間。

午後からは、サッカー教室に通わせている親や、バレエ教室、あるいは英語教室に通わせている親もいるので、彼女らは、水筒と弁当を持って、子供のレッスンが終わるのを待っています。

子供が教室から出てくると、この待合室で弁当を食べさせて腹ごしらえをした後、次の教室へと繰り出すわけです。

お母さんたちの世間話に本を読みながらも聞き耳を立てているのが、いつもの私。

今日はニンテンドーDSの話題でした。

このゲーム機は大人気なゆえ、品不足が続いているようです。

だから、たまに出荷されると、おもちゃ屋さんは開店前から行列になるそうで。

先週か先々週も、このゲーム機が近所のおもちゃ屋さんに入荷するという情報が流れ、開店前から行列になったそうです。

「それでね、朝早くから並んだんだけれども、入荷が少なくてね、もうやんなっちゃったわよ」

「うちなんかね、せっかくだから2台買っちゃったわ。」(←2台買うなよ)

「今、学校ではみんな持っているのね。」

「うちの主人もやってるわよ」

そんな会話が聞こえてきます。

「ご主人もやっている」というゲームは、たしか何かのテレビで松島奈々子の脳年齢が56歳とかだったとかいうゲームのことでしょうか?

東北大学の脳学者の川島教授の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」というソフトが、この番組で有名になったみたいですね。

このテレビの影響か、いま、川島本のちょっとしたブームです。

言っちゃ悪いけど、中身は漢字ドリルや、計算ドリルに毛の生えただけの内容にもかかわらず、表紙は川島先生がデカデカと出ている本を書店で見かけた方も多いと思います。

これらの本って、じつは、川島先生自身の出題ではありません。

川島人気にあやかろうとしたいくつかの出版社が、足し算や漢字のカンタンな問題を作って、川島先生から承認だけをもらい、川島先生監修の問題集を出版しまくっているというのが現状です。

そして、どれもがそこそこ売れているようなので、DSのゲームと連動して、「大人の脳を鍛える」本も一つのブームとなっている感もあります。

中には、川島先生が監修ということの般若心経に出てくる漢字をなぞるだけの本も某出版社から出版されており、ま、それはそれで年寄りは買うのだろうけれども、なんだかこの現象も行き過ぎなような気がしないでもありません。

それはそうと、川島教授もよくこのような本にも出版を承諾したなぁ。

「先生、今度このような本を出版したいのですが、いかがでしょうか? いえ、先生がお忙しいことは重々承知いたしております。問題はこちらで作りますので、目を通していただき、了承をいただくだけで結構ですので。 先生は監修者です。監修者としての先生のお名前だけを拝借いただければ…。いえ、監修料はキチンとお支払いいたしますので…」

このような出版社からのオファーにOKしまくっているんでしょうね。

かくして、川島教授の顔写真や、イラストがバーン!と表紙に大きく掲載された「川島隆太の脳を鍛える△△△」という本が今日も書店の店頭に並ぶわけです。

あたかも、川島先生の著書であるかのようにね。

よくみると、“出題:カフェ・モンマルトル”みたいに小さなクレジットが表紙や奥付けに乗っかっているんですけど(笑)。

ある筋からの話だと、さすがに東北大学側のほうから川島先生のほうに、「出すぎ・露出しすぎ」のお咎めがあったらしく、今後出版される川島本の表紙にはデカデカと先生の写真は使われなくなるかもしれません。

そのぶん、先生の顔イラストがデカデカと表示されるようになったりしてね(笑)。

でもね、川島先生の主張って、人間、前頭前野を鍛えると脳は若返るってことでしょ?

で、彼の著作にハッキリと書いてあるけれども、テレビを見ているときや、ゲームをやっているときって、この前頭前野は、ほとんど働いていないのだそうです。

そう、DSなんかをやっている間は、まーったく脳は働いていないのですよ(別の部位は働いているのだろうけれども)。

ゲームやテレビをやっている間の脳は、我々の想像以上に働いていないという実験結果やレポートは、いくつか読んだことあります。

立ち読みレベルだったので何の本か忘れたけれども、たしか、アメリカの学者の書いレポートだと思いました。

しかし、このような実験レポートを持ち出すまでもなく、ゲームをやってると脳ってそんなに働いてないことは、私自身の経験からも断言できます。

かつては、「ゲームセンターあらし」ならぬ、「ゲーセンアラシ」だった私は、昔は塾をサボって、ゲーセンのシューティングゲームを50円か100円で何時間も粘ってました。

古くは、インベーダーゲームやオズマウォーズ。

オズマウォーズの発展版のアトムスマッシャー、それに、ゼビウス。

もっとも、得意だったのが、アトムスマッシャーと、ビウスを真似たデータイーストの「ザビガ」でした。

放っておけば、丸1日やれる自信はありました。

トイレでおしっこしている間、自分の手持ちの戦闘機は死にますが、いいんです、10機ぐらいやられても、それ以上のストックがありますから。

それに、死ぬよりも、点数が増えてどんどん手持ちの機が増えてゆくのです。

これらのシューティングゲームはパターンを体で覚えてしまえば、あとは反射で身体を動かすだけ。

テクニックというよりも、身体をゲームのパターンと規則に則った条件反射が出来るようなコンディションさえ整えば、それこそ何時間も延々と続けることが出来るのです。

だから、身体はどちらかというとリラックスしたトランス状態。

目の動きも細部を凝視するような働きをさせるよりは、薄目で全体をボンヤリと俯瞰するような型で画面全体を見渡したほうが良い。

どちらかというと瞑想をしているときの呼吸と目の働きかもしれません。

もちろん、このような状態では出来ないゲームも多かったですが、ザビガなんかは、それこそ5時間から6時間ぐらいやり続けていて、自分のストックされている機体も50機とか60機とかとんでもない数になってしまい、そろそろ家に帰らなきゃ、と思ったら、近くにいるオジサンや子供に「もう帰るから、よかったら、遊ばない?」と途中でゲームをゆずって家に帰るほどでした。

その間の数時間、私は何を考えていたのかというと、ほとんど何も考えてなかった。

めまぐるしく移り変わる画面を心地よく受け入れながら、指と腕だけが動いていたような感じがします。

あるいは、目の前で行っているゲームとはまったく違うことを考えていた記憶があります。

家に帰ったら何のプラモデルを作ろうとか、今作っている曲のコード進行はこうしようとか、シンセサイザーのあの音とこの音をミックスしたらどういう音色になるだろう?とか。

つまり、目の前のことを考えずに、別のことをボンヤリ考えていたということは、上の空だったわけですね。

だからゲームをしている間は脳が働いていないという説は、なるほど!と実感出来るのです。

もちろん、私がこのようにゲームを何時間も上の空状態で出来るようになるまでは、莫大なゲームの量をこなし、手の指や皮が水ぶくれになるほど、激しくシューティングゲームをやりこんだということもあります。

(「1942」なんかでは、最終面をクリアしたときは、手が血だらけだった)

しかし、いったんシューティングゲームに向いた身体になってしまうと、ほとんどゲームのことを考えずに、ゲームを上の空で出来てしまうという、へんな状態が出来上がってしまう。

このときの私は、確実に脳は働いてなかったでしょうね。

ゲーセンでは、私の周りには沢山の人だかりができて、小学生の子供たちからは「すげー!」と賞賛の嵐でしたが、上の空で出来てしまっていることを褒められてもまったく嬉しくなかったし、なんで、褒められているのか分からないほど、私の頭はボーっとしていた。

考えてみると、随分と時間の無駄遣いをしていたものです。

だから、私はバカなのです。

多感な時期に、ゲーセンで脳の大切なところを使う訓練を怠ってしまったから。

ちなみに、今の私も、あまり脳を働かせないで、ぼーっとしながらパソコンのキーを叩いています(笑)。

深く考えないで、脳よりも指が先にパチパチと動いてしまっています。

だから、私の駄文、あんまり真剣に読まないようにね(笑)。

もちろん書いてあることは事実だけれども、深い考察とかはまったくなしで、ただ書きなぐっているだけだなー、なんてボーっと指を動かしながら考えている私。

そんなことだから、今の段階では、まだ息子にはニンテンドーDSは与えたくないし、やらせたくはないのです。

幸い、息子は手を動かす工作や、自分の手を使って絵を描いたり、それをハサミで切ってオブジェにすることが好きなようなので、そんな状態の息子に、わざわざDSを買い与える理由もないわけで。

というか、せっかく子供が頭を使って手を動かすのが好きなのに、そんなときにゲームを買い与える親って、いかがなものなんでしょう?

ちなみに、川島先生の本、Amazonで調べてみたら、色々と出てきましたよ。

決定版! 大人から子どもまで「脳力」を鍛える音読練習帳/図解 頭がよくなる脳の使い方―カンタン脳トレーニングでできる・やる気が湧く・記憶力アップ!/頭がよくなるおりがみドリル/脳を鍛える大人の名作読本 (1) ピアノ・檸檬/脳を鍛える大人の名作読本 (2) よだかの星・一房の葡萄/脳を鍛える大人の名作読本 (3) 鼻・注文の多い料理店/脳力アップドリル1年さんすう/脳を鍛える大人の音読ドリル―名作音読・漢字書き取り60日/自分の脳を自分で育てる―たくましい脳をつくり、じょうずに使う/川島隆太教授の脳を鍛える携帯版大人のドリル/大人から子どもまで毎日続ける「脳力」日記帳/脳を鍛える大人の計算ドリル―単純計算60日/脳を鍛える大人の計算ドリル―単純計算60日〈2〉/川島隆太教授の脳を鍛える即効トレーニング/「脳力」を鍛える大人の漢字トレーニング/親子音読ペア絵本 いっしょによもうよ/げんきプリント―60歳からの読み・書き・計算/子どもを賢くする脳の鍛え方-徹底反復読み書き計算/図解 頭がよくなる 朝、10分の習慣―簡単!今日からできる記憶力・創造力・学習力アップの切り札/脳力アップドリル1年こくご/音読と計算で子供の脳は育つ-最先端脳学者の「夫婦で健脳子育て」/脳を鍛える大人の料理ドリル―料理の基本テクニック30日/この人この世界 2006年2-3月 (2006)/NHK英語でしゃべらナイト 別冊シリーズ 5 川島隆太教授の大人の英会話ドリル (CD付き)/デジタルサイエンス, オフィスサウス, 川島 隆太/あたまを鍛える指先計算ドリル/頭がよくなるおりがみドリルもっと/川島隆太教授の童謡・唱歌が脳をよみがえらせる大人の脳力ドリル―聴いて書いて歌う60日/絵でわかる!脳っておもしろい (1)/絵でわかる!脳っておもしろい〈2〉ドキドキ!心は脳のなかにある/絵でわかる!脳っておもしろい (3)/絵でわかる!脳っておもしろい〈4〉グングン!脳をきたえよう/最新版! 大人から子どもまで「脳力」を鍛える音読練習帳 世界の名作童話/川島隆太教授の「脳力」を鍛える読み書き計算トレーニング/川島隆太教授のいきいき脳体操―脳が活性化する20日間トレーニング!/川島隆太の自分の脳を自分で育てる―朝5分の音読・単純計算/脳の健康を守るげんきプリント〈2〉名作のふるさとを訪ねて編/脳が活性化する間違い探しパズル/脳が活性化する日本語パズル〈2〉漢字編/脳が活性化する数字のパズル ナンバープレース編/元気脳練習帳 脳が活性化する日本語パズル―クロスワード編/般若心経脳ドリル 写経と読誦―元気脳練習帳/読み・書き・計算が子どもの脳を育てる/朝刊10分の音読で「脳力」が育つ/を鍛える大人の名作読本〈6〉山椒大夫・足袋/脳を鍛える大人の名作読本〈5〉走れメロス・罌粟の中/脳を鍛える大人の名作読本〈7〉杜子春・旅情の海/脳を鍛える新聞の読みかた―毎朝10分の音読と簡単トレーニングで脳がめざめる/脳力アップドリル2年算数/脳力アップドリル4年国語/脳力アップドリル4年算数/脳力アップドリル5年算数

すごい量! でも、まだまだほんの一部です。

言っちゃ悪いけど、

計算も、

物語の朗読も、

漢字問題も、

パズルも、

料理も、

般若心経も、

日記も、

みーんな、タイトルに「川島隆太」という名前と「脳を鍛える」の2つがつけば、既存の資源のリサイク&再編集でなんでも出来ちゃうって気がするのは俺だけ?

もし、私が有名な脳学者だったら、

「脳学者・高野雲の頭がよくなるジャズ」とか、「高野 雲のベースを弾いて脳を活性化させる!」とか、「ブッカー・アーヴィンで脳を鍛える」なんて本を出したいくらいだよ。

もちろん、ボケ防止や、小学校の復習でドリルをやり直すことを否定はしません。

やりたきゃやれば? です。

でも、脳を鍛えて、

あなたは何をやりたい?

何を実現したい?

のほうが問題です。

「脳を鍛えたら、なにかが出来るはず」

この期待感は、

「宝くじが当たれば、あれも買えてこれも買えるはず」

と皮算用するのと変わらないような気がする。

本当に必要なもの、欲しいものが分からない。

しかし、欲しいものが出来たときの“たくわえ”は欲しい。

“たくわえ”は無いよりあったほうがマシ。

この“たくわえ”とは、すなわち“お金”であり、“脳力”というわけですか。

目的と結果が本末転倒してませんか?

投資ブームに、脳力ブーム。

これって、現代人ならではの病理を象徴した現象…、だなんて言うと言いすぎなのかな?

記:2006/04/22(from「趣味?ジャズと子育てです」)

DSくださる話を断る

と、先日、「ニンテンドーDSは、まだ子供にはやらせないぞー」といった旨を書いた矢先に、「雲さんの天才息子さんにニンテンドーDSとソフト差し上げます」という話が某スジから来ました(笑)。

なんでも、息子に知育ソフトの何本かをやってもらって、感想が欲しいそうです。

いわゆるモニターですね。

ニンテンドーDSでもいいし、DSライトどちらでも欲しいほうをくださるとのこと。

「差し上げますんで、息子さんが好きそうなもの持って帰っていいですよ」

目の前に並べられた何色かのDSとDSライト、それに色とりどりのソフトのパッケージを目にして、一瞬生唾をゴクリと飲み込みましたが(笑)、ゴメン、うちゲームまだやらせない方針なんだよ、と言って断わりました。

なるほど、そういう方針ならば仕方ないですね、結構そういう家庭も多いようですから強制は出来ません。スイマセン、余計な話を持ちかけて。

彼はすぐにこちらの気持ちを察してくださいました。

……こちらこそ、スイマセン。

家に帰ると、息子は机の上で、額縁を作っていました。

自分が書いたカブトムシの絵を派手にディスプレイしたかったらしく、たくさんの折り紙とセロハンテープをベタベタと貼り付けていました。

お世辞にもカッコイイ額縁とはいえません。

しかし、「うーん、いまいちだなぁ。」なんて首をかしげながら、折り紙をハサミで切り取り、丸めたパーツをセロテープでペタペタと貼りつけている一生懸命な姿を見た私は、DSをもらえるという話、断わってよかったなぁと思いました。

記:2006/04/25

 - 雑想 雑記 , ,

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。