カフェモンマルトル

text:高野雲

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「ある日突然」に備えて、あなたは何をしていますか?

      2015/06/03

dumbbell

こちらに「ある日突然”を期待しちゃいかんよ」ということを書きましたが、「ある日突然」に備えて努力することは大事だと思っています。

というより、誰にでも、一生に数回は“ある日突然”のチャンスがめぐって来る(と思う)。

え? そんなこと今まで生きていたけど一回もないよ、という人は、もしかしたら、目の前にやってきたチャンスに気付かなかっただけなのかもしれません。

大事なことは、目の前の“ある日突然”に気づくか気づかないか、“ある日突然”やってきたチャンスに備えていたか、いないかだけの話だと思います。

歌手になりたい人がいるとします。
「歌手になりたい」。
これって夢ですよね。
願望です。
何も行動をせず「なりたいな」と思っているだけでは、いつまでたっても夢のまま。願望のままで終わってしまいます。

ところが、「歌手になりたい」と努力をしてる人は、「歌手になる」は願望でも夢でもなく、目標です。

願望を持った人は、チャンスをモノに出来ないかもしれませんが、目標を持った人は、チャンスをモノに出来る可能性があります。

だから、“ある日突然”歌手になれるチャンスが訪れたときに、そのための下準備をしていた人は幸運を手にする可能性はありますが、「歌手になりたいな、なれたらいいな」と頭の中で妄想をクルクルさせているだけの人は、「オーディション受けてみない?」という話がきても、棒に振ってしまうのです。

大西順子というジャズピアニストがいました(います)。

彼女は、毎晩ジャズピアニストになることを夢見て、チャンスを拾おうと、日夜留学先のニューヨークのジャズクラブに通っていました。

もちろん、ジャズクラブに通うだけではなく、昼間は一生懸命ピアノの練習をしていたし、当時から第一線で活躍できるだけの実力はきっとあったと思います。

しかし、実力があったとしても、彼女に足りなかったのは“チャンス”。

“チャンス”や“きっかけ”がなければ、いつまでたっても人前で演奏するプロのピアノ弾きにはなれません。

だから、日夜ジャズクラブに通い、声をかけられるのを待った。

しかし、いっこうにそのようなことはない。

もうダメだ。

今日ジャズクラブに行ってダメだったら、明日飛行機で日本へ帰ろう。

そう決意してジャズクラブにいつものように行ったら……、なんと出演するバンドのピアニストが遅刻しているらしい。

1セット目はピアノ抜きでやるしかないな、という雰囲気になったところで、「私やります!」と彼女はピアニストとして、そのバンドのサイドマンを務めました。

彼女のピアノがあまりに素晴らしかったので、リーダーは、2セット目の前に遅れてやってきた自分のバンドのピアニストはその場でクビ。大西順子がバンドのレギュラーピアニストの座を射止めたそうです。

アルトサックス奏者、ケニー・ギャレットのバンドに参加し、ヨーロッパなどをツアーしてまわったりと1年間活動した後に、たまたまニューヨークに新人発掘にやってきていた日本人の大御所プロデューサー・行方均氏の目に止まり、日本で鮮烈なデビューを果たし、一時期は、男勝りにゴリゴリ弾く硬派なピアニストとして脚光を浴びたのです。

彼女のサクセスストーリー、私はかなり端折ってかいてますので、トントン拍子に進んだ運の良い話に思われるかもしれませんね。

実際、運も良かったのかもしれません。

しかし、普段、ピアノの練習をミッチリとやっていなければ、ピアニストが遅刻したときに「私やります!」と手を挙げられなかっただろうし、仮に「私やります!」と参加しても、へたっぴぃなピアノだったら、1セット目で「はい、ご苦労さんでした」で終わっていたことでしょう。

つまり、ピアニストが遅刻したことは、“ある日突然”の幸運だったかもしれませんが、その“ある日突然”のチャンスをモノにするための努力を彼女は普段からしていたということが重要なのです。

この手の話は、とくに、芸能の世界では枚挙に暇がありませんよね。

『Wの悲劇』ではありませんが、舞台などで主役が降板し、自分に白羽の矢が立った場合は、普段から主役のセリフを覚えたり研究をしていないと、勤まりませんからね。ほかの人に主役の座を奪われて終わりです。

私の場合も、数年前に“ある日突然”がありました。

ジャズ本の編集者から、「ジャズの名曲の本作ってるんだけどさ、手伝ってくれない?」と言われたときです。
執筆者は、私が普段読んで勉強しているジャズ本の著者たち。
「え~、こんな私の先生のような人たちと一緒にジャズのこと書いていいの?」と思いましたが、気が付いたら「やらせてください」と返事をしていました。

なぜなら、それまでに、ジャズのメルマガは数百号発行していましたし、ホームページにもジャズのことをたくさん書いていたので、これだけ書いていればなんとかなるだろう、と思ったのです。

実際、書きはじめると、すいすいと書き終え、締め切りよりもはるかに早いタイミングで原稿を提出することが出来ました。

これは、下手の横好きで、飽きもせず、せっせとジャズのことを書き続けたことで、「書くこと」の基礎体力がいつのまにか出来ていたからだと思います。

もし、ジャズが好きとはいえ、「ジャズについて書く」ことをしていなければ、「やらせてください」と引き受けてもロクな内容を書けなかっただろうし、締め切りも守れなかったかもしれません。

私はジャズライターになりたいと思ってメルマガやHPにジャズのことを書いていたわけではありませんが、やはり、「書いてみない?」と声がかかる“ある日突然”に応えられるだけの努力はしていたんだなぁ、と今となっては思います。

で、一つ何か出すと、次につながりやすいんですね。
依頼者は、必ず相手の実績を調べてから依頼を出しますから、実績は多ければ多いほど良い。

だから、“ある日突然”のチャンスを一つだけこなせば、次からは“来るべき必然”に変わります。おかげで、今現在、ありがたいことに、年末か年明けに出るある有名な落語家のジャズ本の監修、執筆の依頼もいただくことが出来ました。
でも、書くのが大変なので、サボッています(笑)。

あなたにとっての“ある日突然”は何でしょう?

「君、やってみない?」 「あなたに任せてみようと思うんだけど」は、本当に“ある日突然”やってきます。

相手があなたに望むことに応えられるだけの下準備、努力をあなたはしていますか?

下準備をせずに“ある日突然”のチャンスをモノに出来てしまうのは、昨日も書きましたが、マンガの世界だけの話。

あるいは、もともとその人に才能があったからです。

才能がないと自覚している人は、地道な努力でカバーするしかありません。

▼関係ないけど、私が好きなアルゼンチンの映画。
ある日、突然。 [DVD]ある日、突然。 [DVD]

映像がそこはかとなくオシャレなので、2回観ました。家でも2~3回観ている。そんな私のには、きっとパンクロッカーの血が流れているのだ(?)よく分からないけど(笑)。

記:2007/09/26(from「趣味?ジャズと子育てです」)

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