カフェモンマルトル

text:高野雲

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花芯/試写会記

      2017/05/23

kashin

瀬戸内寂聴が文壇から干されてた作品

先日『婦人公論』に瀬戸内寂聴と小保方晴子の対談が掲載されていましたね。

婦人公論 2016年 6/14 号 [雑誌]婦人公論 2016年 6/14 号/対談:瀬戸内瀬戸内×小保方晴子

この対談は、寂聴さんから小保方さんへの呼びかけで実現したものなのだそうです。

なぜ、寂聴さんが小保方さんに声をかけたのか?
そして、「小保方さん、あなたは必ず蘇ります!」と優しい励ましの言葉をかけたのか?

それは同じ女性として他人事だとは思えなかったからなのでしょう。
寂聴さんも若かりし日、まだペンネームが瀬戸内晴美だったころに、世の中から「干されて」いたことがあったから。

寂聴さんも若い頃は「子宮作家」などの誹謗中傷を受け、文壇からまるまる5年間干されていたことがあるんですね。

現在、「STAP細胞騒動」で世間から干されている状態の小保方さんを見て、若い頃の自分を重ね合わせ、そして、今現在はどん底の状態から立ち直っている自分の姿を見せたいと考えたのでしょうね。

そして、瀬戸内寂聴が文壇から干されるキッカケとなった「問題作」が『花芯』。
この「問題作」が映画化されました。



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試写室、混んでたよ

この『花芯』が映画化されたので、さっそく試写会に行ってきましたよ。

試写会場は銀座の東映。

スペースの狭い「第二試写室」だったということもあったのですが、補助椅子が出るほどの盛況。
多くの方が注目している作品ということなのでしょう。

村川絵梨

主演は村川絵梨。

村川絵梨といえば、個人的にはNHKの朝の連続テレビ小説の『風のハルカ』でヒロインを演じた、元気な姿が印象に残っています。

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はちきれんばかりの健康少女だった印象ですが、あれから約10年、村川絵梨は成熟した大人の女になっていました。

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松たか子と竹内結子を彷彿とさせるルックスに成長していた村川絵梨。

角度と表情によっては、若い頃の木村佳乃的でもある彼女が醸し出す雰囲気は、正直、妖艶さは不足しているけれど(むしろ共演していた毬谷友子が妖艶だった)、凛として、ちょっとクールな立ち居振る舞いは、この小説を読んだことのある人からしてみれば、もしかしたら賛否両論はあるかもしれませんが、これはこれで一つの正解なのかもしれません。

あまりに露骨にドロドロした「イヤらしさ」が醸しでる女優よりも、清楚な佇まいでありながらも、妖艶さを微量に放出するぐらいの温度感のほうが、原作のテイストに合っているかもしれませんね。

原作を読んでからのほうが楽しめるかも

恋愛文学の映画化ということもあり、また終戦前からストーリーがスタートしていることもあり、当時の時代背景を考えれば、あまり過激な性描写はありません。

そこらへんは、あまり期待しないようが良いかも。

相手の男が違っても「手順」、「段取り」が、似たり寄ったりで、かつ単調なのは、べつにAVではないのだし、プレイ面に重きを置く演出は最初から意図していないのでしょう。むしろ主人公・園子の心情描写に重点を置いているわけなので。

映画全体のトーンは、エレクトリックベースのエフェクターで言えば、コンプをかけている感じというのかな。
つまりコンプレッサーをかけて、過剰な出力が一定のレベル以上には達しないように抑えている感じ。つまり、ダイナミクスの振幅が、テレビドラマのようには激しくないんですね。

そのへんが、この映画に漂う気品にもつながるのだけれども、逆に言えば、微細な主人公の心情変化を追いかけきれないと、淡々と物語が進行しているようにも感じてしまう可能性もあり、人によっては睡魔に襲われる可能性が無きにしも非ず。

そのあたりは、予備知識なしで映画を見るよりも、寂聴さんの原作を読んだ上で臨まれたほうが、よりきめ細かな描写の意味をくみ取れるのではないかと思います。

花芯 (講談社文庫)花芯 (講談社文庫)

サティのジムノペディ1番

個人的にツボだったのが音楽。

いたるところにエリック・サティの《ジムノペディ・1番》が挿入されているのですよ。

しかも、アコーディオンによる演奏の。

これが、またこの映画を彩るには相応しいサウンドなのです。

アコーディオンって、和音の重ね方次第では、音が「グチャ~ッ!」と濁って聴こえることもあるんですね。

このサティを演奏する武田秀一のアコーディオンも、至るところに和音が「グチャ~ッ!」と歪む箇所があるのですが、これが、まるで主人公・園子を象徴しているかのようなのです。

表向きは、シンプルで端正なメロディライン。
しかし、時折、シンプルで端正なメロディラインを彩る和音の響きがグチョグチョになる箇所がある。
まるで、この映画の主人公・園子の外側と内側を音が現しているようではないですか。

アコーディオンのサティが、この映画の隠れた個人的「ツボ」でした。

登場人物の心情描写を表出させた細やかな演技、見逃しているところもたくさんあると思うので、いまいちど、じっくりと鑑賞してみたいと思わせる作品でしたね。

妙に耳の奥に残るアコーディオンのサティも、再び味わってみたいし。

観た日:2016/05/31

movie data

『花芯』
監督:安藤尋
原作:瀬戸内寂聴(瀬戸内晴美)
脚本:黒沢久子
キャスト:村川絵梨、林遣都、安藤政信、藤本泉、落合モトキ、毬谷友子ほか
製作年:2016年
映倫区分:R15+

2016年8月6日よりテアトル新宿ほかにてロードショー

記:2016/06/01

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