港町~中学生の時に故郷・横浜を想って作った曲

      2016/04/30

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横浜

横浜、特に元町や本牧というのは、生まれ育った場所ということもあり特別な思い入れのある土地です。

今は亡き、元町の商店街のど真ん中、「ポンパドール」本店の並びにあった平林産婦人科で私は生まれ、その商店街の坂(『山月記』の中島敦生誕の碑があったような気がする)を登りきったところにフェリス女学院があるのですが、その手前にある山手カトリック協会の敷地内にある「みこころ幼稚園」に通っていました。

残念ながら、父親が名古屋方面に転勤することになったので、横浜で暮らしていたのは5歳の9月か10月頃までだったのですが、やはり、それぐらいの年齢までに体内にインプットされた風景や空気の記憶というのは、何年経っても忘れないものがあります。

自分の中で醸造、発酵されゆく横浜像

愛知県、そして兵庫県、そして小学校4年生の秋は東京の下町、葛飾区に転校してきた私ですが、その間も夏休みや冬休みなどの長期休みの間は、横浜に行き、祖母と祖父が住む家に数日、もしくは1週間以上滞在することが多かったですね。

ですので、横浜は、愛知、兵庫、東京と暮らしている場所は違えど、私の中では「いつか元に戻るべき場所」という認識が常にあり、親に叱られたりすると、「こんなおっかねぇ親がいる場所から脱出したい。新幹線に乗って横浜に戻ってやる!」といつも思っていたものです。

このように住んではいないときでも、心の中心部に常に存在していた、横浜の本牧界隈の風景は、私の中で少しずつ醸造され、いつの間にかリアルな横浜という土地そのものから少しずつ離れ、変形していき、自分だけの横浜に変化していったような気がします。

ヤマハ ポータサウンド

そんなときに作った曲がこの曲《港町》だったのですね。

YMOの影響もあり、中学校1年生の時にお年玉でヤマハのポータサウンドPS-3というキーボードを買ったのですが、この小さなキーボードを使い倒すほど、私はいろいろな曲を弾いたり、作ったりして毎日のように遊んでいました。

特に、今思えば、かなりチープではあるのですが、4種類のリズムの自動伴奏機能が面白く、指一本でメジャーコードの伴奏をつけてくれ、指2~3本でセブンスコードやマイナーコードをつけてくれる機能がとても便利というか、目からウロコでした。

この当時の私はピアノを習っており、左手の和音といえば、記譜された音符を拾いながら弾いていたものですが、このポータサウンドと、当時ヤマハが発行していた『ポータサウンド・マガジン』という雑誌で、はじめて「コードネーム」という概念を知りました。

たとえば、「ドミソ」という和音の響きも、譜面だと、「ド」と「ミ」と「ソ」の3つの音を読み取って左手に反映させなくてはならないのですが、コードネームの場合は、たったの「C」という一文字だけで、「ド」と「ミ」と「ソ」の情報を読み取れるわけです。こりゃ便利だと思いましたね。

ポータサウンドの場合は「C」の和音を出したい場合は、左手の人差し指一本で「C」にあたる鍵盤、つまり「ド」の白鍵を抑えれば、自動的に「C」というコードの響きの伴奏を自動的にしてくれるわけです。

さらに、「m(マイナー)」コードや、「7(セヴンス)」コードを鳴らしたいときは、隣の鍵盤を同時に押せば、いっちょう上がり。

コードネームの表記方法といい、ポータサウンドの自動伴奏の操作法といい、なんて画期的なシステムなんだと感心したものです。

と同時に、私はいちいち譜面から音を披露ことよりも、コードネームから左手の伴奏をつけることの便利さに夢中になり、すごい勢いでコードネームを鍵盤で遊びながら覚えてしまいました。そして、さっそく覚えたコードを使って色々な曲を作ったり、好きな曲のメロディやコードをポータサウンド拾う作業に没頭していました。

しかし、覚えたといっても、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコード、メジャーセブンスコード止まりのレベルで、sus4(サスフォー)や、aug(オーギュメント)、それに6th(シックスス)や、9th(ナインス)のコードはなかなか覚える気が起きませんでした。

しかし、何十曲も曲を作っていくと、だんだん自分が作る曲のバリエーションの狭さというか、どれもが同じ曲に聴こえてしまう。だから、少しずつ6thやsus4などのコードに手を出し始めました。

この《港町》という曲を作ったのは、たしか中学3年生頃だったと思いますが、生まれてはじめて6thやsus4を混ぜて作ってみた習作のような曲です。

でも、2台のラジカセを使って多重録音した音源を聴き返してみると、個人的には、なかなかいい感じだと思ったので、高校生か、あるいは浪人中だった頃かな?録音しなおしてみたのが、この音源なのです。

機材は、ほぼヤマハ

ドラムマシンは、友達から借りたヤマハのRX-21を使い、これにあわせてアコースティックピアノで(これもヤマハ)、元気かつ単調にジャン・ジャン・ジャン・ジャンと和音の伴奏を録音しました。

そして、これも友達から借りたヤマハのDX21にコーラスのデプスを深めにかけた音色でメインのメロディを弾き、サビのメロディ(というかDmaj7の和音をバラしただけのメロディ)の部分は、当時はまだまだ現役で活動していたヤマハ・ポータサウンドの「クラリネット」の音にアナログディレイをかましています。

私はポータサウンドのツヤツヤなクラリネットの音色が大好きなんですよ。

折に触れて、色々な曲の録音に使っているのですが、この曲も例に漏れずといった感じですね。

おそらく、お聴きになった方が抱く横浜のイメージとはまったく違うんじゃないかと思うのですが、私の中では、まさにこの雰囲気、この旋律と響きこそが「横浜」なんですね。

元町、中華街、山手カトリック教会、日石のコンビナート、三渓園、八聖殿、電車通り、外人ハウス、伊勢崎町有隣堂本店のビル、港の見える丘公園、フランス坂など、私の頭の中にある横浜の風景が圧縮され、発酵して醸し出る香りが、まさにこれなのです。

記:2015/11/08

 - 創作

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