YMO『BGM』の《千のナイフ》、坂本龍一のシンセソロがカッコいい
よく、矢野顕子のピアノは「元・旦那の坂本龍一より、全然うまい」という文脈で語られます(おもにジャズ方面のリスナーから)。
しかし、だからといって教授はピアノが下手なのかというと、全然そんなことはないです。
ただ、
アッコちゃん→奔放、開放感
教授→練られている、きっちり
という、ピアノから感じられる「呼吸の違い」があり、その差が「音楽的スケールの差」として捉えられがちなのでしょうね。
それと、バックグラウンドの違いも大きいと思います。
ジャズがバックボーンの矢野顕子のピアノは、呼吸している。
つまり、グルーヴしている。
いっぽう、クラシック、現代音楽がバックボーンの教授のピアノは、理知的で、キチっと丹精なところがあります。
のびのび呼吸をしている矢野顕子のピアノと比較してうと、どうしても几帳面でスクエアな印象を抱いてしまうかもしれません。
どちらがイイのか。
もうこれは好みの問題でしょうね。
私は両方好きですが。
とはいえ。
私は坂本龍一のピアノも好きですが、それ以上に、やはり、彼のキーボードが大好きです。
ちょうどシンセサイザーの普及期に、YMOというグループで様々な実験が行ったのでしょう。
キーボードならではの新しい奏法、効果を色々と生み出した功労者だとすら思っています。
特に、ピッチベンダーとモジュレーション・ホイール(キーボードの左端についている装置)の使い方が滅茶苦茶巧いと思います。
それを証明するのが、YMOの『BGM』に収録されているバージョンの《千のナイフ》。
この曲のシンセソロ、スゴイですよ。
ワイルドでカッコいい。
でも、ロックのような「お~いえ~!」的なワイルドさではなく、「知」の要素が勝った暴力性を感じます。
ギターのように弾いたつもりなんでしょうけど、ギターにはできないシンセならではのニュアンスを生み出しています。
ワイルドながらも、きちっと小節をはみ出すことなく、うまくまとまっているところも、教授ならではの「丁寧、きっちり」が生きているんですね。
プレイヤーとしても一流ながらも、職人的な資質が根底にあるんでしょうね。
とにもかくにも、YMOの『BGM』を
「昔、熱中」⇒「今、封印」
な人は、改めて聞き返してみることをオススメします。
《千のナイフ》と《ラップ現象》だけでもいいから、再度、耳を通してみて~。新たな発見がたくさんあるかもですよ。
記:2012/09/02