雑想 2024年10月

      2024/11/02

海の沈黙

あなたのぬくもりを覚えていた
「北の国から」「やすらぎの郷」倉本聰の集大成
孤高の天才画家が秘めていた不滅の恋ー

原作・脚本:倉本聰
監督:若松節朗

倉本聰が描く至高の愛、至高の美

「前略おふくろ様」「北の国から」「やすらぎの郷」などの巨匠・倉本聰が長年構想し、「どうしても書いておきたかった」と語る渾身の物語がついに映画化。人々の前から姿を消した天才画家が秘めてきた想い、美と芸術への執念、そして忘れられない過去が明らかになる時、至高の美と愛の全貌がキャンバスに描きだされる。孤高の画家・津山竜次を本木雅弘が演じるほか、小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、仲村トオル、清水美砂ら豪華キャストが集結。

『沈まぬ太陽』や『Fukushima 50』の若松節朗がメガホンをとり、緊迫のドラマ、深遠な愛、痛切な人間模様をスクリーンに刻みつける。

撮影は多くの倉本作品の舞台になっている北海道でも行われ、小樽でのロケ撮影を敢行。
運河の美しい風景が重厚な物語を彩る。
人間にとって「美」とは何か?私たちは人生の終わりに何を見つけるのか?観客の心を揺さぶり続けてきた作家・倉本聰がついにたどり着いた集大成的作品が幕を開ける。

2024年11月24日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか公開

自伝的小説

年をとると自分のかつての人生(特に若い頃)を総括したくなるのだろうか。
現代に至るまでの、かつての出来事を意味あるものとして一本の道筋を構築したくなるのだろうか。
それとも、単に日経の「私の履歴書」の影響なのだろうか。

理由や動機は人それぞれなんだろうけど、なんだか60過ぎると、いや65過ぎたあたりから自伝というか半生の記というか、「自伝」を書こうと思い立つ人、実際に書き始めちゃった「お爺さん」が周囲に何人かいる。

私もあと10年も経てばそうなっちゃうんだろうか。

ま、書くのは自由だし、書きたきゃどんどん書いてくださいなんだけど、多くの人はそれを自伝「小説」と銘打っているんだよね。

もちろん小説の定義や法則って私は知らないし、実際のところ定められた基準なんてないんだろうけど、どうも私の感覚からすると「小説」というよりは「プロット」なんだよね。

事実が時系列通りに進行しているだけ。
俺はこうした⇒彼女はこう言った⇒俺はこう言った⇒彼女はああした
みたいな。

人物描写も「美人だった」とか「美しかった」とか。

だから、物語の流れをラフに「素描写」した、小説に落とし込む前のラフスケッチにしか感じられないものが多い。というか、そういうのしか読んだことない。

映画でいえば「絵コンテ」。
絵画でいえば「下書き」。
デザインや広告でいえば「サムネール」あるいは「ラフスケッチ」。
プラモデいえば「仮組み」。

もしかしたら、この「長いプロット」の製作過程を人に見せて満足したいだけなのかもしれない。そして見せれば満足、「筋書きメモ」が小説や文学という一つの「作品」に昇華されぬまま、執筆途中の文字群が放置され、忘れ去られてゆくのだろう。

まともじゃないのは君も一緒

最近、脚本、というかセリフが面白い映画を2つ見た。

一つは、清原伽耶と成田凌の『まともじゃないのは君も一緒』(監督:前田弘二)。
もう一つは、瀬戸康史と河合優実の『愛なのに』(監督:城定秀夫)。

とにかく男女のかけ合いが面白い。
とにかく男女のセリフの(微妙な、時に大きな)ズレっぷりが面白い。

特に『愛なのに』は、登場するそれぞれの女性全員に1つか2つ、必ずこちらの笑い、あるいは納得のツボを刺激する印象的なセリフがあった。
そして、そのセリフがそれぞれの設定されたキャラとぴたりとマッチしているところが良いんだよね。

その一方で、男性側のセリフは女性のユニークなセリフとは裏腹に、どれもが紋切り型というか、漫画や映画やドラマで一度や二度は聞いたことがあるゾと思うほど、没個性的というか一般常識的で、この生き生きとした女性のセリフと、男性のフツーのセリフの対比がとても面白い。

不倫している男が、ラブホテルで浮気相手に「もう合うのはやめよう」と告げる、紋切り型かつ棒読みセリフは、おそらくは、この作品で一貫している「男の言葉」のツマラなさを象徴させるための送り手側の自覚的な演出なのだと穿ってしまうほど。

紋切り型で内容がありそうであまりない男のセリフといえば、『まともじゃないのは君も一緒』に登場した小泉孝太郎のセリフも、弟・進次郎の「浅いトーク」を彷彿とさせて面白かった。これって、狙ってるよね?(笑)

いずれにしても、現代ニッポンの日常を切り取った小回りの効いた両作品、時間を置いて再度鑑返してみたいと思う。

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ルータ・アンド・ダイチャ

キース・ジャレットとジャック・ディジョネット2人による演奏。

ジャック・ディジョネットは終始打楽器(ドラムやパーカッション)に終始しているが、キースはフルート吹いたりエレピを弾いたり、もちろんピアノも、と、八面六臂の活躍。

エレクトリックマイルスが好きにとってはツボがたくさんある音世界だし、キースがフルートを吹いているナンバー(タイトル曲)なんかは、ドン・チェリーの楽園志向サウンドに相通ずるところもあり(あるいは、ダラー・ブランドの土着的世界観をもう少しシャープにした感じ?)いずれにしても、難解という先入観を持たずに、当時のキースの「気分」と「世界」に容易にシンクロできる音群だと思う。

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