超時空メルヘン「ババジ君」第5話
第4話のつづきです。
すると、何とその女の子は腰につけていた短刀を抜くやいなや、ババジ君に襲いかかってきました。
ババジ君はかわすにはかわしましたが、あまりにも咄嗟の出来事だったので、尻餅をついてしまいました。
女の子の持っている短刀は、円月刀のように刃全体が三日月のようにカーブをしています。丁度、アラビアの盗賊が持っているものを縮小したものと言えば分かりやすいでしょうか。
切っ先が午後の強い日差しを反射して強烈に光っています。
ババジ君はこのような形の短刀を見るのは初めてでしたが、凶悪なまでにカーブをしている刃のラインが鎌首を擡げた印度コブラのように邪悪で、見るだけで身の危険を本能的に感じました。
殺されるかもしれない、そう思った瞬間ババジ君は素早く立ち上がり、ダッシュで逃げました。もちろん全速力です。
「逃げるんがぁ、ダメな!!」
女の子は、手に持っていた短刀を思いっきりババジ君に向かって投げつけました。
でも、ババジ君の音速に近い速度に対して、手で投げた刃物が追いつけるはずもありません。
クルクルと回転しながら飛んでいた短刀はすぐに勢いがなくなり、地面にむなしく落下、柄を上にして切先が地面に突き刺さりました。
その瞬間を待ち構えていたかのように、ババジ君はUターンして地面に突き刺さっている短刀を奪い、女の子の方に向かって突進していきました。ほんの1秒にも満たない一瞬の出来事です。短刀を振りかざし、女の子の頭上に突き刺そうかとする瞬間、カキーンという鈍い音がしたと同時に、短刀の刃が真っ二つに割れ、折れた刃が勢いよく回転して空の彼方に消え去りました。女の子は短剣の鞘でババジ君の攻撃を防御、しかも宝石だらけの派手な装飾が施された鞘のちょうどダイヤモンドの部分に刃があたったので、刃が真っ二つに折れてしまったのです。
不意をつかれたババジ君に一瞬のスキが生じました。間髪を入れずにババジ君の股間に女の子の強烈な蹴りが入り、続いて鳩尾に掌底の打撃が加わりました。
薄れてゆく意識の中でババジ君は、「この刀の鞘を売れば、いっぱい遊べるのにな」と思いました。
つづく
⇒第6話
画:赤っぴ