超時空メルヘン「ババジ君」第9話
第8話のつづきです。
「ユニ様が、大変だわ~」
「卑魔螺野ってすっごく寒いところなんでしょ?」
「死んだらどうしよう」
もう観測所の電算班は大騒ぎです。
「あんたら、やっぱり阿呆ね。」
アヤナギノ・サワヤミコが冷めた口調で言い放つと、一瞬ざわめきが止みましたが、また「何で」「どうしてよ!?」と前より一層騒がしくなりました。
「だって、これ偽電文だもん。」
ざわめきがまた一瞬静かになりました。
「私たちのマニュアルにはこんな馬鹿げた暗号作成のルールはないでしょ? 第一、緊急時にこんな暗号を作る余裕、あるはずないじゃない。」
アヤナギノ・サワヤミコの説明を聞いていた一同は黙りこくってしまいました。
「じゃあ、誰が一体こんなことを?」周囲からはこんな声が漏れてきます。
「さあ、今のところは何とも言えないけれど、手の混んだイタズラだってことは確かね。」
アヤナギノ・サワヤミコの言うことを裏付けるかのように、産土号から通信が入りました。今度は普通通信です。
「え~こちら産土号のユニワノイナホ、え~皆さん、聞こえてますか~?連絡遅れて申し訳ない。」
「私が出る!!」と、たまたま通信機の席に腰掛けていたオペレーターの一人がマイクをつかみました。
「はい、こちら明石東経135度観測所、ナカゴウノ・ミコです。もぉ、ユニ様ったら、定時連絡も寄越さずに何してたんですかぁ!?」
「ハハハ、何だかよく分かんないけど、所定コースをはずれて比魔螺野の上空に流されるわ、ジャミングにあって電波が通じないわで、大変だったんだから。でも、もう大丈夫だよ。」
「え、そうだったんですか!? こちらの方はですね、ついさっきヘンな暗号文を受信したんですよ。産土号が比魔螺野で不時着したような内容だったんで、皆で心配してたところなんですよ。」
「何、それは本当か!!」
いきなり隊長の大声です。
「ハ、ハイ。」
「で、電波の発信源の位置は掴めたのか?」
「い、いえ、そのぉ、つい今しがた入ってきた電文なので...」
ナカゴウノ・ミコは猫のように大きな目をクリクリさせながら、シドロモドロに応えました。
つづく
⇒第10話
画:バビロン