ヘトヘトに疲れたときこそ、ブランキーの『C.B.Jim』っしょ!

      2018/09/06

神経興奮・身体疲労。そんな時に聴いている

ここのところ、18時間働いて、4時間寝て、残りの2時間で好きなことをする(風呂やトイレも含まれますが)という、なかなかカッコいい生活(?)をしている私ですが、だいたい、夜に乗る電車って終電か、その2~3本前の電車なわけですよ。

面倒くさいときは、タクシー乗るけど。

で、移動中は、音楽で生き抜きをしたくなるから、iPodで音楽を聴くわけだけど、神経は興奮しているんだけれども、身体が微妙に疲れているのでしょうね。

だから、ここ最近は、あるアルバムを繰り返し聴いています。

癒し系?

冗談じゃないよ。

これっすよ、これ

C.B.JimC.B.Jim

ブランキー・ジェット・シティの『C.B.Jim』ね。

浅井健一のギターは、正しくロック

最後の《悪いひとたち》がグサッと胸に迫る有名盤なんだけど、いやぁ、これ、心だけはテンション高いときにはいいっすよ。

ベンジー(浅井健一)の歌詞とヴォーカルも鋭く突き刺さるけれども、やっぱり、彼はギターでしょう、ギター。

私、ロックのギタリストで好きな人ってそんなにいないんだけれども、(多分、好きなロックギタリスト10人挙げろ、といわれてもパッと出てこないと思う)彼は別。

ギタリストって人口多いから、逆に、その多い人口の中から抜きん出て突出した個性を発揮できている人って、ものすごく少ないと思うのよ。

まず、アマチュアギタリストがそうでしょ? うまい人はたくさんいるかもしれないけど。

でも、アマチュアどころかプロにも少ないんだよね。

こっちのマインドを叩いてくれるほどの強力な磁場や個性を放っているギタリストって、ほんと少ない。

もちろん、みんな上手いんだろうけど、

いや、よく考えてみれば、人の気持ちを揺さぶれない楽器弾きを上手いというのだろうか?

否。

とくに、ギターってーのは、ダイレクトに人の情欲、情熱、情念を激しくかきたててナンボの要素が強いじゃないですか? 他の楽器よりは。

てことは、暴論だけど、この世のギター弾きの8割、いや9割はヘタってことだ。

ま、分母(人口の絶対数)も多いから、残る1割の人数も相当なものかもしれないけど、やっぱり、リスナーの心をグラリと動かせるほどのパワーを持ったロックのギタリストって少ないことは確か。

しかし、彼は別。

浅井健一のギターは、正しくロック。

リスナーを心地よくギターでかき回す、強引な「ギター腕力」があるから。

彼のギターは、攻撃力がものすごく高い。

「痛さ」直撃

だから、このアルバムは、リズムセクションよりも、ついついギターにばかり耳が吸い付いてしまうのですよ。

なぜかって?

だって、曲全体のリズムをリードしているのは、ベースでもドラムでもなく、ギターなんだよね。

前のめりの突っ込み気味の、有無を言わさぬ強引さ。

これが、彼を名ギタリストとする所以なんだろうね。

たまに聴くと、疲れなんて、どーでもいいや!状態になる。

ヒリヒリするエネルギーが凝縮されていくんですよ。

まるで、阿部薫が内臓を吐き出すかのごとく、アルトサックスで咆哮するかのように、ベンジーのギターも肉体に直結した感じがあり、阿部にも通ずるヒリヒリした痛い感じが伝わってくるのです。

身体で弾いているか?

エレキギターって、物理的には指先で弾く楽器(腰で弾くとか、魂で弾くというのは、マインドの問題)です。

さらに、アンプにつないでゲインを上げれば音は歪んでくれるし、ディストーションやファズなどのエフェクターを通せば、カンタンに歪んだ音で鳴ってくれる。

だから、ある程度指の練習をすれば、なんとなく「それっぽい」感じを出すのは比較的容易なんだよね。

歪んだ音で、ペンタトニックなどのカンタンな指の運動をする程度でも、なんとなくロックっぽい感じをカンタンに出せてしまう。

しかし、指先だけで勝負しているか、それとも自分の存在そのもので勝負しているのかは、もろに出てしまう、バレてしまう怖い楽器でもあるのです。

トランペットや、サックスのような楽器は、そもそも、音を作ることから始まる楽器なことに加え、口の振動、リードの振動が音源なので、非常に肉声に近い部分が音の発信源なんですよ。

だから、肉感的なエモーションが得られやすいし感じやすい楽器ではある(もちろん、そこに達するまでには相当の修練が必要よ)。

それに比べると、ギターって、口よりも、ずっと遠くにある手の運動が音の発信源。ゆえに、エモーションの肉声化や、肉体とサウンドの合一化って難しいと思うのですよ(もちろん、「なんちゃってエモーション」は、動作やアクションや音色でいくらでも演出出来るけど)。

それが証拠に、フレーズやリズム感が素晴らしいギタリストはいくらでもいるけれども、「こいつ身体とギターが一体化してるぜ!」と感じさせるギタリストって本当に少ないですからね。

ブルースにはいっぱいいるけどさ。マディ・ウォーターズを筆頭に。

でも、ロックには少ない。

その点、やっぱり浅井健一のギターは違うんだよね。

彼にしか出せない、あのヒリヒリしたエモーションは、稀有。

最初に聴いたときは、トニー・ウイリアムスのバンド、ライフタイムの『エマージェンシー!』で正確に狂ったギターを弾くジョン・マクラフリン以上の衝撃を受けたからねぇ。

たまに聴くと、とても大きな驚きと衝撃があるアルバムなので、ブランキーのこのアルバム、私は好きなのです。

記:2007/09/14

 - 音楽