キャロルの初恋/試写レポート
2019/11/04
どの場面も美しい
どのシーンを切り取っても、それがすべてポスターや写真集の中の1枚の独立した写真として使えてしまう美しい構図と色彩の映画は稀に存在するが、スペインから届いた『キャロルの初恋』はまさに、その稀な映像を持つ映画の一つだと思う。
舞台は1938年、スペイン北部の片田舎。
時代はスペイン内戦の真っ最中だが、戦争の惨禍は、この町までには及んでいない。
主人公は、アメリカ人の父とスペイン人の母の間に生まれた少女、キャロル。
アメリカ生まれのニューヨーク育ち。12歳のときに、はじめて母親の故郷のスペインの村に母親と足を運び、祖父の屋敷で生活を始めるシーンから物語が始まる。
1939年の3月、人民戦線派が支える首都マドリードが反乱軍に降伏し、フランコ政権による独立政権が誕生し、人民戦線派に対しての弾圧が始まらんとした直後までの物語。
1年間を通して描く、少女の成長と淡い恋物語。
父と娘の絆と、平和な村にも影指す戦争の波紋を描く。
キャロル役のクララ・ラゴが可愛い。
可愛いだけではなく、力強い。
ボーイッシュで、力強い目をしているというルックス面での力強さもあるが、毅然として自分の意思を曲げない心の強さも宿している。
彼女の凛とした生き様は、優柔不断な祖父の生きかたにまで影響を及ぼしてゆく。
それにしても、先述したように、この映画は、どのシーンも絵画のように美しい。
とくに、彼女の父親が、愛娘キャロルに飛行機からパラシュートで地上に届ける誕生プレゼントのシーンの美しさといったら。
呆気にとられるスペインの片田舎の人々、濃緑の色彩の中の画面に、プレゼントにくくりつけられたパラシュートのオレンジがかった赤い色彩の美しさは特筆もの。間違いなく、この映画のハイライトの一つだ。
ま、細かいところを挙げるとキリがないので、あとは見てみてください、なんですが、なかなか、色々と考えさせられる映画です。
もちろん、落ち込まない程度に。
むしろ、可愛く力強いキャロルという少女から、自信や強さを分けてもらえるかもしれません。
記:2004/11/05
movie data
製作年 : 2002年
製作国 : スペイン
監督:イマノル・ウリベ
出演:クララ・ラゴ、フアン・ホセ・バジェスタ、ロサ・マリア・サルダ、マリア・バランコ、アルバロ・デ・ルナ ほか
観た日:2004/11/04