ケルト音楽の最深部
text:高良俊礼(Sounds Pal)
癒し系 ケルト系
店頭に立っていたとき、「何聴けばいいのか分からんけど、癒し系が聴きたいのよ!」というお客さんが結構いた。
そういう方には「どんな感じの癒しがよろしいですかね?」と、必ず「カウンセリング」をした。
で、色々と「あぁコレよ、こんなのが聴きたかったわけよ」と、お客さんが納得していかれるのは、ケルト系のコンピレーションが多かった。
特に奄美での「静かなケルト人気」というのは結構根強いものがあり、最初「シマの人達はラテンとブルースだ」と、思ってた私は驚いたが、ケルトの古い民謡を聴いて、シマ唄なんかをよくよく聴いてみると、特にメロディ感覚に何か通じるものがある。
ケルト 歴史
今回のオススメは『Classic Celtic Music From Smithsonian Folkways』というケルト・ミュージックのコンピレーション。
世界の民俗音楽といえば、アメリカのスミソニアン・フォークウェイズが質量共に圧倒を誇るが、そんなスミソニアン・フォークウェイズが、正に「やってくれた」と言ってもいい、素晴らしいオムニバスである。
そもそもケルト音楽は、アイルランドを中心としたブリテン諸島一帯に伝わる伝統音楽。
「ケルト人」という民族は、紀元前にヨーロッパに渡ってきた騎馬民族と云われているが、彼らはローマ帝国の勃興や多民族との同化吸収によって歴史の表舞台からは姿を消している。
その伝統や古代ケルト語に近い言語がかろうじて存在しているのが、現在のアイルランドやイギリス北部やウェールズ地方、という訳なのだ。
ちょいと時代は飛ぶが、16世紀以降アメリカに移住した一群には、アイルランドやウェールズ地方の労働者階級が多くいた。
音楽史的には、彼らが南西部の鉱山や農場で演奏してたケルト系音楽が、やがてアフリカからやってきた黒人奴隷達の音楽と融合して、ヒルビリー(カントリー・ミュージックの元となる音楽)が誕生する訳で、アメリカン・ミュージックのルーツをより深く楽しむためにもケルト音楽を聴くということは、非常に重要な行為だったりもする。
さて、近年ルーツ・ミュージックへの再評価の動きが高まってから、ケルト音楽には世界中から注目が集まるようになった。最近では、エンヤやケルティック・ウーマンのブレイクに見られるように、単なる民族音楽ではなく、もっと広意義の“良質なポップス”としての認識も広まってきているようだ。
本作は、そんなケルト音楽の最も古典的でディープな、1950年代~60年代の音源の中から、本当に良質で奥深さを感じられる演奏ばかりが23曲という素晴らしいボリュームで収録されている。
演奏はいずれも弾き語りや、小編成の完全アコースティックなもののみ厳選で、ケルト・ミュージックの最深部に迫る内容となっている。
記:2014/09/19
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)