夢と夢をかなえる環境、すなわち「人」が大事なのです

      2019/08/30

タイから帰国、そして

タイより帰国したその足で会社に向かい、仕事をしてから帰宅しました。

疲れもたまっていたので、仕事はなるべく早めに切り上げて、8時過ぎには帰宅したのですが、帰宅すると、息子は、ピアノの練習をしていました。

少しベソをかきながら。

今月末に、ピアノの発表会があるのです。
しかも、ただの発表会ではなく(年に一度のただの発表会は半年ぐらい前に終わった)今回の発表会の趣旨は、「自作曲」。

息子が作曲にチャレンジし、
作曲した曲を人前で弾く発表会なのです。

もちろん、うちの息子に最初から最後まで曲を作ることなんて出来ません。

息子が弾いた断片的フレーズのオイシイところを私が採譜し、
女房が編集し、
私が左手の伴奏をつけているのです。

ピアノに向かった息子に、
「なんでもいいから適当に弾いてみろ」
と言い、ICレコーダーのスイッチを押します。

息子は適当に、さまざまなフレーズを弾きます。

しかし、押さえる鍵盤は白鍵ばっかりで面白くありません。
いったん、ICレコーダーのスイッチをオフにして、

「今度は、白鍵ではなく、黒鍵ばかりを弾いてみよう」
と言い、再び録音を開始します。

黒鍵ばっかり弾いていると、鍵盤の感覚が“全”の箇所が多いので、ちょっと浮遊感のある“ホールトーンスケール”的なメロディになりがちです。

いうまでもなく、ホールとはholeではなく、wholeのことで、
中学校の音楽で習う“ドレミファソラシド”の鍵盤配列の
“全全半全全全半”における、
“全”にあたります。

ひととおり、浮遊感溢れる“不思議大好き”フレーズを黒鍵で奏でた後、
今度は、

「じゃあ、白鍵半分、黒鍵半分を弾いてみよう」

と言い、再び即興で色々なフレーズを弾かせます。

この間の作業は、約10分。

この10分だけでも、かなりの量のフレーズが中空に放たれるわけです。

逃さず録音した音を、パソコンにつなぎ、保存。
保存した音をプレイバックします。

さっき弾いたばかりの音でも、
自分が弾いた音がパソコンにつないだスピーカーから出てくるのは、弾いた本人でも新鮮な体験のようです。

「わ、今の面白い」

とか、

「この音、なんとかみたいだよね」

と、自分が出した音の感想を漏らします。

この中で2人が(おもに私が)「面白いな」と思ったフレーズを、五線譜に書き留めます。

2小節1単位で、ヒトカタマリのフレーズを
どんどんメモしてゆきます。

全部で16種類ぐらいの2小節フレーズを五線譜に書き留めました。

今度は、この16種類のフレーズを“モチーフ”として、
面白そうなメロディ、
使えそうなメロディを音楽教室の先生と相談しながら選んでゆきます。

幸い、面白いメロディがたくさんあったので、
いくつかのモチーフを元に、
メロディをつなげる作業をしてゆきます。

このつなげる、編集作業は女房がやりました。
つなげてゆくと、なんとなく曲らしくなってきます。

この段階で、さらにまた音楽教室の先生に見せ、
スケール的におかしいところにフラットやシャープをいれたり、
譜割りを改善したほうがよいところを直したりしてゆきます。

次にハーモニーをつける作業ですが、これは私が担当しました。

ハーモニーは、3つ以上の音の組み合わせからなる、音の表情とでもいうべきものです。ま、左手が奏でる和音ですね。

このハーモニー次第で、駄曲も名曲になることもあるし、
よりいっそう曲がダサくなることもあります。

幸い、ジャズの曲や、ポピュラーミュージックでありがちな、ツーファイヴの進行が、そのまま息子のメロディに適応できたので、ひととおり和音を当てはめ、

これだけだと単調になるので、
5度のところをフラット5度にしたり、
9度などのテンションを加えた和音を用いたり、

流れのキモになる部分には、ディミニッシュやオーギュメント系のコードも混ぜました。

さらに、フラット・フィフスやフラット・ナインスのコードが当てはめられたメロディは、コードの響きにあわせて、5度の部分をフラットさせて、メロディにダークさを加え、いちだんとジャズっぽいフィーリングを出してみました。

と・こ・ろ・が、

和音の種類が多く、さらにはフラットが増えてメロディを弾くのが難しいという、根本的な問題が発生してしまいました。

私がつけた和音は、ジャズをやっている人にはすっごく基本的な理論で、渡辺貞夫のジャズスタディなどを教材に勉強した人も多いとは思いますが、要するに、バークリーメソッドというやつが下敷きになっています。

ところが、クラシック一本の先生からしてみると、このシステムがわからないんですよね。

「いや、そんなに難しいことじゃなくて、基本的なバークリーメソッドみたいなものなんですけど」と説明してもチンプンカンプン。

さらには、私の耳からしてみれば「イカすぜ!」と感じる、フラットさせたメロディを「濁って聞こえる」とまで漏らす始末。

ま、そりゃそうだよな、西洋和声的にはハモってないもんな。

でも、この衝突がブルースであり、ジャズであり、カッコいいであり、なんだけれども、クラシック耳とクラシック的な価値観からしてみれば、「うーむ」な感じなんでしょうね。

ここで、私が説明して、先生を説得してもよかったのですが、
なにしろ、「子供が作曲した曲を、子供が弾く発表会」なわけですからね。

あまりに、テンションの効いた、ジャズアレンジの曲が会場に流れると、違和感丸出しなことは想像に難くありません。

また、「教室で教えた内容をもとに生徒が作曲しました」という趣旨で行われる発表会である以上、その先生の立場というものもありますので、私は先生の意見を尊重して、なくなく、イカすメロディのイカす部分を、削り、もとのほのぼのメロディに戻してゆきました。

ただ、息子が弾いたモチーフのうち、面白いフレーズのテイストがあまりにかけ離れているために、結局、曲そのものは「組曲形式」をとることになり、女房は、私がタイに行っている間、異なるモチーフとモチーフをつなぐメロディを考え、息子に練習させていたようです。

だから、「ただいまー」とちょうど玄関のドアを開けたときに、息子は半分ベソをかきながらピアノに向かっていたわけですね。

うまく弾けない箇所があるので、すごく悔しいみたいです。
弾けない自分に腹が立っているようです。

私は声をかけずに放っておきました。

この悔しさは、親が手伝って解消できるものではありません。
自分で乗り越えなければならないのです。

でも、何かが出来なくて悔しがるって、いいことですよね。

あのマイケル・ジョーダンも子供の頃は、試合に負けると、ものすごく悔しがったそうですし、将棋の羽生氏も小学生のときは、勝負が負けとわかると、悔しくて涙を浮かべながら、次の手を指さず、時間一杯まで粘っていたそうですから。

悔しさは、成長の原動力。
もっと悔しがれ、と思い、私は旅装を解いていました。

バークリーメソッドを紐解くと、20世紀の音楽の仕組み、歴史、システム、限界が見えてくる。楽器やってようが、やっていまいが、そんなこと関係なく、楽しく読めます。

音楽好きには、誰もにおススメしたい刺激本。

子供は夢を持ち、大人は夢を育む環境を作る。当たり前なこと、だよな?
昨夜、バンコク国際空港を飛び立ち、
今朝成田に戻りました。

で、そのまま会社に直行。
机の上にうず高く積み上げられた書類に
うんざりしながらも、
ちょっとした隙間時間(10分ね)を作って、
これを書いています。

先日、私はタイの公立マヒドンウィタヤーアヌソーン科学技術高校に行ってきました。

というか、今回の出張の目的はコレだったんですけれども、
要は、ソニーのQRIO(キュリオ)を、
この高校の生徒に見てもらおうというイベントの取材だったのですね。

「キュリオ・サイエンス・プログラム」という、
日本ユネスコ協会連盟が主催し、ソニーが協力するというカタチのイベントです。

目的は、
子供たちの科学に対する好奇心を育て、
科学技術と人類の平和について学ぶことが目的の青少年育成のための教育プログラムですね。

今回、私は、たまたまタイのイベントを取材させていただきましたが、仙台、高崎、大阪といった国内でも同様のイベントが過去に行われましたし、海外ですとインドとベトナムでも行われました。

ソニーのQRIOはご存知のとおり、2足歩行ロボットで、めちゃくちゃ可愛いです。
しかも、科学技術の最先端が凝縮されているので、踊るし、喋るし、ローラースケートを履いてすべるし、サッカーもするし、小さな身体なのに、すごい多機能を持った愛らしいロボットなんですね。

qrio

先日、このblogにも書きましたが、お台場のメディアージュのソニー・エクスプローラーサイエンスに家族でQRIOを見にいったのは、今回のイベントの予習も兼ねて、だったのです。

とにかく、子供のみならず、イイ年した大人の私が見ても、ワクワクした気分にさせてくれる愛くるしいQRIO。

これを、各地域の子供に見せて、もっともっと科学に興味を持ってもらおうというイベントなんですね。

私が同行したマヒドン高校とは、日本でいえば、ラサール高校のような感じかな?
全寮制で、優秀な生徒が集まるという点では。

ただし、ラサールと違って共学で、しかも女子の人数も多い。
だいたい、男女比率が6:4ぐらいかな?

要は、タイ全土から成績の良い優秀なエリートが集まった全寮制の理系の高校なのです。

英語で行われる授業も多いし、将来のタイの科学を担って立つ子供たちを育てる高校なのですね。最近出来たばかりの新しい学校だそうです。

ここの生徒たちが、日本の最先端技術の粋を集めたQRIOを、
好奇心たっぷりなまなざしで見つめている。

QRIOの一挙一同に、
「おおおっ!」
というどよめきや、
拍手の嵐。

タイは仏教国です。
仏教という宗教の影響なのかどうかは分からないけれども、
また、ハイレベルの高校の生徒ということが関係しているのかも分からないけれども、彼らは一様に礼儀正しいし、我慢する力がありますね。

いくら、興味深いロボットの解説だからといって
(あ、QRIOだけではなく、発泡スチロールと溶かすオレンジから取れる薬品の話や、トウモロコシから作るプラスチックの講義も間に挟まれてました)、
体育館に2時間以上体育すわりをして、講義をじっと聴くのって、
けっこうツライことなんじゃないかな、と。

子供時代、礼儀正しく、落ち着きのなかった私からしてみると思うのです。

しかし、彼らは礼儀正しく説明を聞いていた。
もっとも、中には居眠りをしたり、携帯をいじりはじめる生徒も数人いましたが、ま、このような手合いは、どこの学校にもいるのでしょう。
全体的にはとても聴講態度が良かったです。

さらに、質問コーナーになると、
すごい勢いで、みんな手をあげる。
彼らの好奇心の強さも印象に残りましたね。

もしかしたら、彼らの中から、将来はタイのロボット工学の博士が輩出するかもしれませんね。

事実、何人かの生徒に感想を聞いたら、
将来あのようなロボットを作りたい、
とか、
ロボットの人工知能を作るプログラマーになりたい
と答える生徒が多数いましたからね。

このような動機付けってすごく大事ですよね。

仮に、そのときに抱いた夢とは違う仕事をすることになっても、
若いときに夢を持った子供は、きっと大きく育つことと思いますし、
夢を持って取り組んだ努力は違う形で必ず生かされると思います。

イチローだって、小学生のときの作文に、将来は野球選手になってお金を稼ぎまくるといったことを書いていますし、先日、奥菜恵と離婚したサイバーエージェントの藤田社長も、学生時代の夢は「ソニー、ホンダのような21世紀を代表する会社の社長になりたい」でしたからね。

もちろん、夢を持てばすべてが適うとはかぎりませんが、それでも、大きな夢を持つことは大事です。

というよりも、子供が夢を持たない国は、オシマイでしょう。
子供の夢を育んであげられない環境は最低です。

環境というよりも、人、ですね。
すなわち、それは、われわれ「大人」のことなのです。

日本の子供は、どれぐらい夢を持っているのだろう?
是非、夜中に渋谷のセンター街や、新宿のコマ劇場の前をほっつき歩いている高校生に聞いてみたい(笑)。

あ、夢がないから、フラフラしているのかな?
夢を探しに?
だったら、もっとほかで探せよ、って感じだが、余計なお世話か。

好奇心と、この笑顔が夢を育むんだろうな。

これ、夢と好奇心にあふれるタイの高校生たちね。

mahidon

素晴らしい笑顔じゃないですか。

日本の子どもたち全員が、こういう笑顔に包まれるといいな。

記:2005/09/07(from 「趣味?ジャズと子育てです」)

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