ヤマハ音楽教室のクラスコンサート
2015/05/31
ただ譜面をなぞるだけじゃ、ぜーんぜん面白くないわけだ。
だって、おまえ、お友達や、先生や、お友達のお父さんやお母さんの前でピアノを弾くわけだろ?
「ただ弾くだけ」のピアノってつまんないと思わないか?
そんなもん、無味乾燥な音楽的な朗読に過ぎんわけだよ。
だから、大事なのは、「聴かす」っつーことだ。
分かるか?
ようするに、分かりやすくいうと「演出」するってこった。
「演出」というのは、語弊があるかもしれないが、見ている人、聴いている人を楽しませるっつーことだな。
だ・か・ら、
(私・ピアノを弾き出す)
このへんは、比較的フラットに弾けばいいさ。
譜面とおりにな。
でもね、早く弾こうとしちゃいけないぞ。
大地にウンコ座りするぐらいな気分で、ドッカリと落ち着いた気分で悠々と弾けばいいさ。
お前ぐらいの年頃や、小学生の子供たちって、速く弾けば弾くほど自分は上手だって勘違いしている子が多いんだけれども、安定した音出せない人が、ペラペラパラパラと早く弾かれても、聴いているほうの気持ちは落ち着かないもんさ。
(私・わざと粒をバラバラにして高速でエリーゼのためにを弾く)
だから、早く弾こうとはしないことだね。
べつに無理してゆっくり弾く必要はないけれども、生まれたての音を次の音で急いで殺すことはない。
で、このへんで仮に間違えても、いいのいいの、どうせ聴いている人の記憶には残んないから。
終わりよければすべて良しっていうだろ?
最後の演出が重要なんだよ。
(私・最後から3小節目を弾く)
このへんから減速。テンポを落とすんだよ、少し。
(私・最後から2小節目を弾く)
で、ここは極端にゆっくりとな。
(私・ピアノのテンポを落とす)
そして、最後の和音を弾く前に、
(私、ピアノから離れてダッシュで隣の部屋までかけてゆき、ライダーの変身ポーズをとったあと、三点倒立をし、一回でんぐり返しをしてから、再びダッシュでピアノに戻り、最後の和音を弾く)
いいか、今の父上の行動は極端だが、これぐらいの気持ちで、ブレイクするんだよ。
いいかブレイクだぞ、ブレイク。
とにかく間を空けて、最後の音を弾くまでに間を作るんだぞ。
間を空けている間は恥ずかしいかもしれないが、お前が恥ずかしいと感じているほど、こっちは恥ずかしくないんだよ(だから、俺様は阿呆は行動をとった)。
それに、お前が感じているほど、間というのは聞いているほうにしてみれば長くもないんだよ。
お前の心の中の10秒は、聞いているひとの1秒ぐらいなもんさ。
だから、ちょっと長すぎるんじゃないの?ぐらいの間を空けても、大丈夫!
ここのブレイクさえ決まれば、もし最初に間違えても、OK。
だって、このブレイクのインパクトでみんな最初のミスなんて忘れているんだから。
ほれ、じゃあ早速やってみろ。
と、これが昨日「ヤマハ音楽教室」に行く30分前の息子とのやり取り。
その日はクラスコンサートだったのです。
生徒は自分が好きな曲を1曲選んでみんなの前で弾く。
息子が選んだ曲をチェックしていたところ、メリハリにかける弾き方だったので、私なりに演出をつけてやったのです。
で、本番。
息子は最後から2番目の出番でしたが、なんと、息子の順番が回ってくるまでの3人の生徒が、みんな同じ曲を選んでいたのですね(どの曲を発表するかは事前には知らされない)。
丁寧に弾く子、急速テンポで弾いて早めに演奏を終わらそうとする子、間違えたら、つっかえた箇所からやり直そうとする子、同じ曲でも、こんなにも表情が違うのかと驚きです。
ソニー・ロリンズの《あなたは恋を知らない》と、ジョン・コルトレーン《あなたは恋を知らない》以上の差です。
あ、嘘です。
それほど極端な差はありません。
ちょうど今、《あなたは恋を知らない》を聴いていたので書いてみたくなっただけでーす。
で、息子の出番。
ピアノの前で深々と丁寧にゆっくりとお辞儀。そのへんはバレエで鍛えられていますね。
ピアノに座り、他の子とは違いどっしりとゆっくりとしたテンポで淡々と弾きます。
そして、最後に私が教えた“演出”で、テンポを落とし、ブレイク!
うーん、ちょっと短かったかな。
最後の和音を静かに弾いて演奏終了。
子供たちと親たちからの拍手。
しかし、拍手がすくねーぞ!(笑)
同じ曲を弾いたどの子よりもなぜか拍手が一番少なかったのはどういうわけなんだろう?
ちなみに一番拍手が多かったのは、滅茶苦茶早いテンポで弾いていた女の子。
やっぱり、皆さん、速いテンポ=巧い なのかなぁ。
遅いテンポで“聴かせる”音を弾くほうが、難しいと思うんだけどなぁ。
くわえて、精神力も必要だし。
なーんて思っていたところで、先生が「授業が終わったら空くんは残ってね」と言われたので、我々親子は居残り学習、じゃなくて、未消化の課題をこなしただけなんですけどね。
で、最後に、「空クンのピアノが今日の発表会で同じ曲を弾いたお友達の中では一番良かったよ。来年のソロコンサートも楽しみね」と言っていたので、わっはっはっは、お世辞でも嬉しいぜ、ふふふ、“演出”を仕込んでゆっくりと弾かせた甲斐があったぜ!と心の中で胸を張るバカ親の私でありました。
記:2005/10/30(from「趣味?ジャズと子育てです」)