南アフリカが舞台の映画『第9地区』
2020/11/23
試写会で『第9地区』を観てきました。
日本では、4月の末から上映される映画なのですが、アメリカではすでに上映されていて、第82回アカデミー賞の作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の4部門にノミネートされている作品です。
かなり楽しめました。
この映画の面白いところは、監督も主役も舞台も南アフリカだということ。
出演者も監督も、(世界的には)無名な人ばかりな上に、製作費もハリウッド映画などに比べると低予算で作られているにもかかわらず、なかなか容赦ないリアルさで網膜に迫ってくる音響と映像がなかなか刺激的でした。
南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ上空に突如としてあらわれた宇宙船。
この宇宙船は故障したらしく、まったく動こうとしません。
痺れをきらした南ア政府は偵察隊を派遣、UFO内に侵入すると、船内には弱ったエイリアンたちが苦しんでいました。
彼らは宇宙の難民だったんですね。
処遇が決まるまで、エイリアンたちは、ヨハネスブルグの「第9地区」と呼ばれる仮説住宅に住まわされることになりました。
そして、28年もの間、彼らは不衛生でスラムと化した「第9地区」に生息するわけですが、市民とエイリアンの対立が激化したことをうけ、彼らの管理事業を請け負う民間企業MNUがエイリアンの強制移住を決定。
そこから“事件”がはじまるわけですが、あとは劇場でのお楽しみ!ということで。
個人的には、「いかレスラー」に登場するシャコボクサーと、バルタン星人とピッコロ大魔王と伊勢海老を足して4で割ったようなエイリアンのデザインがグロ可愛くて気に入りました(笑)。
また、“彼ら”を見ていたら、ウルトラマンに登場するバルタン星人を思い出さざるをえません。
『ウルトラマン・パワード』では、甲殻類の一種と分析されているバルタンですが、人類からは「エビ」と蔑称されていることからもわかるとおり、『第9地区(district9)』に登場するエイリアンたちも、まさに甲殻類。
そして、両者ともに“宇宙の難民”です。
バルタン星人は、故郷の星が発狂した科学者の行った核実験により壊滅してしまい、たまたま宇宙旅行中であった20億3000万人が難民とってしまい、宇宙を放浪。
自分たちが住める星を探していたら、宇宙船が故障。
宇宙船の修理もかねて、たまたま地球にやってきたんですね。
最後は宇宙船に搭乗していた2億3000万人のバルタン人たちは、ウルトラマンのスペシウム光線によって“大量虐殺”されてしまうわけですが……。
(だから、その後、執拗に生き残りたちがウルトラマンや地球を狙ってやってくる理由も分からなくもありません。)
いっぽう、『第9地区』のエイリアンたちも、宇宙船が故障して、たまたま南アフリカの上空で停止してしまった。
そして、人間たちによって強制移住させられているわけです。
不気味な容姿、相容れぬ文化・習慣があるにせよ、いずれにしても、人間(ウルトラマン)たちが、彼らエイリアンらに向けるまなざしは冷酷ではあります。(とはいえ、私だって不衛生なシャコボクサーが近所に住んでいたらイヤな気分になっちゃうと思いますが……)
さて、無理やり話をジャズに結びつけますと(笑)、南アフリカといえば、思い出すのは、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)ですね。
以前、ピアニスト・中村尚子さんをゲストにお招きした際の特集もダラー・ブランドでしたが、私はダラー・ブランドのピアノが結構好きで、アルバムも10枚以上持っています。
ただ、今回の『第9地区』のサウンドトラックは、あたりまえですが、ダラー・ブランド特有のゴスペルライクで牧歌的な要素は皆無。
肉声を効果的に使用した、かなり切迫&ヒリヒリとした映像を増長させるかのような内容。なかなか映像をうまく引き立てるような内容でした。
にもかかわらず、なんだか試写会の後はダラー・ブランドを聴きたくなってしまった私は、家に帰って『アフリカン・スイート』を聴きながらお風呂にはいったのでした(今日も寒かったからね)。
Abdullah Ibrahim (Dollar Brand) アブドゥラ・イブラヒム (ダラー・ブランド) / African Suite
記:2010/02/15 22:00:00