私が大好きなベーシスト
2020/02/10
素晴らしいベーシストがいっぱい
「時」を刻む時計の針はグルーヴすることなく、正確に時を分割し続けるが、ベーシストが刻む「時」は、一人ひとりによって時間の長さと、時のウネりは様々。
ベーシストは縁の下の力持ちであり、バンドの屋台骨ともいわれているが、だからこそベーシストは個性的であって欲しい。
私が「好きなベーシスト」は、大きく分けると二つのタイプに分かれるんじゃないかと思う。
まず、自分がベースを弾く上で、何らかの刺激になったり、実際、盗めるところは盗んじゃおう、と思わせるタイプのベーシスト。
このタイプのベーシストは、「こういうベースが弾けたらいいだろうな」という憧れも多く混ざっているので、「憧れのベーシスト」という括りにした。
反対に、素晴らしいプレイや、個性的なプレイをするのだけど、自分のベースのスタイルの参考になる要素の無いベーシストは「聴いて楽しむベーシスト」という括りとした。
この二つの境界線は微妙で、実はあるようで無かったりもするし、将来的には、位置づけが変わる可能性もあるかもしれないが、取りあえず、ということで。
憧れのベーシスト
レイ・ブラウン(Ray Brown)
「完璧」という言葉は、まさに彼のためにある言葉なのだろう。
ベースライン、音程、音色と、まったく非の打ち所が無い。
現在、彼の書いた教本を少しずつ練習しているが、トレーニングをすればするほど、一切の妥協も許さない彼の姿勢を実感する。
好きなアルバム:『Something For Lester』(Ray Brown)
ポール・チェンバース(Paul Chambers)
4ビートといえば、彼。チェンバースといえば、4ビート。
それぐらい、私のジャズのベースの中ではダントツにチェンバースの占める割合が大きい。ソロもバッキングも、本当にメロディック!
好きなアルバム:『Groovy』(Red Garland)
ジョージ・デュヴィヴィエ(George Duvivier)
固い音色だが、全体のノリはしなやか。そして、堅実。しかし、よく聴くと、緊張感あふれる独特のベースラインが面白い。
中間派からドルフィーまでと、様々なスタイルのジャズマンと共演している。
好きなアルバム:『Out There』(Eric Dolphy)
マラカイ・フェイヴァース(Malachi Favors)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴのメンバーの中では、一番ひょうきんな役どころな彼だが、とても良いベーシストでもある。
正確な音程と、心の中の深いところまで、じんわりと染みこんでくる存在感のあるベースの一音一音。そして、強烈なウネリを放つベースを奏でる。
好きなアルバム:『ラジオのように』(Brigitte Fontaine)
パーシー・ヒース(Percy Heath)
オーソドックス、そして基本に忠実、なおかつ安定しているベースワーク。
彼のベースは聴いていて安心出来ると同時に、なぜか、とてもワクワクする。
好きなアルバム:『Bag's Groove』(Miles Davis)
ロバート・ハースト(Robert Hurst)
先人たちが遺した、ジャズのおいしいエッセンスを過不足なく吸収、そして現代風のスパイスをも加味させた、バランス感覚に溢れるベーシスト。と、書くと、クリスチャン・マクブライトにも当て嵌まるような内容だが、個人的には、優等生的なマクブライトよりも、やんちゃな勢いとパワーを持っているロバート・ハーストの方を買っている。
好きなアルバム:『Bloomington』(Branford Marsalis)
チャック・イスラエル(Chuck Israels)
艶っぽい音色が素敵。繊細で、色気のあるベース。
音色もノリを担う重要な要因だったとは……。
好きなアルバム:『Circle Waltz』(Don Friedman)
ジェームス・ジェマーソン(James Jamerson)
とにかく、素敵。
1小節たりと同じベースラインを弾いていないんじゃないかと思うぐらい、様々なバリエーション、かつ、動き回るベースを弾きながらも、歌を邪魔しないベースラインがスゴイ。そして、抜群のノリ。
好きなアルバム:『What's Goin' On ?』(Marvin Gaye)
亀田誠治
特に、椎名林檎のバックにおいて顕著なのだが、曲のサポートに徹するという発想が、そもそも無い人なのでは? 曲を盛り上げるというよりは、隙あらば、曲を“犯す”。そんな感覚でベースを弾いているに違いない。オカズ、フィル・インのセンスが凄まじい。
好きなアルバム:『勝訴ストリップ』(椎名林檎)
ミック・カーン(Mick Karn)
オリジナリティのカタマリ。そして、唯我独尊の境地!
私がベース(フレットレス)を始めたのも、彼の影響がもの凄く強い。
好きなアルバム:『Tin Drum(錻力の太鼓)』(Japan)
ピエール・ミシェロ(Pierre Michelot)
堅実、かつオーソドックス。危なっかしいところの全くない安定したプレイ。
地味といえば地味なのかもしれないが、不思議と存在感のあるベース。
好きなアルバム:『Portrait Of Thelonious』(Bud Powell)
ジョージ・ムラーツ(George Mratz)
ふくよかでリッチな音色。そして、抜群のテクニックと心地よいノリ。ベースラインの組み立て方もゴキゲンだ。すごいテクニックの持ち主がだが、似たようなタイプのニールス・ペデルセンと比較すると、彼のベースのほうがハート・ウォームで、テクニックがイヤミに感じない。
好きなアルバム:『Eclipso』(Tommy Flanagan)
リロイ・ヴィネガー(Leroy Vinnegar)
後ろに引っ張るような、粘りのあるビート。フレーズのチェンバースに対して、ノリはヴィネガーというのが、私の理想のジャズベースなのかもしれない。
好きなアルバム:『Contemporary Leaders』(Sonny Rollins)
Sonny Rollins and the Contemporary Leaders
ウィルバー・ウェア(Wilbur Ware)
ゴツゴツした岩のように固い音色と、ノリ。
一回聴いたら忘れられない、強烈な個性の持ち主。ごり押し感の強いベースソロが魅力。
好きなアルバム:『A Night At The Village Vangurad』(Sonny Rollins)
A Night At The Village Vanguard
ダグ・ワトキンス(Doug Watkins)
かなりチェンバースに似たスタイルだが、チェンバースを少しだけ寡黙にした感じが、彼のベースだと思って聴いている。しかし、ノリの粘っこさはすごい。
強烈なアフター・ビートは、リロイ・ヴィネガーに比肩する。
好きなアルバム:『At The Cafe Bohemia vol.1』(Art Blakey & The Jazz Messengers)
聴いて楽しんでいるベーシスト
ビル・クロウ(Bill Crow)
小粒ながらも、ピリッとした緊張感と、その正反対な大らかさを兼ね備え持つ、地味ながらもツボを押さえたベーシスト。
好きなアルバム:『Al Haig Trio』(Al Haig)
リチャード・デイビス(RIchard Davis)
ガリッ!! 鋼鉄の指。
好きなアルバム:『At The Five Spot vol.1』(Eric Dolphy)
ジミー・ギャリソン(Jimmy Garrison)
コルトレーンのビデオで、汗だくになり、死にそうな顔でベースをかき毟っている彼の姿を見たとき、ベースって恐ろしい楽器だな、やめようかな、と思ったほどだ。
命がけで一音一音を魂から削り取っているような感じ。ゴリッとした音色にも迫力がある。
好きなアルバム:『At The Village Vangurd』(John Coltrane)
デイブ・ホランド(Dave Holland)
一聴、オーソドックス。しかし、よく聴くと、かなり変わったこともやっている。しかし、ツボを押さえたベースゆえに、かなり風変わりなことをやっても、全くイヤミにもトリッキーにも聴こえないところがサスガ。
好きなアルバム:『The Song Of Singing』(Chick Corea)
チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)
音色の深みと重さ、そして、音数の少なさは群を抜いている。
舟を漕ぐように、ユラユラとベースを揺らしているのに、よくもまぁ正確な音程が取れるなと感心はするが、フレーズやプレイ内容はあまり参考にはしていない。
好きなアルバム:『Segments』(Geri Allen)
細野晴臣
テクニックというよりは、類い希なるセンスとバランス感覚の持ち主。
モコモコと、下半身がうずうずしてくるようなノリもたまらない。
弦のみならず、YMO時代のライブの“鍵盤手弾きベース”のノリも弦のノリそのまま。
好きなアルバム:『風街ろまん』(はっぴいえんど)
アンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson)
明晰かつ、超正確。
妥協を許さないベース職人。
この安定感から生み出される大きなグルーヴは下半身よりも脳を刺激する。
好きなアルバム:『Nightfly』(Donald Fagen)
パーシー・ジョーンズ(Percy Jones)
はじめてイーノのアルバムを聴いたときはぶっ飛んだ。細分化されまくった音符と、挑発的、かつトリッキーなベース。こんなベース、仮に弾けたとしても共演者に嫌われるか、ベース主体に音楽を組み立ててゆくしかないのだろう。だから、参考にはしていない。いつも口をあんぐりと開けて唖然とするだけ。
好きなアルバム:『Do They Hurt?』(Brand X)
サム・ジョーンズ(Sam Jones)
地味ながらも、滋味溢れるベースを弾く、渋いベーシスト。
好きなアルバム:『Double Bass』(Niels Pedersen & Sam Jones)
セシル・マクビー(Cecil McBee)
ガリッ!! 鋼鉄の指。(リチャード・デイビスと同じ感想)
好きなアルバム:『Plays Gershwin』(山下洋輔)
マーカス・ミラー(Marcus Miller)
センス!!! の人ですね。
彼のスラップは音色に色気がある。
セクシー!!!な人でもあります。
好きなアルバム:『We Want Miles』(Miles Davis)
チャールス・ミンガス(Charles Mingus)
ベースのプレイよりも、むしろ彼の曲、そして、存在感を聴いている感じ。
良くも悪くも、アクが強く、ミンガス!としか言いようのない強烈な体臭を放っている。
好きなアルバム:『Town Hall Concert』(Charles Mingus)
レッド・ミッチェル(Red Mitchell)
轟音!地の底から湧き出るような、ぶっ太い低音に圧倒される。
ノリはジャストなタイミングで、白人版レイ・ブラウン?
好きなアルバム:『I Concentrate On You』(Lee Konitz)
ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)
圧倒的なテクニックと、斬新なアイディア。これに関しては、いくら言葉を費やしても足りないほどだ。しかし、個人的には、彼の作曲のセンスと、眩暈がするほどのとっぽいグルーヴ感を買っている。
好きなアルバム:『Word Of Mouth』(Jaco Pastorius)
ニールス・ペデルセン(Niels-Heninng Pedersen)
空いた口が塞がらないほどの、抜群のテクニックの持ち主。
しかしそのバカテクさゆえに、それが鼻につくこともしばし。
彼が参加しているアルバムをまるまる一枚聴き通すとゲップが出ることもしばし。
好きなアルバム:『Apartment』(Dexter Gordon)
スティーブ・スワロウ(Steve Swallow)
ウッドベースを弾いていた頃の彼のプレイは、なんだかよく分からないけれども、妖しげな魅力に溢れている。エレキになってからは、彼がピックで奏でるハイポジションのトーンは、まるで人が歌っているように伸びやかな音色で、かつメロディアス。
好きなアルバム:『Go Together』(Carla Bley)
ジョージ・タッカー(George Tucker)
迫力のグイグイベース。アタックとウネリがスゴイ。こんなベースをバックで弾かれたら、共演者は否が応でもグルーブするしかないだろう。
好きなアルバム:『Us Three』(Horace Parlan)
松井恒松
粒の揃った正確なビート。そして、漂うストイックさ。
プレイ云々よりも、私の場合は直立不動で寡黙にビートを刻んでいる彼の姿に“男”を感じてしまう。
好きなアルバム:『よろこびのうた』(松井恒松)
記:2002/01/20(from「ベース馬鹿見参!」)