アニメでたどる女性の社会進出の変遷

      2022/06/20

70年代

女性上位時代と言われて久しいですが、なにもそれは現代社会のみならず、アニメの社会においても、それは同様です。

1974年の『宇宙戦艦ヤマト』では、オトコばかりのヤマトの乗組員に対して紅一点の女性搭乗員・森雪がいるのみでした。

彼女の役割はレーダー係だったり、保健室(?)担当と、どちらかというと裏方役的存在でした。

しかし、その数年後の79~80年の『機動戦士ガンダム』になると、船(戦艦)に搭乗する女性の数は少し増えていますね。

ホワイトベースを操縦するミライ・ヤシマに、子どもの世話担当だったり通信を担当するフラウ・ボウ。それと、最初は通信担当だったのが、やがてパイロットとして戦場に赴くことになるセイラ・マスなど、女性陣の活躍が少しずつ目立ちはじめます。

とはいえ、やはりこの時代に戦艦の中に女性クルーがたくさんいるという状況に対して「彼女たちは軍人ではなく、民間人がやむをえない事情により搭乗している」というサジェスチョンもストーリーの中に組み込まれていましたが。

80年代

それが80年代の『超時空要塞マクロス』になると、戦艦の中で仕事をする女性の「軍人」が一気に増えました。

なんと、マクロスの艦橋にいるのはグローバル艦長(男性)を除けば、全員女性なのです。

ヒロインの一人、早瀬美沙さんは戦闘機隊の航空管制と指揮を担うなど、かなり重要な役割を与えられていました。
つまり、現場のパイロット(男性)の指揮官は女性になったのです。

余談ですが、もちろん、この女性軍人が多いという設定は、女性も徴兵され軍隊に所属するイスラエルのような社会を参考にしたわけではなく、単にアニメーターが可愛い女の子をたくさん登場させて(自分が)萌えたい、(視聴者たちを)萌えさせたいという欲望が根っこにあるのでしょうが。そしてこの目論見は大当たりしたと思います。「オタク」という呼称は、この作品の主人公・一条輝とリン・ミンメイが艦内に閉じ込められた時に互いを呼び合うときの2人称がで、これを見たファンがこの呼び方を真似ていることから、次第に(気持ち悪い?)アニメファンを指す言葉になっていきます。

90年代

さらに90年代の『新世紀エヴァンゲリオン』になると、作戦の指揮どころか、作戦そのものを立案し、指令を出すのも女性の葛城ミサトさんになってくる。

ミサトさんと似た位置にある『ガンダム・ダブルオー』のソレスタルビーイングの戦術予報士、スメラギ・李・ノリエガ(リーサ・クジョウ)さんも、ガンダムが行う作戦立案をほぼ一手に手掛けおり、現場の作業チーム(ガンダムマイスター)たちは、オトコ。

机組が女性で、現場組が男性という、完全に立場が逆転してしまい、それを享受する我々も、そのことに対してなんら疑問を抱かなくなっています。

このようにアニメにおける組織、チームの役割も時代の変遷ごとに変化している点が面白いですよね。
これって、そのアニメが作られた社会の意識が反映されていると思えなくもないのです。

もっとも、どうせアニメなんだからムサ苦しいオッサンのお偉いさんよりかは、偉い人だって美女のほうが視聴者サービスになるだろうという送り手側の趣味やサービス精神もあるのかもしれませんが(『ガンダムSEED』のマリュー・ラミアス艦長に関しては完全に確信犯だと思います)。

このようにロボットアニメの中において女性の存在と、役割は日に日に増す一方の昨今ではりますが、だからこそ、その反動で、ほとんど女性が出てこない硬派で炎のにおいにむせる『装甲騎兵ボトムズ』を時として無性に見たくなってしまうのかもしれません。

記:2009/08/13

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