フォー・ユー/プリンス
2021/02/10
今も昔も、プリンスの曲において、徹頭徹尾一貫しているのは、必ずポップでキャッチーだということ。
実験的な作品や、音楽的な冒険も多いにもかかわらず、どのような作品も、頑なまでに彼は、ポップな仕上がりに落とし込まれている。
さらに、ときにはキッチュかもしれないが、必ず、スイートな魅力をも内包した曲に仕上がっているのも特徴。
78年発表のこのデビューアルバムが、すべての原点。
ここに、今後のプリンスのすべてが凝縮されている。
甘さ、切なさ、ポップさ。
ソウルミュージックの、確実に新しい世界を1人多重録音で築き上げてしまっていた若き天才。
驚くべきことに、このアルバムに収録されているナンバーは、全曲自作。
のみならず、アレンジもプロデュースもプリンス自身。
すべての楽器の演奏も彼1人。
しかも、当時はまだ10代。
スティーヴィー・ワンダーに並ぶ、若きソウル・ミュージックの天才の登場!とでもいうべきか。
実際、レコード会社もこのようなキャッチコピーで売り出そうとしたそうだが、スティーヴィーとは、まったく違う世界を既に築き上げてしまっている。
しかも、甘さ、セクシーさが倍加した。確実に新しいソウルなのだ。
もちろん完成度は高く、とくに、イントロの《フォー・ユー》から《イン・ラヴ》にいたる流れなどは、今聴いても鳥肌が立つ。
プリンス好きだけれども、このデビューアルバムが一番!という人が多いのも頷ける。
そうそう、先日、かつて取引のあったIT会社の方と六本木に飲みに行った際、寿司かなにかを食べながら音楽の話になったんだけど、ひょんなことから話題がプリンスになって、一番好きなアルバムは何ですか?と聞いたら、フォー・ユー。
うわっ、なんていい人なんだろう。
もしかしたら、私の予想以上に、彼は繊細でピュアはハートの持ち主なのかもしれないと勝手に妄想したりしてしまったよ。
いずれにしても、「プリンスで一番好きなアルバムは、なんたって『フォー・ユー』ですね!」の一言で、一気に彼との距離が縮まった気がした。
記:2002/01/11
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