蛤御門/新撰組GX

   

hamagurigomon

新撰組というバンドを大学時代に組んでいました。

編成は、テナーサックスがフロント、私がエレクトリックベースで、あとはドラム。

この3人によるピアノレストリオが基本フォーマットだったのですが、時々、木琴とか笛とかギターなどのゲストを加えたりして色々なオリジナル曲を演奏していたものです。

このバンドを作りたいと思ったのは私。

なぜ、このようなフォーマットで遊んでみたいと思ったのかというと、当時は、ピアノレストリオのジャズの作品ばかりを聴いていたからかもしれません。

『ゴールデンサークルのオーネット・コールマン』や、ロリンズの『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』、それにコニッツの『モーション』などは、朝から晩まで聴いていました。

その影響もあってか、アルトサックスとドラムスで不定期でライヴをするピアノレストリオも組んではいたのですが、ジャズのスタンダードやブルースだけではなく、オリジナルの曲もピアノレストリオで演ってみたいなという欲望も芽生えてきたんですね。おそらくは、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの影響だったんじゃないかと思います。

トリオではありませんが、このグループもコード楽器が不在のピアノレスでした。

トランペッターのレスター・ボウイ以下、サックスのロスコー・ミッチェル、ジョセフ・ジャーマンのフロントの管楽器奏者たちが自在に咆哮を繰り広げる様はフリージャズ的でありながらも、彼らが自在に吹奏する背後には、ガッシリとリズムを構築するドン・モイエや、太い音でボトムをささえるマラカイ・フェイヴァースの存在があり、私はベースを弾いていたということも大きいのですが、アート・アンサンブルにおける管楽器奏者たちの自由闊達な演奏内容よりも、彼らが自由に振舞えるだけの骨格を強靭に築き上げていたドラムとベースのリズムセクションに興味を持つようになりました。

で、ハーモニーを担うがない分、インプロビゼーションの「軸」とも言える調性の根っこの部分を強靭かつ太い音で提示するマラカイのベースに魅了され、自分もベースを中心にアンサンブルを形成していくような音楽を作ろうと思ったのが、そもそもの新撰組のコンセプトとなりました。

《蛤御門》という曲は、そんな感じでスタートした新撰組の初期に作ってみたナンバーです。ミック・カーンが好きで、ベースを始めた私のこと、どうせベースラインを作るのであれば、ミック・カーンみたいなラインにしたいと思い、弦のスライドやダブルストップ、そしてハーモニクスを混ぜたラインにしてみました。できた後に気づいたのですが、JAPANの《サンズ・オブ・パイオニア》に似たベースラインですね。真似をしたつもりはなかったのですが、ミック・カーンのベースの真似をしているうちに自然に手癖として染み付いてしまっていた指の動きが無意識に出てしまっているのでしょう。

このベースをドラマーに聞かせながら、「これに合わせて、適当にドラムを叩いてみて」とお願いし、ある程度のリズムフィギュアが決定したら、今度はテナーサックスのメンバーに、「このリズムに合わせてテキトーにフレーズを吹いてみて」とお願い。

延々とリズムが同じパターンを反復する中、テナーサックスが自由に吹いているうちに、なんとなく曲としてのカタチが固まっていった感じです。

何度かライヴで演奏し、その度にドラムのリズムパターンやテンポが変わっていきましたが、ベースラインは相変わらずそのまんま。基本16小節をひとかたまりとするパターンを延々と繰り返すだけ。この単調さは、弾いていてとても楽しいものでした。

今回YouTubeにアップした音源は、ギターが参加しているバージョンで、今まで演奏してきた《蛤御門》の中では、もっとも速いテンポのものです。たまたまジャズ研に遊びに来ていたギターのOBにぶっつけ本番で合わせて弾いてもらった時の演奏が、たまたまカセットテープに録音されていたので、アップしてみた次第。

本当、ギターの先輩はこの曲のことなど全く知らない状態で上手に合わせてくれました。ぶっつけ本番の「せーの!」で演奏してしまったため、まだまだアンサンブル的には練り上げなければならない箇所はたくさんありますけど、演奏ミスを含めて、なんだか元気で勢いがあるので、「まっ、いっか」って感じです。

ちなみにYouTube上の画像は、実際に新撰組のメンバーで京都に行った時に、蛤御門の前で撮影したものです。そうなんだよなー、いきなり歴史上に本当に存在した集団の名前を勝手に拝借して祟りにあったりすると怖いので、ちゃんと壬生寺に挨拶詣でをしたんですよ。『四谷怪談』は演劇化されれた際は、スタッフや俳優はお岩さんのお墓まいりをするというじゃないですか。

それと同じ考えです。

記:2015/11/19

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