森高千里の隠れ名曲《晴れた日曜日》
森高千里の名曲に《晴れた日曜日》という曲があります。
『Lucky7』に収録されている曲ですね。
ドラムを叩き始めた頃の森高のアルバムでして、個人的には、『ペパーランド』とともに、森高アルバムの3本指に入るほどの大好きアルバムです。
このアルバムには、名曲《渡良瀬橋》や、♪決めた!沖縄の海にしよう の歌も入っているけど《晴れた日曜日》や《地味な女》のほうが好きだなー。
《晴れた日曜日》は、何も予定を入れていない連休中に、家でノンビリごろごろとしている人には、しんみりと染みてくる曲なんじゃないかと思います。
特に後半のギターソロが泣けるんですよ。
ギターの入るタイミングといい、旋律といい、曲の心をそのままギターが代弁、増幅している。
歌詞の内容は、はっきりいって他愛もないことです。
・晴れた日曜日はお昼過ぎに出かけよう
・夕食は贅沢してハンバーグをつくろう
・奮発して、この店で一番高いお肉を買っちゃおう
・家族サービスはひさしぶり
といった内容ですね。
しかし、よく分からない部分があります。
一番最後の箇所の歌詞です。
♪こんな休日だったら、やっていけそう
♪当分よろしくね
のところです。
とくに「当分よろしくね」の箇所が意味深というか、謎です。
シチュエーションの設定をぼやかしているので、誰に対して言っているのかが分からない。だからこそ、想像力が膨らむんですよ。
最初は、男に言っているのかと思った。
同棲をはじめたばかりの男女の話と受け取っていた。
結婚ではなく、「同棲」ね。
男と生活をはじめたばかりの女の子が晴れた日曜日に気分がよくなり、夕飯は奮発しちゃうからね! という内容だと最初の私は受け取ったのですよ。
なぜ、結婚ではなく、同棲なのかというと、「当分よろしくね」という一言があるから。
結婚ほやほやなシチュエーションならば、
「(これから)ずっとよろしくね」
とか、
「一生よろしくね」になるはずでしょ?
「当分」という言葉を使っているということは、終わりがあること前提なわけで、いずれ、男との生活の終わりや、いずれ自分が男の家から自分が出て行くことを無意識に暗示している言葉だと思っていました。
ところが、年を取ると少し解釈が変わってくる(笑)。
これは、「出戻り」の歌だ、と(笑)。
あるいは、旦那と一時的に別居している女性の話。
そう、実家に戻って、居場所がなくなった実家でお荷物にならないように、単なる居候にならないように、一応、家族へサービスしようとしている女性のいじらしい姿。
そういえば、よく聴くと、
♪久しぶり、こんな家族サービス
というフレーズがあるではないか。
同棲している段階では、「家族サービス」という言葉は使わないよね。
2人っきりなわけだから、サービスする相手は1人しかいないわけで、彼氏においしいハンバーグを作ってあげることに「家族サービス」という言葉は普通使わない。
てことは、「同棲」というシチュエーションの線は消えた(笑)。
やはり「出戻り」女が実家に溶け込もうとする歌なのか!?
いやいや、これから書く内容が、もっとも現実的な線だと思うんだけど(森高がこの曲を作った年齢からしても/そして、森高は親しい友達に電話をしたりして歌詞のネタを収集していたそうだが、その当時の森高と同年代の友達の年代を考えたとしても)、OLか女子大生が、夏休みなど日数の長い休みの日に久々に実家に帰郷して、家族サービスとしてハンバーグを作る歌のほうが、解釈としては自然かもしれませんね。
ま、いずれにしても、微妙に哀歓のともなうメロディゆえ、このなんでもない日常のひとコマがなんだか意味深に胸に響いてくる。
素晴らしい歌ですね。
森高の『Lukcy7』を昔買って、今では押入れの中で埃をかぶっているよ~、という人は、もういちど引っ張りだして、実家においてきちゃったよーという男性諸氏は、ブックオフで2~300円ぐらいで買ってきて、《晴れた日曜日》を聴いて微妙に切ない気分になってみましょう。
これを聴きながら書いている私は、まだ、午前8時だというのに、すでに心は夕暮れな気分です。
家族みんなで、おいしい晩飯をわいわいガヤガヤ談笑しながら食べれる日が、いつまでも、いつまでも続いて欲しいものであります。
ちなみに、彼女がドラム以外にも様々な楽器を演奏している意欲作『ペパーランド』も素晴らしいアルバムですが、やはり「ご飯を作るネタ」の歌があります。
♪さつまいもの味噌汁、そしてにら玉……。
の《ごきげんな朝》。
これも名曲。
どうも私は、森高の「ご飯作りネタ」の曲が好きみたいです。
記:2008/02/11