椎名林檎の『平成風俗』は良い!
新譜の、椎名林檎×斉藤ネコの『平成風俗』、滅茶苦茶イイです。
豊穣なサウンドの海の中を泳いでいるようで、気持ちいい、気持ちいい。
私にとって、彼女の最高傑作は『加爾基 精液 栗ノ花』だと思っているんだけど、これを最初に聴いたときの驚きと気持ちよさと同等か、それを上回る内容かもしれない。
過去に発表された曲がかなり収録されているけれども、まったく新しいものに生まれ変わっています。
この洗練されたアレンジ、決して鼻につかない、ふくよかなストリングスのハーモニー、やわらかくシルクのようなサウンドは、かなりハイレベルな耳の贅沢。
もちろん、亀田誠二プロデュース&アレンジの林檎曲もいいんだけれども、それは、無数の選択肢の中の可能性の一つでしかなかった、ということを身を持って体感できるでしょう。
もちろん、亀ちゃんのアレンジ、プロデュースを悪く言っているわけではないですよ。それはそれで、一つの100点満点。
でも、違う100点満点も無数に存在し得るということ。
多様なアプローチを呑み込むだけの懐の深さと、素材としての魅力が、椎名林檎の作り出す曲にはあるということですね。
そう、それはまるで、ジャズで長年演奏されてきたスタンダードのよう。
送り手の個性を活かし、なおかつ素材としての曲そのものも殺されにくい強度を持っている。
ジャズ馬鹿だった私が、彼女のデビューアルバムで「ピン!」ときたのは、そして、彼女の曲を演奏するためのバンドをやりたいという猛烈な衝動に突き動かされたのは、おそらくは、そういうことなのでしょう。
そして、林檎の声。
彼女ヴォーカリストとして、成熟してきていると思う。もちろん、昔から人の耳を惹きつけてやまないという磁力を持っていたけれども、表現の引き出しが増えたと思います。
……と、同時にあざとさや作為性が透けて見える歌唱も時折チラホラ見え隠れするようにもなったけれども、それは成長の過程においては仕方のないことなのかもしれないけれどね……。
でも、そんなことは小さな問題。とにもかくにもこの「大作」は素敵、素晴らしい!
万人にオススメしたい名盤です。
記:2007/02/20