ハイパーインフレかと、「敵」、「戦い」の話
2015/05/23
昨日は風呂にはいりながら、息子にハイパーインフレの話をしてあげました。
第一次大戦後に、100兆マルク紙幣も発行されたドイツのハイパーインフレ。
16年間で貨幣価値が1垓3000京分の1になり、垓(10億兆)ペンゲー紙幣までもが印刷されたハンガリーのハイパーインフレ。
1年に50倍も物価上昇をした20年前のアルゼンチンのインフレ。
こういう極端な話って、子供大好きなんですね。
もう目を輝かせて、輝かせて、すっげー、信じられん!みたいなリアクションでさ(笑)。
日本を守るっていっても、いろいろな方法の守り方っていうのがあるんだ。
たとえば、円の価値を暴落させないようにする、ってことも一つの戦いであり、守りなのかもしれないんだよ。だって、日本のお金の価値が紙くず同然になってしまったら、日本に住む人は、暮らすのに滅茶苦茶困るじゃん。
マクドナルドでハンバーガー一個買うために、リュックに札束をつめて歩かなきゃならなくなるかもしれないんだぜ、そういうのって、面倒だし、困るでしょ?
銃や武器で戦い、守る。という選択肢だけじゃないんだよ。
むしろ、そういうのは頭の悪い発想なのかもしれない。
あるいは、シンプルゆえ最後の手段的な解決方法かもしれない。
頭を使い、神経をすり減らし、地味だけど、誰からも褒められないかもしれないけど、人知れず水面下で一生懸命戦う守り方というのもあるんだよ。
戦い、争いの原因は、たいていが、目に見えない水面下での出来事が多いから、もう少し大きくなったらいろいろ勉強してごらん、みたいな話をしてあげました。
早速、この話に刺激を受けた息子は風呂からあがると、10の20乗紙幣(1垓)を作り始めましたが、おいおい、貨幣の乱造でインフレを増長させる原因作るなよ、と窘めておきました(笑)。
そんな話をしながら、私は、村上龍の『愛と幻想のファシズム』を思い出していました。
『愛と幻想~』も、話の背景、発端は、世界経済の恐慌でしたね。
巨大金融企業集団「ザ・セブン」に戦いを挑む政治結社「狩猟社」のあり方も、仮面ライダー対秘密結社ショッカーの攻防とは違う戦い方の一つなんだよ、ってことも教えてあげましたが、それに関してはまだピンとこないみたい。当たり前か。
この物語でも、主人公が常に苛立っていましたからね。
敵の正体がハッキリしなかったから。
きわめて曖昧でイメージが結びつかない。だからハンターである主人公は、敵に照準を定めることが出来ない。
曖昧模糊として、敵の姿が分からないときほど気持ちの悪いことはありません。
そして、多くの敵というのは、具体的な輪郭を示さないまま我々に忍び寄るからです。
なぜ、息子にとってはややこしい話をしたのかというと、最近、息子は、暴力で問題を解決しない新しいヒーロー像を模索しているからです。
息子は今、「ヒーロー見参!」というタイトルのマンガを書こうとしているんだけれども、このヒーローは暴力や戦いで問題を解決しないヒーローにしたい。だけれども、その手段、方法が分からない。イメージが沸かないのだそうです。
だから、アイデアのヒントになるかもしれないかな?と思って。
本当に悪い奴は、そして、頭の良い敵は、ヒーロー番組の敵のように分かりやすいカタチではなく、誰が敵で、どういう状態かすら気付かれない状態で影のように忍び寄ってくるんだよということを教えたかったのです。
ふーん、そうなんだぁ、と息子はどこまで理解できたのかは疑問ですが、世の中には色々な種類の色々なモノやコトがあるんだなぁ、ってことを実感してもらえれば、今の段階ではいいんじゃないかな。よく分からないけど。
▼「五分後の世界」とともに、村上龍の中では好きな作品です
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)
記:2007/08/08(from「趣味?ジャズと子育てです」)