伝説のロッククイーン/ジャニス・ジョップリン
最初に買ったジャニス・ジョップリンのアルバムは『伝説のロッククイーン』だった。
だから、これに収録されている演奏のバージョンが一番好きだし、このアルバムの順番で聴かないとシックリこない。
それほど聴き込んだ。
ドキュメンタリー映画『ジャニス』(75年)のサントラとして制作されたこのアルバムは、彼女へのインタビューや、TV出演時の会話などが曲間に散りばめられているので、歌のみならず、ジャニス・ジョップリンというシンガーの持つ“空気”のようなものまでパッキングされているかのようだ。
おまけに、壮絶な歌唱としてあまりにも有名な《サマータイム》や、代表曲の《ベンツが欲しい》、《ボール・アンド・チェーン》、《ジャニスの祈り》、《ミー・アンド・ボビー・マギー》などが目白押し。ジャニス入門としても最適な選曲となっている。
しかし、ディスク1の内容も素晴らしいが、私は個人的にはディスク2のほうを愛聴している。
『伝説のロック・クイーン』というタイトルに偽りあり、とまでは言わないが、私は彼女の歌には濃厚にゴスペルやフォークの匂いを感じる。
たとえ、演奏の形態がロックであっても、歌の根底に脈々と流れているのは、ゴスペルの熱きエネルギーだ。
まるで内臓を搾り出すかのごとくの歌唱《ベンツが欲しい》や《サマータイム》などを聴けば、それがよく分かると思うが、ディスク2を聴けば、彼女のルーツがとてもよく分かる。
63~65年のテキサスやシスコでの未発表ライヴが収録されているのだ。
エレキギターのサウンドを凌駕するほどの歌唱を見せるジャニスもたしかに彼女の一面ではあるが、未発表ライブの音源で聴けるアコースティックギターとともに楽しげに歌うアット・ホームな雰囲気も、また、ジャニスの偽らざる一面。
まるで、普段着のジャニスを覗き見ているかのようだ。
《銀の糸と金の針》なんか、素朴で楽しげな雰囲気が伝わってきて、個人的には大好きなナンバー。
内容、編集ともに文句のない充実度を誇るこのCD。
ぜひ、多くの人に聴いてもらいたいと思っている。
記:2008/02/01