歌舞伎町の女王のベース
2019/11/19
林檎ファンになったキッカケ曲
この曲で椎名林檎を知った。
オフ会でカラオケに行った際に、「はっぴぃえんど」好きの女性がこの曲を歌っているのを聴いたのがキッカケ。
歌詞もメロディも古くて新しい感触が妙に新鮮だった。
古めかしいアレンジのサウンドが逆に猥雑な感じを受け、この曲の世界の虜になった。
そしてベースライン、非常にオーソドックスな8ビートのバッキングでありながら、要所要所に効果的なフィル・インを入れている。
「ベタだなぁ、でもカッコイイ!」
こういう歌のバックでベースを弾けたらどんなに幸せだろう、と思った。
で、こういうベースラインを弾くのなら、ジャズベースではなくて絶対にプレシジョンだろうな、とベースの種類まで考えていた。
彼女がカラオケを歌い終える頃には、この曲をバンドで演奏している自分の姿までをイメージしていたので、初めて聴いた歌を、しかも原曲ではなく、カラオケのサウンドを聴くだけで、ここまでイメージしてしまう自分の妄想力も大したものだ。
しかし、数カ月後にこのイメージは現実となる。
「今の歌、誰の歌?」
「椎名林檎の歌よ。いいでしょう?」
「へぇ、椎名林檎ねぇ。名前は聞いたことあるかもなぁ。」
CD屋へ行った。
アルバム『無罪モラトリアム』を購入した。
《歌舞伎町の女王》を聴いた。
うん、やっぱり良い。これは絶対バンドを組んで演るしかない。
しかも、このベースの音色は、やっぱりプレシジョンだな。よし、最近出番がなくて放置していた57年製のプレシジョンに活躍の場を与えてやろう。
『無罪モラトリアム』のスコアを買った。
この曲は、譜面を眺めるだけだと、比較的規則的で整然と音符が並んでいるので、譜面ヅラから受ける印象は、どちらかというとイーブンでスクエアな「カチッ」としたラインを思い浮かべがちだ。
しかし実際の演奏をCDで聴くと、ベースの躍動感が凄い。
グイグイとサウンドをプッシュしている。グリスを多用しているせいか、ベースラインに「粘っこさ」が増している。
弾いている人は、なかなかエッチで男らしいベーシストなのだろうな、と思った。
もう、これはバンドを組むしかない。
椎名林檎のファン・サイトでメンバーを募集している女性がいたので、声をかけて、あとはトントン拍子にバンド結成。
何度か練習を重ね、気付いてみれば、カラオケでこの歌に出会ってから半年も経たずに、ライブで「歌舞伎町の女王」のベースを弾いている自分がいた。
椎名林檎のバックでベースを弾いている亀田誠治氏、さすがにこの人の弾くベースは、多くのベーシスト心をくすぐるようで、ベース・マガジンには何度も登場しているし、表紙を飾った号もあった。
インタビューを読むと、この人のメインベースは、フェンダーの66年のジャズ・ベース。
《歌舞伎町の女王》で感じた「このベースはプレシジョンに違いない!」という私の直感はハズレてしまったが、インタビューを読むと、「ジャズベのフロント・ピックアップのみを使って、自分の中ではプレシジョン・フィーリングで弾いた」と語っていたので、私が感じた直感もあながち間違いではなかったのだな、と安堵。
まぁ、こんなことで「あってる・間違ってる」を気にしてもしょうがないんだけれどもね。
なにはともあれ、この「歌舞伎町の女王」という曲は、私が椎名林檎を知り、バンド活動、さらには林檎ファンを集めたオフ会などを催すようにまでなるキッカケとなった、記念すべき曲だ。
記:2000/11/19(from「ベース馬鹿見参!」)