大韓航空機の乗り心地
先日、生まれてはじめて大韓航空機に乗った。
周囲は「大韓航空?大丈夫?」と心配してくれたが、私はそれほど心配していなかった。
どうやら、周囲の心配は、1983年に大韓航空のボーイング747が、旧ソビエト連邦の領空を侵犯し、ソ連防空軍の戦闘機により撃墜された「大韓航空機撃墜事件」や、金賢姫ら北朝鮮の工作員による「大韓航空機爆破事件」の記憶が頭から離れないのだろう。
しかし、この2つの事件は、パイロットの力量不足によって生じた事故ではない。
サハリン沖の事件は、領空侵犯をしたのは大韓航空機であるものの、撃墜したのはソ連のスホーイ15TM迎撃戦闘機(フラゴン)だし、爆破事件も、飛行機の中に詰まれた液体爆弾が原因で、パイロットの腕が未熟ゆえの事故ではないのだ。
つまり、領空を犯したり、テロ工作員が搭乗しないかぎりは、少なくとも地面や海面に激突することはないわけで、さらに大韓航空のパイロットは自社養成パイロットよりも、韓国空軍出身者が多いことも知っていたので、墜落の心配はほぼ皆無だと判断していたのだ。
少なくとも、飛行機自らが墜ちる心配はないだろうよ、と。
ところが、揺れるんだな、これが。
滅茶苦茶揺れる。
羽田を離陸した途端、急旋回。
客席からはやくも「わぁ~」という声があがる。
気流の関係で機体が揺れるのは、どの航空会社の飛行機にもあることだが、大韓航空の場合は揺れの度合いがすさまじい。
またもや一部の乗客からは「きゃ~」の声があがる。
軍隊出身のパイロットにしてみれば、この程度の揺れは許容範囲なのだろう。
元戦闘機のパイロットだからこそ、乗客が悲鳴を上げるレベルの揺れも、「この程度なら失速しない」レベルなのかもしれない。
気流が不安定エリアの機体の揺れのレベル、日航やANAなど日本の航空会社の揺れが「3」をマックスだとすると、大韓航空の場合は平気で「5」を通り越す瞬間がある。
さすがにキャビンアテンダントは冷静だが、私が座った座席の通路を担当していたアテンダントはまだ新人だったらしく、通路を移動する際の脚が微妙に震えていた。
また、帰りの便ではキャビンアテンダントが飲み物や機内食を用意するエリア内の積荷が落下したようで「ドン!」と物が落ちる音がした。
着陸の際のアプローチもかなり強引で、横に流れるように機体が降下してゆく。
ジェットコースターの落下の時のような下半身が下に吸い込まれる感覚に襲われ、またもや客席から「うぉ~」という声。
「ガン!」と、まるで滑走路に激突するような衝撃を感じつつ着陸。
着陸後の速度も半端ではなく、しかも機体が右に流され、滑るような感じがしつつも、それを修正するかのように、今度は逆方向の左側に流される感触。
スピードもなかなか落ちず、ちゃんと止まるのかな?なんて声も聞こえた。
私は、着陸時の「ガン!」という強い衝撃から、飛行機の脚部は次の着陸の時に大丈夫かな?なんて心配をしていた。
韓国旅行の行きも帰りもだいたいこのような感じのフライトだった。
機長は違うはずなのに、乗客として機内で感じた印象は、総じて「荒っぽい」。
先述したように、戦闘機のパイロット出身の機長であれば、これらの揺れも衝撃も許容範囲でどうということはないことなのだろう。
つまり、彼らにとっては失速や墜落の危険性のないレベルなのだろう。
しかし、乗客の基準からしてみれば、大げさにいうならば空飛ぶレールのないジェットコースターだ。
たしかに、大韓航空は墜落がないという点では安全かもしれないが、「快適な空の旅」だったかというと、必ずしもそうとは言えない内容だったと思う。
「安全」と「安心」は違うのだなと思った次第。
記:2011/09/05