マラルメの火曜会と、ジャズ喫茶「いーぐる」の講演会
2016/05/10
恥ずかしながら、私、先週の土曜日まで、マラルメの「火曜会」のこと知りませんでした。
「火曜会」とは?
マラルメはマネをはじめ、諸芸術家とたいへん親交が深かったことでも有名である。ローマ街にある自宅で開かれた「火曜会」と呼ばれる会合には、数えればキリがないものの、画家のモネ、ルノワール、そしてドガなどの印象派をはじめゴーギャンやドニ、ホイッスラー、詩人のヴェルレーヌ、ヴァレリー、作家のオスカー・ワイルド、アンドレ・ジッド、作曲家のドビュッシーなど、錚々たる芸術家が集まった。(「ウィキペディア」より)
で、先週土曜日、ジャズ喫茶「いーぐる」で行われた、八田氏による「いーぐる特集」が終了した後、近所の中華料理屋で打ち上げをしていた際、マスターの後藤さんが「マラルメの火曜会」の話をしたんだけど、私、知らなかったから、「それなんですか? 歌謡会? 昔のフランスの舞踏会のようなものデスか?」みたいなトンチンカンな質問をしたんですね。
そしたら、後藤さん、「あなたねぇ、マラルメの火曜会ぐらい知ってないとマズいよ~」。
概要を教えてもらうと、上で引用した「ウィキペディア」で解説されていたような会だったわけですね。
なるほど。
パリのカフェ、「ドゥ・マゴ・パリ」のことならちょこっと知っていたけど、その「ドゥ・マゴ・パリ」にも、マラルメは出入りしていたみたいで、私の断片的な知識がちょこっと大きな知識とリンクしたような気がした一瞬でした。
それはそうと、後藤さんによるマラルメの「火曜会」の話を聴いていると、まさに、現在コンスタントに行われている「いーぐる特集」ではないですか。
私も「音聴き会」なるジャズの鑑賞&勉強会を催していますが、「いーぐる特集」はレベルが違いますからねぇ。
気鋭の評論家、そのジャンルにおいてはコンプリートなコレクションを誇るコレクター、ひとつのテーマを掘り下げるために、たとえばビバップだけを1日10時間近く半年以上聴いて分析をしている方、ディスコグラフィーを作成されている方……。
そのような人たちが、音をかけ、言葉による解説で、会場にいらしたコワモテジャズマニアを納得させなければならない。
講義のクオリティが低ければ、打ち上げでコテンパンにやられてしまう…、といういわば、「ジャズ道場」的なこわ~い、イベントなのです(笑)。
いや、自分のジャズの認識の浅さ、深さが問われ、なおかつ、限られた時間内に、人前で自分の考えを発表する上での情報の取捨選択能力、選曲を含めた編集能力、さらには話術や度胸も問われるイベントなのです。
恐ろしや(笑)。
というのは、半分冗談ですが、この「いーぐる特集」で発表の場を持った人たちの多くは、ジャズ評論の第一線で活躍している人が多いのです。
つまり、ライブで人を納得させるだけの力量を持つ人は、活字でも人を惹きつける力を持つ。
いや、卵か鶏かで、もちろんどちらが先かは分かりませんが、すでに300回以上の回数を優に超える歴史を誇る「いーぐる特集」は、講演する人も、講演を受ける側も、心地よい緊張感と、自らのジャズの認識を深められる、とても良い機会ではあるのです。
以前、神楽坂芸者の話をここに書いたことがあると思いますが、そこにも同じことを書いたと思います。
「遊び」と「勉強」は表裏一体。
遊びを極めるためには、基礎知識、基礎体力を身につける「勉強」が不可欠なんです。
それは、スポーツも楽器もそう。
最初は我慢の世界かもしれないけれども、勉強を最初にみっちりするかしないかでは、後々、世界の広がりがまったく違う。
長続きするかしないか。それも、勉強量に比例するような気がします。
「たかが音楽じゃねーか、楽しきゃいいんだよ、楽しきゃ。勉強なんてしゃらくせぇ」
と言う人もいますが、そういう人にかぎって、ひとつのことを長続きさせるだけの持久力がないように感じます。
つまり、勉強の裏づけによる「モノゴトの根っこを掴まない段階」で、興味の対象が他に移ってしまい、広く浅く、流行の世界をさまよい歩く。
そういう生き方も否定しませんが、たとえ1つでもいい、本当に好きなものの根っこの部分、本質の部分を垣間見ることができないまま、違う世界にお引越しをしても、結局はどの世界にも根付けないと思う。
ま、別に根付かなくても良いんだけどさ(笑)。
そういった意味で、楽しみ半分、勉強半分というスタンスでジャズに接している私にとっては、自らが主催する「音聴き会」、そして、「いーぐる特集」は、ジャズの理解をよりいっそう深める良い機会なのです。
ジャズの理解を深めて、一体どうするって?
簡単です。
ジャズの理解が深まると、毎日がよりいっそう楽しくなる。
楽しむために勉強するの、私は。
楽しい時間をすごすために働いてるの、私は(笑)。
と、話が余計な方向にズレかかっていますが、後藤さんに「いーぐる特集って、まさにマラルメの火曜会じゃないですか?」と言ったら、「そりゃ当然、最初から念頭に入れているよ」とのこと。
当たり前か。
で、久々に、その「火曜会」、じゃなくて、「いーぐる特集」をさせていただけることになりました。
ちょっと先ですが6月30日の土曜日。3時半から。
テーマは「バド・パウエル」です。
日ごろの研究成果を発表したいと思います。
といっても何にも研究してませんが…(笑)
パウエル初心者が、私のお話とパウエルの音源を聞いて、パウエル好きになって欲しい。そんな趣旨のイベントにしたいと思っています。
さぁ、みんなで、「いーぐる」に来よう!
地方にお住まいの皆さんも、今からだったら、予定の調整つくタイミングですよね(笑)。
さぁ、6月30日は、「いーぐる」だ!(笑)
記:2007/03/26