ドラマ『まほろ駅前多田便利軒』の《まともがわからない》

   

まともがわからないまともがわからない

《まともがわからない》は、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎の名曲だ。

ドラマ『まほろ駅前多田便利軒』で使用されて、このドラマが持つ何とも言えぬ倦怠感を非常にうまくすくいとったカタチのエンディングテーマとなっている。

最初に聴いたときは、シュガーベイブの《今日はなんだか》を一瞬思い出した。

ギターとキーボードのバッキングが一瞬似ているかな?と思ったのだ。

もっとも、《今日はなんだか》にはキーボードがはいっていないけど。

しかし、リズミックであくまで前向きな《今日はなんだか》に対し、《まともがわからない》の場合は前向きに進んでゆく感じではなく「停滞」した感じ。

後ろ向きではないけれども、前に進んでゆかないムズムズした感じが、なんだかドラマの「気分」とリンクしていて、非常に心地よいのです。

それと。

サビの「♪まともがわからない」のフレーズ、これはエレポップ・グループ、イレイジャーの《ヴィクティム・オブ・ラヴ》のメロディですね。

ま、偶然なんだろうけど。

最初に聴いたときは、一瞬上記2つの楽曲が思い浮かんだものの、これはまぎれもなく坂本慎太郎が持つ独特の「気怠さ」が表出された、まぎれもないオリジナルだと思います。

特に、ゆらゆら帝国で、クラクラと眩暈がしてしまうほどのディレイがかかったギターは健在。

サビの印象的な「例のフレーズ」が、ものすごく、頭の中をクラクラとめぐるのです。

「ずるい!」と思ってしまうほどにキャチーでありながらも切なくドラマティック。

このフレーズはクセになりますね。

そして、聞き慣れてきたら、ぜひ注意して聴いてほしいのが、ドラム。

特にハイハットの音に注目!

オープンハイハットの「ツーッ!」と入るタイミングが絶妙なんです。

歌詞をまったく邪魔していない。

ちょっとした余韻や、声を伸ばしている箇所に「ツーッ!」とオープンのハイハットの金属音が挿入されているんですね。

これ、歌詞を理解していないと叩けないですわ。

歌詞の「世界」や「意味」の理解ではなく、歌詞が持つリズムとか隙間という意味での「理解」ね。

この曲を聴いていて気持ちよく感じるのは、ヴォーカルやギターももちろんあるんですが、最終的にはドラムのハットの音がスパイスになっているんじゃないかと思うんです。

記:2014/10/10

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