モビルスーツと第二次大戦中の戦車
HG UCHG 1/144 MS-06 ザク地上戦セット (機動戦士ガンダム MS IGLOO)
モビルスーツと戦車
最近では、数え切れないほど様々なバリエーションのガンダムが出ていて、その全部をチェックしたわけではないので一概には言えないが、少なくとも「ファースト・ガンダム」におけるモビルスーツは戦車に準えることが出来る。
それも現用ではなく、第二次大戦中の戦車だ。
ザクはⅣ号戦車
特に、ジオン軍のモビルスーツ。
まるで、大戦中のドイツ戦車のようではないか。
特にザク。
これは、まるでⅣ号戦車だ。
ザクもⅣ号戦車も、もっとも生産台数の多い、大戦を通しての主力兵器といえる。
よってバリエーションも豊富だ。
A~J型までのバリエーションに加え、43口径の長砲身に75ミリ砲を搭載したF2型(Mk.4スペシャル)、車高を低くした突撃戦車に対空タイプ、駆逐戦車(ラング)に臼砲装備型(ブルムベア)など、4号戦車の車体を改造した様々な派生タイプが存在した。
同じことはザクにもいえて、レコン(偵察)タイプに、対空タイプ(ザクキャノン)、水中用もあれば、砂漠用のデザートタイプに、下半身が戦車のザクタンクまで様々なタイプのザクがある。
大戦主力の戦車が4号戦車とすれば、その一歩前の旧型タイプがⅢ号戦車だ。
ザクでいえば旧ザクにあたるのだろう。
ドムはタイガー
ドイツの戦車といえば、代表的なものはタイガー(ティーゲル、あるいはティーガー)戦車だが、この重厚なフォルムと、破壊力抜群な88ミリ砲搭載の重武装っぷりは、まるでハイパー・バズーカ砲を装備したドムだ。
Ⅵ号戦車タイガーは、Ⅳ号戦車に取って代わる新たな主力戦車として位置づけられるが、ザクに対するドムも、そのような位置づけなのだろう。
ゲルググはキングタイガー
そして、大戦末期に登場した武装も破壊力も抜群だが、いかんせん、敗戦色の濃くなった物資の乏しい時期に生産されたがめに、戦局を覆すほどの効果を発揮出来なかった兵器がドイツ軍で言えばキング・タイガー(ケーニッヒ・ティーゲル)、ジオン軍で言えば、ゲルググと言えるだろう。
シンプルで、Ⅳ号戦車のようにコテコテとした飾りの無いキングタイガーのフォルムは、ザクのようにコテコテと動力パイプの無いゲルググに共通する力強さがある。
シンプルでスッキリとした外見から醸し出る、自信と逞しさ。
この風格も、キングタイガーとゲルググに共通したものだ。
そして、恐るべき破壊力を秘めつつも、実戦で運用されることのほとんど無かったマウスは、ジオン軍でいえば、ビグザムと言えるだろう。
もっとも、ビグザムはモビルスーツではなく、モビルアーマーだが……。
ジムはシャーマン
一方、ドイツ軍がジオン軍ならば、地球連邦軍は、連合軍、ことにアメリカの戦車にたとえられる。
アメリカの戦車、一台一台の性能は、ドイツの戦車と比較すれば、たいしたことはない。
しかし、圧倒的な物量を誇っているのがドイツ軍とは違うところだ。
言うまでもなく当時の代表的な戦車はM4シャーマンだろう。
この戦車は、太平洋においては、日本軍の戦車の敵ではなかったが、ひとたびドイツ戦車を相手にすると、互角か、それ以下な存在だった。
まるで、ドムの前のジムのように。
しかし、数機のジムは、一機のドムに勝る。
結局、地球連邦軍は、そんなに強いとは言えないモビルスーツ・ジムを大量に投入することによって勝利を収めたが、ドイツ戦車とアメリカ戦車の関係もそれに近いといえる。
M4シャーマンは、大戦を通して5万台も生産されたが、当然様々なバリエーションが存在する。
同様に、ジムの場合も、ジム・トレーナー、パワード・ジム、ジム・コマンド、ジム・ライトアーマー、アクア・ジム、ジム・スナイパー・カスタムや、ジム・キャノンのようなバリエーションが数多く存在する。
ボールはM5軽戦車
連邦軍のモビルスーツはジムと同じく、ボールも忘れてはならない。
これは、明らかにジムよりは武装もパワーも劣る兵器だが、アメリカ軍の戦車においては、おそらくM5戦車あたりがボールに値するかもしれない。
いわゆる軽戦車なので、ドイツ軍のタイガーを撃破出来るほどの破壊力は無いが、それはまるで、ボールとドムが勝負にならないのと同じような感じだ。
せいぜい、ボールが一騎打ちで勝てるとしたら、ザクぐらいなものか。
これは、M5が、戦いようによってはⅣ号戦車をやっつけられるのと同じようなものかもしれない。
ファースト・ガンダムのスタッフは、劇中に登場する架空の兵器の位置づけとして、ドイツ軍、アメリカ軍を意識したのかどうかは分からない。
しかし、ドイツとアメリカにおける兵器の開発と運用の思想の違いは、そのままジオン軍と連邦軍に当てはまるので、面白い。
ミリタリーモデラーのの嗅覚
今やガンプラ(ガンダムのプラモデル)は、とてもメジャーな存在だが、ガンダムの第一次ブームの時に、バンダイから出たプラモにミリタリー風の塗装を施し、驚くほどリアルな出来に仕上げたのは、ほかならぬ、普段は戦車は飛行機などを製作していたスケールモデラーたちだった(ストリームベースの小田氏など)。
ガンダムの世界における架空の兵器を、現実界に存在する(した)兵器に準え、見立てた彼らは、アニメのロボットと、現用のミリタリー兵器の境界を見事に埋めたのだ。
きっと、現実界における兵器の開発、運用の思想に近いものをガンダムの世界から敏感に感じ取ったに違いない。
そんなわけで、私は「ファースト・ガンダム」のモビルスーツを見るたびに、戦車を思い出してしまうのです。
え?グフ?
え?パンサー?
コジツケだけど、ザクとドムの中間に開発されたグフは、4号戦車とタイガーの中間に開発されたパンサー。
ということにしておきましょう。
なんか、ちょっと違う気もするけど。
記:2002/12/03