ごめんね、モスコミュール
2018/01/14
モスコミュールはガキの酒だと思っていたので何年も遠ざけていた。
もとより、カクテルのような口当たりの甘いアルコールの飲み物は好きではないのだ。
「なんで“ジュース”を飲んで酔っぱらわなきゃならないんだよ!」と、猛烈に損をした気分になってしまうからだ。
口当たりと体内の手応えの一致しなさっぷりが気持ち悪いということもあるが、要するに、私はケチだからなのだろう。
ガキがたかだか口当たりの良いジュース飲んだくらいで酒飲んだ気になってんじゃねーよ、まるでコーヒー嫌いな女が、ミルクたっぷりのキャラメルなんとかというメニューに釣られて、スター・バックスという“コーヒーショップ”のリピーターになっているのと同じじゃないか、あぁ、本質剥離、本質剥離、コーヒー屋がコーヒーのミルク割り的なメニューで繁盛して、飲み手も「コーヒーっぽい」モノを飲んでいるつもりなのだろうけど、ああ、なんだかよく分からなくなってきたけど、別にどうだっていいんだけどさ、要するに店はコーヒー出してなくて、コーヒーショップに来た客もコーヒーを飲んでいない、と、ただそれだけの事実なんだけど、まぁ気にならない人には、それはそれでまったく構わないことだけど、ヘビースモーカーな俺は、煙草を吸わせくれないからスターバックスという店には自発的には行かないし、なんだか、モヤモヤとしたモドカシさってほどでも無いけど、なんだか自分でも書いていてよく分からなくなってきたような、ヘンな気持ち悪さを感じてしまうのだ。
気持ち悪さ?
えーと、そうそう、要するに口当たりの良い酒を飲んで、「酒を飲んでるぜ」って手応えが無いにもかかわらず、なぜだかカラダが言うことききませんな状態に酔っぱらっているという状態がイヤだなぁ、ということ。
テキーラなんかもそうだね。口当たりに反比例して、相当にシタタカだ。
なんだか、猛烈にキーを叩いている指がスベリまくっているけど、まぁそういうことです。(←どういうことだ?)
どういうことかと言うと、えーとですね、つまり、モスコミュールというお酒は、高校生がカラオケボックスで飲むお酒だという先入観が私にはあったわけです。
なので、ケッ、イイ年して飲んでられっかい、そんなもん!てなワケなのでした。
それともう一つ。
山田詠美が何かのエッセイで嘆いていたが、自分の小説が映画化された際、えーと、たしか『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』だったっけかな? 監督がイモなのかアホなのかは知らぬが、モスコミュールが「カッコイイ・おっとなぁ」な演出上の小道具として使われていたのだそうな。
女性がカウンターで燻らせる煙草の銘柄はセーラム・ライト。
バージニア・スリムだったかもしれないけど、要するに国産じゃないメンソール煙草。
で、気怠く飲む酒がモスコミュールなのだそうで(笑)。
これが、都会でアバンチュールを楽しむ女?(笑)
かなりベタなギャグのシーンなのかと思ったら、どうもそうではないらしい。
私はこの映画を観たことないから、どのような演出意図でこのようなシーンと小道具が登場したのかは分からないが、エッセイの書きっぷりを読むに、少なくともギャグではないようなのだ。
これには山田詠美もサスガに呆れたらしい。
そりゃそうだ。
原作者としては自殺モンかもしれないですよ。
自分の作品イメージが安っぽく汚されてしまうわけだから。
バーのカウンターでモスコミュールにメンソール(笑)。
「(笑)」をつけたくなるような機微、あなたには分かるでしょ?
え? 分からない?
それはかなりヤバイですよ(笑)。
では、彼女のいない男性諸君に良いことを教えてあげましょう。
メンソールを吸いながらモスコミュールや、甘いカクテルを飲んでいる女は、かなりの確率でイモです。田舎モンが多いです。
かなりの確率とは、どれぐらいの確率なのかというと、まぁ血液型性格診断や、動物占いや、ガンダム占いが、なんとなく当たっている項目が多いような気がするなぁ、と感じるのと同等の当たり率だと思っていただければ(笑)。
なので、素朴な女性が好きだなぁ、都会っぽい女性って苦手だなぁという男性諸君は、そのような女性を見かけたら、迷わず声をかけてみるべし。
背伸びして虚勢張っている可能性はありますが、きっとアナタ好みです。
もっとも、そういう女性は一人でバーのカウンターにいる確率はものすごく低い。
大抵、2人以上の女性同士のグループでツルんでいる確率が高いので、もし声をかけたいのなら、こちらも2人以上がよろしいでしょう。
逆に、都会的で洗練された女性と洒落た会話を愉しみたい御仁は、そのような女性には近寄るべからず。
時間のムダです。
会話が面白くありません。
黙っているか、自分のことしか話そうとしないから。
私の偏見だが、だが経験的にかなり確信を持って言えることだが、モスコミュール飲みながらメンソール吸ってるような女性にイイ女はいない。
アルコールにしても煙草にしても、いかにも中途半端な域にとどまっているって感じしませんか?
本当にカッコイイ女性は、煙草を吸うにしてもメンソールは吸わんし、吸わない人はキッパリと吸わない。
電車の中でコミック雑誌を読んでいる男性に嫌悪感を覚える女性も多いと思うが、それと同種の感触だと思う。
実際はそうではないのかもしれないが、ぬるそう、ゆるそう、芯が無さそう、そんなイメージを持つことはあっても、間違ってもカッコイイ、優秀、仕事出来そう、頭良さそうといったイメージは持てないでしょ?
電車の中の男性のコミック雑誌が、バーのカウンターの女性のモスコミュールとメンソール煙草みたいなものだ思う。
時間とお金に余裕があったら、是非、一人でバーに出向いてごらん。
色々と人間観察が出来て面白いよ。
飲んでいるお酒、吸っている銘柄、飲むペースも含めて、カウンターからさり気なく様々な人間模様を観察してみましょう。
小説家になるために、もし修行をする余裕と時間があれば、やっておくと良いと言われている職業って何だか知っていますか?
1にホテルマン。
これは実際、森村誠一がそうでしたね。ホテルには色々な客がいるわけで。
色々な秘められた人間関係や、へぇ、色々な仕事があるんだねぇ、と感心してしまうほどの様々な職業を知り、そして人間の本質的なヤバイ部分すら垣間見れることだって運がよければあるかもしれない。
2にタクシー運転手。
私のように後部座席で平然とエロいことをはじめてしまうような客を含めて、実に色々な人間模様を観察出来ます。
名前は忘れたけど、不遇時代にタクシー運転手をやっていた作家もいるそうだ。
3にバーテン。
これは言うまでもないですね。
以上の3つのどれでも良い、どれか一つでも経験すると、人間を観る目が変わる上に、相当観察眼も鍛えられる。ひょっとしたらネタになるかもしれないのだそうだ。
だから、というわけでもないが、別にバーテンじゃなくても、一人でバーで飲みに行くだけでも、バーテンほどではないにせよ、随分と色々な「社会勉強」をすることが出来る。
スナックやパブのような「行き着け」色の強い、会話がメインとなってしまうようなところはNGだよ。
あくまで、店が自分のことを心地よく放っておいてくれて、「一人な状態」を楽しめるようなバーでなければダメだ。
あ、誤解無きよう断っておくと、私の場合は「考えごと」をするために行くのが主な理由だから、ユーミンがファミレスでネタ拾いをするような、そんなノリで行っているわけじゃありませんからね、念のため。
もう一つ。
このようなバーで飲むメリットは、当たり前だが、お酒がとてもおいしいということ。
これ重要。
だって、モスコミュールがおいしく飲めるのだから。
おお、やっとモスコミュールに繋がったぞ!
そうそう、私は長い間、モスコミュールをバカにしていたが、このような店で飲むモスコミュールはとてもウマイものだということに、やっと最近気がついたのだ。
考えてみれば、モスコミュールに罪はない。
バカにされるべき対象は、イケテイナイ人間のほうだったのだ。ゴメンよ、モスコミュール。
ポイントは、真鍮製、あるいは銅製のカップだ。
マグ・カップ大の大きさの真鍮カップでモスコミュールを出している店は、信用しても良い。かなりの確率でおいしいモスコミュールを飲むことが出来る。
真鍮製のグラスを使っているだけあって、かなり冷えた状態で飲むべきお酒だということが分かる。
冷たさが失われる前に、早いペースで飲んでしまおう。
そう、我々は仕事帰りにビヤガーデンなんかで、ジョッキを持って「カーッ、うめぇなぁ!!」と喉を潤すが、このようなノリで飲むのが粋で、正しい飲み方なようだ。
生ビールよりも喉を潤す効果は高いし、実際外国のバーでは、炎天下で汗をかきながらやってきた客はまずはモスコミュールでグイッと一杯喉を潤し、汗が引いたところで、ビールを飲む人が多いのだという。
「食前酒」ならぬ「酒前酒」的な趣きだ。
キチンとした店で出される、真鍮のカップに入ってキーン!と冷えたモスコミュールは、サラッとした喉越しと爽やかさがあり、カラオケボックスで出されるような妙なベトベトしたような感触も、口の中で感じる薬品臭いアルコールの不自然な刺激もまったくない。それこそ、「はちみつレモン」を飲んでいるような感覚でサラッと飲める。そうそう、「はちみつレモン」の味に似ているんだよな。
“ジュース”で酔っぱらった気分になりたくない私としては、やっぱり、あまり頻繁には飲みたくない酒かもしれない。
ただ、一度も「ホンモノ」のモスコミュールを飲んだことの無いモスコミュール好きさんがいれば、たまにはホテルのバーのような店で、真鍮のグラスに注がれたモスコミュールも如何?
少なくとも、メンソール煙草だって少しはサマになるかもしれないよ。
さて、腹を立てずに、最後まで笑いながら読んでくれたアナタ。
私はそんなアナタとオトモダチになりたい。
機会があれば一緒に飲みに行きましょうね。で、まずは「酒前酒」として、モスコミュールで乾杯といきましょうか(笑)。
記:2001/08/09
※モスコミュール
ハリウッドのバーのオーナーと、ウォッカのメーカーの社長が、互いの売り上げを伸ばす為に考案した飲み物。意味は、「モスクワのラバ」だが、ミュールには「頑固者、強気者」という意味もあるそうだ。
ウォッカ45mlとライムジュース1/2個をタンブラーに入れ、氷を加え、残りをジンジャービアーで満たし、ライムのスライスとマドラーを添えて出来上がり。