よく聞く、または特別な思い入れのある5曲/ミュージカル・バトン2(ドラム編)
先日アップした直後に、別の方からまわってきたミュージカルバトンの回答を、切り口変えてもう一度アップしてみます。
●前回アップした記事
>>よく聞く、または特別な思い入れのある5曲/ミュージカル・バトン
【Total volume of music files on my computer 】
今パソコンに入っている音楽ファイルの容量
外付けHDに13.0GB。
【The last CD I bought】
最後に買ったCD
『EVERY』星村麻衣
※『離婚弁護士2ハンサムウーマン』の主題歌です。
【Song playing right now 】
今聴いている曲
ロバート・ジョンソンの《心やさしい女のブルース》
【Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me】
よく聞く、または特別な思い入れのある5曲
~序文~
私はベースを弾いていますが、じつはドラムが好きです。
良いドラムが良い音楽を形作ります。
メロディ、ハーモニー、歌詞、音色。
これらの要素以前に、ただ単純にドラムの気持ちよさから、特定のミュージシャンを好きになることもよくあります。
以下は、私にとってドラムから好きになった曲を5つあげてみます。
もちろん、しょっちゅう聴き返している曲ばかりだよ。
《冒険者たち Wild Hearts》佐野元春
元春を本格的に好きになったキッカケはこの1曲。
この曲を好きになったキッカケは、勢い溢れる古田たかしのドラムを聴いて。
彼のドラムはとパワフルだが、柔軟。
突っ込みと引きの緩急がとてもうまい。
とくに、これ以上突っ込むと走っちゃうぞ!ってぐらい後方からビシバシと鞭打つようにプッシュする彼のビートは滅茶苦茶気持ち良い。
ライブでも、とても楽しそうに叩いている。
いまでも、彼のバンド、ホーボー・キングで活躍していますが、
ほんと、佐野元春にはこのドラマーあり!ですね。
《バンブー・ミュージック》坂本龍一+デビッド・シルヴィアン
スティーヴ・ジャンセンのドラムが大好き。
アクセントの位置をズラしたり、「くる!」と身体が待ち構えている箇所の拍をあえて抜いてみたりと、まるでパズルをしているように構築的なドラミングです。
だからといって、トリッキーすぎないところがまたいいんだよね。
これまたヘンなベースを弾くミック・カーンとの絶妙なコンビネーションはジャパンの音源でタップリと楽しめるけれども、知的な興奮を味わえるとしたら、教授とシルヴィアンのコレでしょう。
もっとも、リズムのすべてをジャンセンが叩いているわけではなさそうで、たとえば、16ビートのハイハットはおそらく打ち込みでしょう。
また、ハンドクラップや、シンセで作られた音色っぽいドラムの音色からも、ドラムセットを叩いているというわけではなさそう。おそらく、半分が打ち込み、半分が“手叩き”なのではないかと。
しかし、リズムの構築の仕方、とくに、ジラしたまま“イカない”ようなフィルインのセンスは、彼のドラミングセンスそのもの。
シルヴィアンのヴォーカルは相変わらず光っているし、教授のシンセの音色も最高に格好いい。
やっぱり、プロフェット5を使い込んでいた頃の教授が私は一番好きだな。
もちろん、レコードの裏側の《バンブー・ハウス》のほうも好き。
《レプリカントJB》立花ハジメ
高橋幸宏のドラムは軽くて重い。
音色は軽いが、グルーヴは重いのだ。
音色にしろ、軽妙で気持ちの良いハットワーク、シンプルなフレーズの組み立て方は、一聴、軽やかだ。
しかし、演奏全体をさりげなく覆いつくすウネリと存在感はさりげなくスゴい。
とくに、YMOのワールドツアーのライブ音源(『フェイカー・ホリック』など)の幸宏のツブ立ちの気持ちよいハイハットの音を私は愛してやまない。
ここに挙げるは、私が大好きなアルバム『テッキー君とキップルちゃん』の代表曲。
高橋幸宏プロデュースのアルバムだけあって、幸宏のドラムが大活躍。
彼のドラムが軽くて重い旨は先述したとおりだが、このアルバムにおいての幸宏のドラミングは、どちらかというと重さのほうが先立っている。
かなり粘っこく空間を攪拌し、殺伐とした音世界に磨きをかけている。
この曲のドラミングも素晴らしいが、《マッティカリカ》の後半の豪快なフィルインにも痺れる。
《H》立花ハジメ
教授(坂本龍一)が余芸(?)で披露する、ヘタウマドラムはかなり気持ちよい。
彼の傑作『B-2 unit』でも聴くことが出来るが、彼のドラムの特徴は、畳みかけるような突っ込みの激しい性急なタイム感。
次から次へとソロ奏者がめまぐるしく入れ替わる、立花ハジメのファーストアルバムのタイトル曲《H》。
この曲のサウンドストーリーにはピッタリのリズム感なのだ。まさに、適材適所。
このシリアスさとユーモラスさが共存した不思議な曲は何度繰り返し聴いたことか。
《コンジーニアリティ》大西順子
経験値の少ない若者が操縦する最新鋭のギミックだらけのガンダムよりも、百選練磨の古参兵が操るザク(グフでもよい)にシンパシーを抱く。
音楽も同様、たくさんの引き出しやテクニックを身につけたドラマーよりも、少ないワザで、数多くのセッションを戦い抜いてきたドラマーの風格ある音に惹かれる。
ビリー・ヒギンズは、テクニシャンではない。少なくとも、ドラムオタクがヨダレをたらすようなワザは有していないと思う。
彼は、シズル・シンバルによる、「シンバル・レガート一発の人」だ。
しかし、オーネット・コールマンの先鋭的な4ビートから、リー・モーガンの《サイドワインダー》に代表される「ジャズロック」、さらに映画『ラウンド・ミッドナイト』での“真っ当な”スタンダード演奏、そして、共演時はまだ新人だった大西順子のバックアップなど、様々なスタイルのジャズマンとなんの違和感もなく渡り合える懐の深さがある。 少ない手持ちの技も、経験値の高いジャズマンの技は、磨かれ、鍛え抜かれた者だけが持つ含蓄がある。
たかだかシンバルの一音でも、ビリー・ヒギンズは、共演者を鼓舞し、イマジネーションを触発するなにかを持っている。実際、オーネットの曲を演奏する大西順子は、ビリーの一打ごとにインスパイアされっぱなしだったという。
つくづく思う。音楽はワザではなく経験値なのだ、と。
それは、恋愛や仕事や交渉ごとにも言えると思う。テクニックに頼るうちは、まだまだオコチャマなのだよ、と。
技や小道具をたくさん持ち、身体的能力においても兄達に勝るウルトラマンタロウだが、いざ実戦においては、少ない技で幾多の戦いを経てきた初代ウルトラマンやウルトラセブンのほうが、「戦い方」を知っているゆえ、現実にははるかに強いし、使える(と私は思っている)。それと同じだ。
……以上で、おしまい!
記:2005/06/27