「脳トレ」すれば脳力はあがるかもしれないが、その脳力は実社会で役立つとは限らない
2015/05/29
最近は脳トレなどがはやっていることからも分かるとおり、じぶんの脳力に関心を持つ人が増えている人が増えているように思います。
ということは、恐らく多くの人は、願わくば、「脳力」を向上させたいと思っているわけだよね?
でもね、厳しい言い方かもしれないけど、目的の伴わない「脳力」アップを考えている人の「脳力」はいつまでたっても最低なままだと思います。
つまり、そういう人は、漠然と「脳力って無いよりあるほうがいいに越したことはないよね」程度な考えでしょ?
漠然とした目的の伴わない能力のアベレージ底上げに熱心な人って、実際に仕事などで「能力(脳力?)」を発揮しなければならない局面においては使えない人、もっと言ってしまえばバカが多いような気がする。
なにかあったときに、スマートにそつなく対応できるための下準備程度の脳力アップなんて俺に言わせれば必要ない。
一番簡単な脳力アップ方は、目の前のシゴト、目の前に与えられた自分の課題について、どれだけ必死に取り組むか、です。
目の前の現実を尻目にゲームや本のパズルに逃げずに、直面した問題、抱えている仕事にどれだけ脳味噌をすり減らし、すり切らせ、寝ている間も夢の中で考えをめぐらせるほど、考えに考え、考えるのをやめたくなってもそれを続け、絶対に逃げないで、最終的には、出来るだけ最善の結果を現実にもたらすこと。
これに尽きると思います。
これを何十回、何百回と繰り返すうちに、人間は「ある分野においての」、つまり、目の前にある「自分に課された」あるいは、「自分が選択した分野」においての脳力が開花してくるのです。
漠然と俺の脳年齢は何歳だとかいいながら喜んでいるようでは、ダメ。
もちろん、ゲームとしてならいいよ。
話のタネ程度の認識だったらいいよ。
しかし、反射神経や動体視力やキャッシュメモリの脳力をゲームでちょっとばかし上げた程度で、じゃあその脳力を現実社会でどう反映し、使おうと思っているわけ?
と私は思うのです。
悪いけど、そんなテレビ(液晶)ゲームにちょっとばかり長けた程度の能力は、私、まったく信用しません。
筋肉も同様だよね。
敏捷性を目的として速筋(そっきん)を鍛えるか、
持久力とパワーを目的とした遅筋(ちきん)を鍛えるかとでは目的がまったく違うわけです。
まさか、短距離走の人が遅筋を鍛えるようなバカなことはしないよね。
出来るだけ俊敏に早く走ることを目的とした筋肉つくりをするはずで、
「パワーも無いよりはあったほうがいいだろう」 と筋肉モリモリになるようなトレーニングはしないはず。
それと同様、脳力トレーニングも、「やっておけば、なんらかの役に立つ日がくるだろ」程度の認識でせっせとトレーニングに精を出したところで、役に立つ日なんてきませんって。
もちろん、私は脳力トレーニングそのものを否定しているわけじゃないよ。
実際、漢字の書き取りや、簡単な四則計算を一週間から一ヶ月繰り返した老人のオムツがとれたとか、認知症が緩和されたとか、記憶力がよくなったとか、そういう報告もいっぱいあるわけで、たしかに、あまり使っていなかった大脳の前頭前野が刺激され、生命活動に必要な機能が回復することは確かでしょう。
でも、それって、「能力アップ」というよりは、むしろ、「脳力回復」だよね。
衰えた機能を回復させるためには、とても有効な手段だとは思っています。
また、これも脳力トレーニングというのかどうかは分かりませんが、ここ数年は速聴も流行っているようで、
私も4倍速から32倍速のモーツアルトを聞いたりしていた時期もありましたが、ちょうどある本の原稿締め切りが迫っていた時期だったので、これを定期的に聴くことによって、「あー、やべぇ、締め切りだぁ、まじーぜ、書かねば、かけない、どうしよー」とパニクらずに、終始落着いた気持ちで締め切りに前にすべての原稿を担当編集者に送ることが出来ました。
このように目的があれば、脳力トレーニング的なことは無効ではなく、
むしろ活用することで、自分が目的とするもの、欲しいものを得るための潤滑剤にはなるのでしょうが、無目的で、ただなんとなくの漠然とした脳力アップを期待しているような人には、こう言いたい。
学生だったら勉強しろ。
社会人だったら仕事しろ。
目の前の自分の課題に必死になること。それが一番の「能力」アップなのだ。
「脳」の力も大事かもしれんが、実戦においては、「脳」のスペックなんてどうでもいいことなんだよね。
だって考えてもみなよ、ビジネスの現場で「ボクの脳年齢は27歳なんです」だなんて言っているやつがいたら、バカでしょ? 目の前のシゴトとそれがいったいなんの関係があるの? じゃないですか。
「能力」をどれだけ発揮でき、どれだけ実績を作れるか、結果を残せるかのほうが大事なんだよ。
そのためには、電車の中などでみっともない呆け顔でDSなどをシコシコやってないで、自分の仕事の改善点、企画案、問題点など、課題を決めて、それぞれ10個ずつアイデアを頭をしぼってノートに書き出すほうが、よっぽど頭の訓練になるし、自分のキャリアアップにも繋がるって。
ためしにやってごらん。
なんでもいいから、もし明日、クライアントや上司に新しい企画を提出するとして、8個案を書き出すことを。
2個でも3個でもなく、8個。
ノートに正方形を書いて、さらに、縦2本、横2本に線を引けば、9個の正方形が出来るよね?
中心の正方形には、「企画」とか、「提案」とか、「改善点」といったようなお題目を書いて、残りの8マスにあなたが考えた案を書いて埋めてゆくの。
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私の場合は、ジャズのエッセイ書くときなど、真ん中に、ミュージシャン名やアルバム名を入れてます。
これ、マンダラートと呼ばれて、最近は、なんとかハックスという本や、アソシエのような雑誌にも紹介されてポピュラーな方法だけれども、けっこう頭使いますよ。
人間、通常、2個か3個程度だったら案は浮かぶんだけれども、それ以上の個数、ましてや8個なんて、なかなか浮かんでこない。発想の訓練をしていない人はね。
これを毎日やるほうが、よっぽど脳力もアップし、しかも実益とも結びつく気がするんだけど、どうですか?
2007/09/24(from「趣味?ジャズと子育てです」)