そもそものはじまりはポップだった
text:高良俊礼(Sounds Pal)
コメントカード=ポップ
八百屋でもスーパーでも、薬屋でも文房具やでも、とにかくお店屋さんに入ると、商品にコメントカードが貼ってあることがある。
それを“ポップ”というのだが、CD屋の仕事で一番重要なのが、毎日このポップを書くことだ。
タテ5cm、ヨコ9cmの紙に、アーティストの素性やCDの聴きどころなどを、分かりやすく書かなければならないポップ書きは結構大変な作業だが、ポップを読んでCDを買ってくれるお客さんも多いし、ポップに書いてあることがきっかけで、お客さんとの会話が弾めば嬉しい。
ポップがきっかけだった
何でこんなことを書いているのかというと、実は私が新聞や雑誌などのメディアで文章を書いたり、奄美テレビで「音庫知新」なんていう音盤紹介の番組をやっているのも、そもそもの始まりはお店で書いていたポップのことがきっかけだったからだ。
以前「奄美新聞」が「大島新聞」であった頃、記者さんでお店に足しげく通ってくれた方がいた。
何度か来て顔見知りになっていくうちに、お約束の如く音楽談義で盛り上がった時に、「そういえばこの、CD1枚1枚についているコメントは、アナタが書いているんですか?」ということになり、「これとこれとこれは私が書いたものですよ」と答えたら「あの、良かったらうちのヤング欄で何か書いてもらえないでしょうか」と、最終的にそんな話になってしまい、「奇盤、珍盤太鼓判」というタイトルで連載をはじめた。
それから新聞や雑誌などへの連載から、音楽本への執筆参加、極めつけは地元テレビの番組にまで面体を晒すに至り、「CD販売業」の人間が「CD紹介業」も兼ねることになってしまった。
だから奄美新聞でまた連載をさせて貰えると聞いた時は、昔連載していたことから、今に至るまでにあちこちで書いてきたことや、おしゃべりしたことなんかを思い出して、とても感慨深いものがあったのだ。
店頭ポップ 文章
「音庫知新~かわら版」には、番組に絡めての音楽の話や、ロケ地での出来事、そして大好きな名瀬の街の思い出などを、ざっくばらんに書いた。
本当のことを言えば、書きながら色んなことが頭に浮かんできて、「あんなことを書きたかったな」とか、「この音楽は素晴らしかったな」とか、もうソワソワと落ち着きのない気持ちになっている。
今書いているこの文章も、理想は店頭ポップである。
あの短いがゆえに色々と想像力をかき立てる文章みたいなニュアンスが、画面の上で出せたら幸いだし、そこから皆さんと、たくさんの“素敵”とが出会うきっかけが生まれでもしたら、それこそ至福だ。
記:2014/09/08
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)
『奄美新聞』2008年5月3日「音庫知新かわら版」掲載記事を加筆修正