静かなるガールズ&パンツァー

      2018/08/02

ガールズ&パンツァー 劇場版 (特装限定版) [Blu-ray]

うるさいガンダムバトル

ガンダムの世界での戦いは戦闘中のパイロット同士の会話が騒々しい。

その一方で、ガールズ&パンツァー(以下ガルパン)の戦いは静かだ。

ガンダムはそもそもの企画の発端が「ロボット同士のチャンバラ」であるため、どうしても、敵と味方同士が、「何故ララァを巻き込んだ!ララァは戦いをする人ではなかった!」とか「違うよ! あなたはマリーダさんだ!」などと言い合いながらモビルスーツ同士が戦う。

なぜか敵と味方との通信回線が開いた状態で戦うことが多いんだよね。

とくに、Zガンダムのカミーユやユニコーン・ガンダムのバナージなんかはうるさいったらありゃしない。
二人とも似たタイプのニュータイプパイロットだし、むしろ、この2人はガンダムの「ロボットちゃんばら」というトーンマナーを正しく体現している主人公ともいえるのだけど、なんだか学校の先生にいちいち正論で反抗している青臭い中学生、あるいは高校生にも見えるところが、ロボットちゃんばら以前の未熟な青春劇に感じてしまうところが鬱陶しさの原因なのかもしれない。

静かなるガルパンバトル

その一方で、ガルパンのラスボス戦は静かだ。

アニメ本編のラスト、主人公の西住みほが戦車長の四号戦車と、みほの姉・まほが戦車長のタイガーIとの戦い(県立大洗女子学園 vs 黒森峰女学園戦)。
また、『劇場版』のラストの戦いも静かで手に汗握る。
西住姉妹のタイガーIと四号戦車H型と、大学選抜チームの島田愛里寿が駆るセンチュリオンMk.1との戦いだ。

必要以上の会話はなく、目まぐるしく戦車が動き、忙しく風景がうつりかわる。
嫌が応にも緊迫感が高まる。

普通の戦闘はこのようなものなのだろうが、どうもガンダムやドラゴンボールなどの「うぉぉおお!」な戦いっぷりに慣れてしまった耳には新鮮な上に、非常に緊迫感が漂った描写に感じる。

響き渡るは戦車のエンジン音のみ。
かえって、静けさが引き立つ。

この静けさは、ケニー・ドーハムの『静かなるケニー』を軽く上回る。

『静かなるケニー』は、どちらかというとマイルド&リラックスな演奏が続くが、ガルパンのラストバトルの戦車戦は、真逆なシリアス&テンションマックスな描写でたたみかけてくる。

もちろん、普段のガルパンの戦闘は静かではない。

戦車戦はチーム戦であるために、無線による交信が常に交わされ、盛り上げキャラであるヘッツァーのカメさんチームなどは、キャーキャーと五月蠅いったらありゃしない。

しかし、だからこそ、最終戦のボスキャラ同士の闘いの静けさが嫌が応にも引き立つのだ。

このダイナミクスの緩急が素晴らしい。

ガルパンの面白さは、戦車好きにとってはリアルな戦車の描写や、マニアのツボを押さえた戦車のセレクトなどもあるが、戦いの描写にもあるのだ。

記:2016/09/17

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