ラウンドバーニアン~銀河漂流バイファム
ROBOT魂 銀河漂流バイファム [SIDE RV] バイファム (ツインムーバー装備)
私は、かれこれ20年来の「SF3Dオリジナル」のファンで、当時のホビー・ジャパンの横山宏の連載を夢中になって読み、ニットーからキットが出たときは、喜び勇んでプラモを何箱も買ったものだ。
あ、最近のファンには「SF3D」と言っても分からない人がいるかもしれない。「マシーネンクリーガー(MaK)」のことです。
MaK世代の人は、ジェリカンおじさんといっても分からないんだろうなぁ、ちょっと寂しい。
それはさておき、「SF3D」の魅力は、なんといっても、そのメカデザインの独特さだろう。
横山宏のデザインとモデリングは非常に独創的で、このアンバランスさの中のバランス感覚とでも言うべき、アクの強い曲線と、強いミリタリー色の漂うテイストは、なんとも言えずにスケール・モデラーの心をくすぐるものがある。
また、曲線フェチの私の心も刺激してやまないものもあった。
1/20 マシーネンクリーガー S.A.F.S. SPACE TYPE ファイアボール
しかし、「SF3D」のメカの魅力は、そのフォルム、シェイプだけにあるわけではない。
なんというか、どの兵器にも共通する、ある種の雰囲気のようなものがあるのだ。
私は、その雰囲気、漠然とは感じていつつも、具体的には、それが何なのかをうまく掴むことが出来なかった。
しかし、『モデルグラフィックス』の2000年6月号(vol.187)で脊戸真樹氏が「SF3D」の特徴を端的に言い当てている。
氏は、3つポイントを上げているが、その中の「ちょっと弱そうに見せる」というくだりが、なるほどと思った。
武器はなるべく少なめに。ということだ。
これこそが、「SF3D」の兵器を「SF3D」たらしめている大事な要素なのだ。
なるほど、たしかに「SF3D」の兵器は、はるか未来の兵器にも関わらず、どこか現代っぽさ、いや、むしろ第二次大戦中の兵器のテイストを漂わせている(特にシュトラール軍)。
その上、ほとんどの兵器は、一つの兵器に一つの武装という設定がほとんどだ。
おまけに、どこか非効率で不便そうな感じも漂わせている。
とくに、シュトラール軍におけるP.K.A.(パンツァー・カンプ・アンツォイク)の兵器、ノイ・パンツァー・ファーストなんて、たしかに命中すればかなりの威力だとは思うが、そんなにいくつも携帯出来るような代物ではないし、昔、ホビー・ジャパンから発売されていたシミュレーション・ゲームのルールでは、P.K.A.の撃てるノイ・パンツァー・ファーストの数は2発までだったはずだ。
命中すれば威力のある兵器なのかもしれないが、2発までしか撃てない兵器というのもねぇ……。
しかも、固定武装は無しときているのだから(P.K.Aのバージョン・アップ版のグスタフには固定武装はあるが)、もう強いんだか弱いんだか分からない。
というよりも、撃ち尽くした後は、丸腰状態になってしまうのだから、やっぱり非効率このうえない兵器なのかもしれない。
「SF3D」に登場する兵器のこういう非効率さというかアンバランスなところを逆に魅力に感じる人も多いのだろう。
完全無欠ではない綻びのようなところに我々は魅力を感じるのかもしれない。
ジャズで言えば、ピッチも音色もフィンガリングも不安定なジャッキー・マクリーンのアルトサックスに強烈なジャズ臭を感じるのと同じようなものだ。
さて、この「ちょっと弱そうなところ」は、『銀河漂流バイファム』における「ラウンド・バーニアン」にも同じことがいえる。
ラウンド・バーニアンとは、一見、ガンダムのモビルスーツに近い、身長20m弱の人型のロボットだ。
しかし、モビルスーツと大きく異なるのは、武装が貧弱なこと。
モビルスーツは、たとえば『Zガンダム以降』の作品からは顕著になってくるが、固定武装や隠し武装が多い。
頭部のバルカン砲や、指の間にある鳥モチや信号弾、格闘戦用のビームサーベルなど、下手に近づけば、胴体の意外なところからビックリするような武器が飛び出てきそうなヤバさがある。
モビルスーツの武装の多さは、それはそれで魅力かもしれないが、私はラウンド・バーニアンの武装の貧弱さに惹かれている。
少なくとも、劇中に登場する主役メカのバイファム、そして準主役級のネオファムには固定武装が見当たらない。
ビーム・ライフル一本という外部武装のみで、ラウンド・バーニアンはククト軍の機動兵器と戦う。
たった一つの武器だけで敵と戦うというこのシンプルさ。
登場人物が子供ばかりで、子供でも操縦出来る兵器という演出上の制約なのかもしれないが、結果的にビーム・ライフルを奪ってしまえば、単なる“巨大な宇宙服”にしかならない、このラウンド・バーニアンというメカに、私は非常なる愛着を覚えるのだ。
また、ガンダム以上に曲線が多様されたデザインも、曲線フェチにとってはたまらない魅力だ。
メカのデザインはファースト・ガンダムと同じメカニック・デザイナー大河原邦男なので、全体から漂う雰囲気はガンダムのモビルスーツと同じものが感じられるが(ディルファムの胴体なんか、ジムそっくり)、無骨で重厚なモビルスーツのボディと比較すると、ラウンド・バーニアンのシルエットは、より洗練され、エレガントさの漂うデザインとなっている。強い弱いは別としても、このエレガントなシルエットは、見ていて飽きない。
モビルスーツが人型の戦車とすれば、ラウンド・バーニアンは人型のスペースシャトル(もしくはNASAの宇宙関係の乗り物)に見える。
もっとも、私がラウンドバーニアンに宇宙的なテイストを強く感じるのは、バイファムのオープニングの印象によるものなのかもしれないが……(『バイファム13』の日本語の歌のバージョンではなく、オリジナルの方のTAOによる英語の歌バージョン《ハロー、バイファム》のほうです)。
私が一番好きなラウンドバーニアンは、やっぱり主役メカのバイファムで、特に、意外に太く、微妙な曲線ラインが魅力的な脚部の造形がたまらない魅力となっている。
ネオファムは、ちょっと、あの赤い色がキツイ。
優美なトランファムの細身なシルエットもなかなかに良いと思っている。
『銀河漂流バイファム』、ストーリーも秀逸だし、メカも魅力的だし、今になってもなかなか目の離せない作品なのです。
記:2002/12/02