sakura,sakura...
アート・オブ・ノイズの《カミラ》という曲が好きだったんですね。
これは、2枚目の「イン・ヴィジブル・サイレンス』というアルバムに収録されているナンバーなのですが、シンプルなメロディの繰り返しが非常に印象的なのです。
《ビート・ボックス》とともに、彼らがまだトレバー・ホーンの傘下だった頃の代表作《モーメンツ・イン・ラヴ》の姉妹曲ともいうべきテイストのナンバーですが、開放的かつ拡散的な《モーメンツ・イン・ラヴ》と比較すると、《カミラ》というナンバーは、ビシッと贅肉が引き締まったストイックな感じのするテイストです。
その差は、おそらくベースなんだろうなと思います。
引き締まった音で、引き締まったベースラインが奏でられる《カミラ》は、アルバムの中においては、代表作というわけでもなく、どちらかというと、《パラノイア》や《レッグス》や《ピーターガン》などのヒットナンバーの陰にひっそりと佇む隠花植物的な位置づけの曲だと思います。
しかし、おそらくは人の声をサンプリングした音色で奏でられるシンプルな旋律と、バックのリズムを力強く彩るパーカッションが心地よく、高校3年生の頃の私は、この曲をかなり愛聴しておりまして、放課後、新宿や渋谷に遊びに行く時は、雑踏の中を歩きながら、この曲をウォークマンで聞いていたものです(暗いですねw)。
それから何年も経ち、ジャズばかり聴いていた私が、ふとアート・オブ・ノイズのことを思い出して、YAMAHAのV50で打ち込んでみたのが、このナンバー《sakura,sakura》なのです。
当時の私は、デューク・エリントンの《Cジャム・ブルース》のように、少ない音で作られたメロディに夢中で、後に4音だけでテーマの旋律を形成する《雪月花》という曲を作ってみたりもするんですが、この《sakura,sakura》という1時間ほどで完成させた小品は、「少ない音数」を意識し、なおかつ、アート・オブ・ノイズの《カミラ》や《モーメンツ・イン・ラヴ》のように、同じメロディを繰り返しても飽きない曲を作りたいなという思いで作ってみた曲です。
少しずつドラムやパーカッションの音が増えていくような打ち込みにしたのですが、エフェクトをかけたら、かなりインダストリアルなリズムトラックになりました。
それなのに、美しく儚い花の代表ともいうべき「桜」をタイトルにしたのは、安直ではありますが、哀れっぽい「和」的な旋律から桜を連想したからだと思います。
アート・オブ・ノイズのような反復曲は、けっこう骨太なのですが、この曲は、ベースを入れなかったということもあるのか、ちょっと線が細い感じがします。
そこがまた「桜」なんで、それはそれで良しと思ってはいるのですが。
記:2015/10/20