秋刀魚メモ
私は魚だったらほとんどなんでも好きだが、特にサンマが大好きで、サンマとビールと大根おろしのセットが食卓に並んでいるシチュエーションを思い出すだけで、腹がグーと鳴るほどだ。
サンマは旨い。
内臓やハラワタの苦味が特にうまい。
もちろん身も、したたる脂も旨い。
全部旨い。
全部残らず平らげたい。
自慢じゃないが、ある地方の料理屋で、サンマを頭と骨だけの姿に綺麗に平らげたら、カウンターの中の板前さんから「兄さん、サンマ食うのは俺よりうめぇ」と感心されたほど、私はサンマが好きだ。
大好きなサンマ。
好きなだけに愛着もひとしお。
だから、鯛について聞きかじったこと、読んでなるほどと思ったことを忘れないようにまとめてみようと思う。
サンマは「秋刀魚」と書くし、実際スーパーの店頭に並びはじめるのも秋だが、本当に旨いサンマのシーズンは秋ではない。
一番おいしいタイミングは、8月末から9月の初旬。
夏のサンマは、北海道の東(根室沖)で群れているが、この時期のサンマが一番旨い。脂がたっぷりと乗っているからだ。
夏の間は北海道近海で群れているサンマだが、秋の到来とともに南下してくる習性がある。
釧路、根室の海域から、三陸沖、茨城県の常磐沖、千葉県の銚子、房総半島というコースだ。
スーパーなどで安売りで並ぶサンマは、秋になって南下してきたところを捕らえたもの。
つまり北海道で群れていた一番美味しい時期のサンマではない。
仮に冷凍モノだとしても、北で獲れたサンマのほうが、南下してきたときに捕らえられた新鮮なサンマよりも美味しいのだそうだ。
サンマを選ぶ際は、身が大きいほうが良い。
痩せているとそれだけ脂が少なく、かつ小骨が目立って食べにくい。
尾の付け根が黄色くなっているサンマは美味。
サンマを焼くのは難しい。
火が強すぎると脂が飛んでしまう。
弱火だと生臭さが消えない。
サンマの漁方は、棒受け網が主流。
光に集まるという習性を利用した夜間作業が多い。
集魚燈でサンマを集めて網を一気に引き上げ漁獲する。
サンマの水揚げ量日本一なのは気仙沼港(1997年)。
サンマの塩焼きは、ビール、日本酒はもちろんだが、意外にワインも合う。
それも魚料理に合うと一般的に言われている白よりも、酸味の効いた赤のライトボディが、サンマの脂の旨さとピッタリとマッチする。
「秋刀魚が出れば按摩が引っ込む」という駄洒落があるが、それだけサンマは身体に良いという喩え。
昔から夏バテした身体へのスタミナ補給とともに、肩凝り、腰痛が治ると言われていた。
「サンマ騒がせで豆腐屋上がったり」という言葉もある。
“按摩”と一緒で、安いサンマに客を奪われ豆腐が売れなくなるという意味。
秋刀魚の脂肪には、血中コレステロールを下げる働きがあり、血栓をできにくくする。
また、脳を活性化させるというDHA(ドコサヘキサエン酸)もたくさん含まれている。
また、動脈硬化を防ぐEPA(エイコサペンタエン)、目に効くビタミンE、ビタミンA、貧血の予防になるビタミンB12なども含まれている。
「秋刀魚」という漢字が使われるようになったのは、明治末期から大正初期。
江戸、明治時代は「三馬」という漢字表記だった。
サンマの親戚はサヨリ、そしてトビウオ。
※参考文献&教えてくれた人
下田徹『板前修業』(集英社新書)
よく行くイタリアン・レストラン、そして日本料理店のシェフ、
および親方。どうもサンキュー。
m(__)m
記:2002/09/23
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