「ある日突然」恋人が出来て的なオイシイことを期待してはいけない。
2015/06/03
代理店に勤める友人が、今、少女マンガを調査、マーケティング中のようです。
今までは興味の無かった少女マンガや雑誌を片っ端から読みまくって、そこで感じた傾向を先日飲み屋のカウンターで話してくれました。
「なんかさぁ、女の子って“ある日突然変身しちゃいました”な世界に憧れるんですかねぇ?」
そういえば、思い当たる節あります。
私が好きなアニメに『きらりんレボリューション』があるのですが(笑)、これは、アイドルになっちゃった女の子の話だもんね。
これは『ちゃお!』に連載中の人気漫画で、私も4~5冊読みましたが、どうも原作のマンガは絵もストーリー展開もコマ割も稚拙なので、読んでいて疲れるので、いつのまにか読むのを諦めてしまいましたが、アニメのほうはよく出来ている。
毎週、20分ほどの尺の中で、過不足なくストーリーを上手につめこんでおり、アニメのほうはマンガと違ってサクサクと見れるので、私は毎週チェックしています。
どんな話なのかというと。
主人公の月島きらりは、物語の最初は、芸能界の話題にも疎いし、興味もない。
食べることだけが大好きな女の子なのですが、あることがキッカケで突然芸能人目指す!となって、突然アイドルになって、ライバルからの嫌がらせや、監督などのその道のプロからの厳しい指導もあるのですが、基本的にはドタバタながらも順風満帆な芸能人生を送っている。元気で楽しくアイドルやってま~す!な話。
映画どころかオペラにも出るし、ブランドショップもプロデュースするし、香水もプロデュースするし、バラエティ番組にも、ラジオにも出演するし、もちろん歌手としても活動して、新しいユニットも好調。
当然、新しいテーマに挑む際は、シロウトゆえ多少の苦労はあるのですが、結果的にはうまくいくっています。
ある日突然アイドルになった女の子が、女の子が恐らくは抱くであろう夢を次から次へと短期間にかなえているのです。
きらりんは、今幼稚園や小学校低学年の女の子に大人気ですが、分かるような気がする。
毎回毎回、無垢で天真爛漫な主人公が、視聴者に変わって、願望をかなえてくれちゃうからです。しかも、“ある日突然”アイドルになっちゃった女の子が、というところがミソです。
女の子の“ある日突然”といえば、「白馬に乗った王子様」もそうですよね。
彼は、“いつの日か”やってくるもの。
“いつの日か”は、“ある日突然”という言葉にも置き換え可能です。
でも、あれれ、ちょっと待てよ。
「あのさぁ、少女マンガの“ある日突然”ってその通りだと思うんですけど、でも、少年漫画にも多くありません?」
「え、そうですか?」と友人。
「だって、ドラえもんがまさにそうじゃないですか」
あと、恋愛系の漫画もそうかもしれないですね。
たとえばだけど、だいぶ昔だけども、村生ミオの漫画で、タイトル忘れちゃったけども、学校の美人教師が“ある日突然”、「私はあなたの婚約者です」と家に押しかけて一緒に住む話があったし(物語中盤には可愛い妹もおしかけてくる)、ドラえもんだって、“ある日突然”未来から猫型ロボットがやってくるところから始まるわけでしょ?
つまり、“ある日突然”に、主人公にとって都合のいい存在が転がり込んでくる。
その主人公は、さえないタイプがほとんどだし、“都合のいいもの”を手に入れるための努力はしていない。
だから、目の前にある幸せな状態への自覚が薄く、したがって、結果的に宝の持ち腐れなことも多いのです。
だからこそ読者はシンパシーを抱くんでしょうね。
「くっそー、俺が主人公だったら、ドラえもんを騙して、金儲けしまくるのにな~」
とか、
「ああ、俺が主人公だったら、この美人教師と毎日しまくるのになぁ、なんでやらないんだろ?」
とか、
そういった妄想を描きやすい(笑)。
ある日突然、超能力が身についたり、ある日突然巨大ロボットと操縦するようになったりと、人を魅了するストーリーのお膳立てには「ある日突然」な要素が必要不可欠なのかしら? とすら思うほど。
ま、ある意味、読者をひきつけるストーリー作りの定石かもしれませんね。
しかし、だからといって、現実世界では、ほとんど“ある日突然”、幸せな状態が訪れることはないです。
にもかかわらず、ひそかに“ある日突然”を期待している人も多いのではないのかな?
ある日突然、宝くじが当たって億万長者。
ある日突然、ドラえもんがあらわれて、未来の道具で悩みを解決。
ある日突然、タレント事務所にスカウトされて芸能人デビュー。
ある日突然、ヘッドハンターが現れて転職、給料アップ。
ある日突然、目が覚めたら部屋に超カワイイ女の子がいて「あなたのお嫁さんになるために○○星から来ただっちゃ」(笑)
ある日突然、魔法使いがあらわれて「あなたの夢を3つだけかなえてあげましょう」
ある日突然、戦争がはじまってスーパーロボット兵器に偶然乗り込み、敵をやっつけエースパイロットになる。
ある日突然、家にはメイドが住み込むようになって、帰宅するたびに「お帰りなさいませご主人様」
うーん、マンガな話だねぇ。
現実にはありえないから、マンガの話は面白い。
だけど、面白いからって、マンガと現実の世界と混同してはならない。マンガの世界観を現実に求めてもしょーがない。
だから、私たちは、毎日コツコツと働き、勉強し、気のあう人と酒を飲んだり、飯を食ったりしながら楽しく生きているわけです。
ラクしてある日突然、欲しいものを手に入れたい願望を持っている人は、マンガの読みすぎか、単なるナマケモノさんだと思ふ。
ある日突然はナマケモノさんには来ません。
しかし、普段から努力している人にはチャンスが訪れることはあります。
記:2007/09/26(from「趣味?ジャズと子育てです」)