椎名林檎の《すべりだい》

      2016/01/29

entotsu

椎名林檎のアルバムで一番お気に入りなのは、『加爾基 精液 栗ノ花』だが、これはあくまで、トータルで見た話。

アルバムのコンセプトとか、全体の統一感とか、雰囲気とか、そうしたトータルのバランスと、音楽的完成度、パッケージとしての完成度は、他のアルバムと比べると群を抜いていると感じる。

そして、周到に練られたアレンジと選曲ゆえ、最初の曲から最後の曲までをトータルで楽しめるのが『加爾基 精液 栗ノ花』なのだ。

だから、このアルバムの中で「ものすごく好きな一曲」を言えといわれても、じつは、単曲のレベルでは、それほど思い入れのある曲はない。

単曲レベルで好きな曲、思い入れのある曲は、むしろ『無罪モラトリアム』や『勝訴ストリップ』のほうが多かったりする。

アルバムには未収録の曲に《すべりだい》という曲がある。

マキシシングルの『幸福論』に収録されている曲だ。

この曲は、私がもっとも好きな椎名林檎の曲の一つ。

歌詞もメロディもアレンジも声も、なにもかもが最高。

とくに、ギターソロが終わった後の後半部あたりから、自分の中では以上にテンションが高まってくることを自覚し、

♪記憶が薄れるのを待っている

あたりで、自分の中の切なさのボルテージは最高潮に達する。

1日20回以上リピートさせたこともあるほど好き。

友人の訃報に接した後は、ぼーっとこの曲をリピートしながら石油コンビナートの煙突をぼーっと眺めていたこともある。

あらゆる面で、私の日常のシチュエーションと感情にリンクし、すべりこんでしまった曲なのだ。

記:2005/07/03

 - 音楽