ドラマ『書店ガール』、あまり面白く感じられない理由

   

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↑理子さんとユニコーン堂さんが待ち合わせをした「ブック“セカンド”」の看板。ドラマ中では“ファースト”の上に、“セカンド”のシールのようなものが貼られていましたね。

なぜ、あまり面白く感じられないのだろう?

さて。

まゆゆと稲森いずみW主演の『書店ガール』もいよいよ後半。

「ペガサス書房・吉祥寺店、閉店か?存続か?」で揺れ動く物語の終盤に突入しました。

そのわりには、正直、あまり面白く感じられないのは何故でしょう?

一応、原作本も3巻まで読んでいるんですが、どの巻も面白いです。

今回のドラマは、1巻の内容が元になっているのですが、多少のアレンジはあるにせよ、面白い原作本の1巻の内容を、基本、忠実になぞるカタチにはなっています。

それなのに、なぜか「う~む、もう一声!」なんですよね。

大きな違いといえば、まゆゆ(渡辺麻友)は原作本では編集者の小幡さんと結婚しているんですが(まゆゆが演じる亜紀の結婚式から原作本のストーリーが始まる)、ドラマの中盤から、2人は付き合い始めているし、今回の「ペガサス書房吉祥寺店閉店」という劇中の大きなイベントの中では、二人の結婚、非結婚はあまり大筋には関係のないことなので、それはいいとして。

では、あまり面白くないと感じる理由は何なんだろうと考えてみました。

キャスティング? 演技?

まず、登場人物のキャスティングと演技なんですが、これは特に問題ないと思うんですよね。

副店長から店長になった西岡理子さんを演じる稲森いずみさんは、本当に原作のイメージぴったりの存在感と演技で、まるで小説の中から抜け出してきたかのようです。

書店一筋、アルバイトから正社員、正社員から副店長と20年かけて積み上げてきた苦労人的雰囲気よりも、美人すぎて優雅さのほうが勝ってしまう点が多少リアリティを欠いてるかなとも思いますが、それはそれで仕方なし。女優さんですから。

また、もう一人の主人公の北村亜紀(原作では小幡亜紀)を演じる渡辺麻友も、頑張っていますしね。

おそらく、あの前向きすぎるほどポジティヴな正確は、実際のまゆゆの性格とは180度正反対なのだとは思うのですが、不機嫌になると「への字」に曲がる口が、なんとも可愛いらしく、また仕事や問題解決の方向性を見出した時のはじけるような笑顔も素晴らしく、まさに「書店ガール」というタイトルを体現しているかのごとくの存在だと思います。

基本「いい人」ばかり

千葉くんを覗く周囲の若いスタッフたち。

彼ら彼女らは、「理子さんのことが信じられなくなりました」などと言って、お仕事サボタージュ中ですが、基本、悪い子たちじゃないんですよね。逆に本が好き過ぎて、純粋すぎる子たちって感じだし。

だから、元店長・現エリアマネージャーの言葉をコロッと信じてしまうのかも。

その元店長の木下ほうか演じる野島孝則エリアマネージャーも、その狡猾な立ち居振る舞いに、多少ムカッときますが、基本、「小悪党」って感じなので、コテンパンにやっつけるに値する「悪い人」という存在ではないんですよね。

生来の「悪」だったり、野望や野心がある上での「悪」ではなく、離婚した妻への仕送りと、大学生の娘の授業料のために、今、リストラされるわけにはいかないという背景があります。

イヤなオッサンであることには違いありませんが、普通の会社に2個か3個ぐらいは普通に転がっている、普通にイヤな上司と同程度の存在感ですね。

あっ、だからつまらないのか!

原作では、社長の腰巾着的存在の「悪代官コンビ」の2名が登場するのですが、その悪い人2人分の役を木下ほうか一人で演じているようなのです。

そこのところが「敵の弱さ」⇒生ぬるい⇒危機的状況でありながらも、なんだか中途半端という感じにつながるのかもしれません。

そうか。

悪役の描写が中途半端、というより、主義主張の違いや衝突はあるにせよ、それぞれの登場人物が基本、全員「いい人」、百歩ゆずったとしても、「そんなに悪い人とはいえない」程度の人たちばかりだから、対立の構図が生ぬるく感じ、そこが、いまひとつ『書店ガール』を面白く感じられない理由なのかもしれません。

べつに、半沢直樹と大和田常務の対立や、寺尾聰と竹中直人の対立のような多額な金銭の絡んだ、泥臭い対立の構図にする必要はないのだけれども、もう少し、「書店を閉店、社員をリストラに追い込む者」と「現場で書店と社員を守るために奮闘する主人公」の対立の構図の温度が熱ければ、もう少し面白く感じられたのかもしれません。

旨いビールを飲むためには

原作の1巻は、正直、前半から中盤にかけては、あまり面白く感じられませんでした。

しかし、西岡さんが店長となり、「ペガサス書房」吉祥寺店の閉店が決定したあたりから、物語が一気に面白くなってきたんですね。

この「一気に面白く」なった理由は、明確な「目標」と、明確な「敵」の存在が明らかになったからでしょう。

もちろん、社長をはじめとした経営側には経営側の理由があり、その理念は、決して「悪」ではないのですが、現場の理子さん、亜紀さんの視点でドラマが描かれている以上は、もう少し、社長をはじめ、エリア・マネージャーも「ワル」になって欲しいなと思います。

倒す価値のある「敵」がいるからこそ、主人公たちの頑張りと、努力の後のカタルシスも大きいのだから。

もっと温度の高い危機感に遭遇して、滅茶苦茶一生懸命働いてもらうような内容になって欲しいな。

一生懸命働かないと、ビールって旨くないじゃないですか?

だからこそ、閉店の危機を回避すべく、主人公の2人以下、吉祥寺店のスタッフさんたちには、死ぬほど働きまくってもらい、見終わった後は「おつかれさま!」とビールで乾杯したくなるような最終回を期待したいです!

おいしいビールが飲むためには、もっと苦難よ降り注げ~、立場上悪い役どころに回っちゃった人は、もっと「ワル」になれ~!

これが、今後、このドラマを面白く感じるための、唯一の演出なのではないかと思うのです。

もっとも、撮影はすでに終わっちゃってると思うけど。

記:2015/05/20

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