向左走・向右走(Turn Left・Turn Right)/試写レポート
“すれ違いネタ”ここにきわまれりといった感じ。
中学生の頃、学校の合宿か何かで一度出会い、互いにほのかな恋心を抱いたまま別れたままの二人。
一人は、気弱なバイオリニストの青年(金城武)。
一人は、おっちょこちょいで臆病な翻訳家(ジジ・リョン)。
二人の住まいは隣あったアパート。
1枚の壁を隔てて、部屋は隣同士だ。
しかし、二人はそれに気づかない。
男は自分との肉体関係を迫る女から逃れるために、いつも、アパートの玄関を出ると、右に出てゆく癖があり、女は夜になると悪魔に見えてしまう布切れの垂れ下がっている木を避けるために、いつもアパートの玄関から出ると、左に出てゆく癖がある。
隣あったアパートの、すぐ隣の出口から同時に出てくることがあっても、向かう方向が逆だから、互いはそのことにまったく気づかない。
好きな人はすぐ近くにいるのだ。
しかし、そのことに気がつかない二人。
いつも、女がいるところには男がいて、 男が道を歩いていると、女も気づかずに反対側の道を歩いている。
片方が回転ドアでビルの中に入ってゆけば、同じ回転ドアのもう一人は、ビルから外に出てゆく。
エスカレーターも一人が上れば、一人は下りエスカレーターですれ違う。
運命の糸以上に強力な偶然で、二人はいつも同じ場所にいる。
しかし、お互いそれには気づかない。
そんなある日、公園でのちょとしたハプニングがキッカケで、二人は知り合う。
打ち解けて話が弾むうちに、互いの正体が、中学のときに淡い恋心を抱いたまま別れた相手だということに気づく。
電話番号を交換して別れる二人。
しかし、突然の大雨で、互いがメモしあった電話番号の紙がグチャグチャになってしまい、インクがにじみ、番号の判読が不可能になってしまう。
思いつく限りに数字を類推して電話をかけても、間違い電話の連続。
さらに運の悪いことに、二人とも大雨でずぶ濡れになったため、 風邪をひいて寝込んでしまう。
ライバルの出現。
会いたくても会える術を失った二人。
おそいかかる様々なハプニング。
本当は壁一枚をへだてた隣に住んでいるのに、気づかないまま、相手への思いを募らせる二人。
彼女が橋の上を歩けば、彼はその橋の下でバイオリンを弾いている。
彼女が犬に「彼のことを知らない?知ってたら教えてね」と哀願すれば、しばらくたった後、犬が彼を見つけ、吼えて彼女にあったことを知らせようとする。でも、当たり前だけど「ボクは犬の言葉は分からないよ」
会いたい、でも会えない。
そうこうしているうちに、彼女は翻訳のセンスと知識を認められ、アメリカの出版社に就職が内定。
彼もバイオリンの腕が認められて、ウイーンのオーケストラに入団が決まる。
舞台となる台湾から、彼女は東へ、彼は西へ向かう日々が刻一刻と近づく。
会いたいという思いがつのる。
でも会えない。会える術もない。
しかし、彼らが旅立つ直前に、小さな(大きな)奇跡が起こる……!
いやはや、俺にしては珍しく、ストーリーを書いてしまった。でも、書きたくなるぐらい、面白い映画なんですよ。
心温まる純愛映画。
現代の大人のためのメルヘン。
気持ち良いテンポでサクサクと小気味よく進行してゆくストーリー。
二人の恋路を阻むテリー・クワンは、菊川玲をさらにスリムに可愛くバージョンアップした感じで可愛いし、主人公の一人、ジジ・リョンも“エンクミ”を知的に可愛くバージョンアップしたルックスが可愛い。
医者を演じるエドマンド・チュンのコミカルな演技も楽しい。
『ラヴァーズ』の金城よりも、私は気弱で純朴な青年を演じる彼に好感を持つ。
原作は、ジミー・リャオというベストセラー絵本作家の映画化だが、絵本的なメルヘンが見事に映像化された作品だと思う。
10月末からの公開だそうで、おそらくクリスマスシーズには新しい映画と入れ替えになってしまうのだろうが、それはとても残念。
なぜなら、このような映画こそ、クリスマスに恋人同士で見るに相応しい内容だと思うからだ。
彼女の赤い傘、彼の緑色の傘もクリスマス色だし、ね。
ほどよく笑えて、ほどよくコミカル。
ほどよく登場人物たちに心情移入できる。
あっという間の90分です。
今年見た恋愛映画の中ではベスト。
といっても、今年見た恋愛映画って『世界の中心で愛を叫ぶ』ぐらいなものだけど。
単純かつ面白い設定なだけに、様々な脚色が出来そうな題材ゆえ、日本のドラマが安っぽいリメイクをするのではないかと心配。
観た日:2004/09/29
DATA
ターンレフト・ターンライト
製作年 : 2003年
製作国 : 香港
監督:杜 峰(ジョニー・トー)
出演:金城武、ジジ・リョン、陳之財、テリー・クワン ほか
記:2004/10/27