『海街diary』の魅力は、綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すずの四姉妹のキャスティングだけではない。
2021/02/28
ポイントはCM映像にあらず
是枝監督の新作『海街diary』。
これオススメです。
綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの四姉妹。
広瀬すずは腹違いの妹という設定ではあるけれども、「4人が揃いも揃って美人&可愛過ぎる姉妹なんてありえへんでしょ⇒だから観に行こっと!」と考えている男子諸君は日本に数万人はいることでしょう。
私も、まずはこのキャスティングに惹かれましたから。
さらに、現在放映中のテレビCMで、綾瀬はるかに「人がきたらどうするの?!」と言われた裸の広瀬すずが、「うふ」っと走り去るシーンに萌えて「よし!観に行こう!」と決意した男子諸君も日本全国に十数万人はいると思うのですが、この映画のポイントは、このような「キャスティング」や「ツカミ映像」の部分のみにはあらず。
鎌倉
個人的には、やはり鎌倉が舞台というところが大きいと思いました。
海沿いの町、歴史を感じさせる佇まい、高低差が多く崖が多い町、風情と情緒をイヤミなく自然に体感できる町、鎌倉。
この鎌倉の風景を、四季を通して描かれているだけでも観る価値あると思うんですよね。
是枝監督の「優しい光」
是枝裕和監督は、どの作品も共通して、日本独特の「優しい光」を映像に封じ込める技術とセンスの持ち主だと思っています。
たとえば、監督を一躍有名にし、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で史上最年少の男優賞を受賞して話題になった『誰も知らない』。
この明るくも残酷な住宅街の白い昼間の光が独特で、私は映画の内容そのものよりも、当たり前すぎるほどの淡々とした住宅街に日常的に漂う空気がすぐ目の前のスクリーンに再現されていることに驚きました。
また、福山雅治主演の『そして父になる』の夕暮れ時の湿度を含んだ光、ペ・ドゥナ主演の異色作『空気人形』の無機質な空気に漂う光など、作品ごとに「光」の質は違うんだけれども、映画のストーリーやセリフ云々以前に、是枝監督が映像にする日本の空気と光が、なんとも私は好きなんですね。
きわめつけは『歩いても 歩いても』かな?
この映画も海沿いの町での話なんだけれども、もっとも『海街diary』の空気感と日差しに近いと感じています。
樹木希林も出ているし(笑)。
私はこの映画の日本家屋に差し込む日差しや、海沿いの町独特の空気感がすごく好きで、何度も見直しています。
海沿いの町の坂道を歩く阿部寛と夏川結衣や、樹木希林の姿がすごく絵になっているんですよね。
『海街diary』を気に入った人は、『歩いても 歩いても』を観てみるのも良いかもしれませんね。
美しい風景だけではなく、「チクッ!」と刺さる、残酷な人間の一面が少しずつ垣間見えてくる、ある種の「重さ」も含まれた映画でもあるのですが、「人間」に対しての「優しさ」を常に失うことのない是枝監督ならではの作品です。
そう、是枝監督は、基本的に人の優しさを信じている人なんじゃないかと思う。
特に、子どもへの目線が限りなく優しいのです。
愛情に溢れている。
『誰も知らない』や「奇跡』で描かれる、元気で生命力に溢れる子ども達の姿を観ると、子ども好きな私も元気になってしまうのです。
鎌倉が舞台であることに加え、監督が人に向ける眼差し、優しさが常に映像に通奏底流のように漂っているところも、この映画の魅力なんだと思います。
この映画を観て、優しく暖かい気分になった方は、ぜひ上にあげた是枝監督の他の作品もご覧になって欲しいなと思っています。
記:2015/06/12