風のささやき/トゥーツ・シールマンス

   

そよ風のようでもある

トゥーツ・シールマンスのハーモニカを愉しもうと思って買ったら、《ジムノペディ》や《ブルース・オン・タイム》の美旋律に酔い痴れる結果となった。

この状態がしばらく続き、先日、吉祥寺の『メグ』へ行ったところ、新しく設置されたアヴァンギャルドという、名前もカタチもカッコいいスピーカーから飛び出てきたサウンドに酔い痴れることになった。

赤く巨大な、まるでラッパの朝顔のようなスピーカーから鳴り響いたシンバルの輝きとブラシの鮮明さに驚き、粘りのあるベースのサウンドの虜となった。

トゥーツ・シールマンスのハーモニカは涼やかだとばかり思っていたが、アヴァンギャルドからは、熱くて柔らかい鉄の音がした。

決して耳障りではない、ハーモニカの高音の成分が心地よく耳を心地よく刺激した。

こんなリアルな音、うちのスピーカーじゃ絶対に再生は無理だからね。

しかし、このハーモニカおじさん(という呼び方が一番シックリくる)、ハーモニカも素晴らしいけど、口笛やギターも相当な腕前。

とにかく、リスナーの耳を強引にではなく、優しく引き付けるのが上手です。

「北風と太陽」の話じゃないけど、無理なく聴衆の関心を誘い込むという点では、トゥーツのハーモニカは、確実に北風ではなくて、太陽ですね。

風だとしたら、北風じゃなくて、このアルバムの邦題『風のささやき』じゃないけど、そよ風。

そよ風のように涼やかなアルバムだ。

記:2003/11/17

album data

THE WINDMILLS OF YOUR MIND/風のささやき (Emarcy)
- Toots Thielemans

1.Footprints
2.Blues On Time
3.Gymnopedie No.1
4.Round Midnight
5.If You Could See Me Now
6.When I Fall In Love
7.What Kind Of Fool Am I
8.Laura
9.The Windmills Of Your Mind
10.Sultry Serenade
11.C to G Jam Blues

Toots Thielemans (harm,g,whistle)
Mulgrew Miller (p)
Rufus Reid (b)
Lewis Nush (ds)

1989/12/19 & 20

 - 音楽