矢野顕子と坂本龍一が、もっとも尖っていた時代の音が好きなんです
2015/05/23
矢野顕子 ただいま。 愛がなくちゃね。
青春時代にたくさん聴いていたという過剰な思い入れはもちろんあるんですけれども、やっぱり矢野顕子の作品群の中では『ただいま。』と『愛がなくちゃね』の2枚が最高なのです。
80年代。
当時は、クラスに1人か2人の割合しかいなかった『宝島』や『ビックリハウス』を愛好していた、どちらかというと当時はマイノリティだった属性の若い子だけが特別な感度で感じ取っていた「あの感覚」。
やれ横浜銀蝿だ、金八先生だ、たのきんトリオだとクラスの大部分の生徒が80年代のベラダサさっぷりを象徴するような、音楽やドラマに夢中になっていました。
しかし、そんな田舎くささに背を向けていた少数派の「ヘンタイよいこ」だった子供たちも確実に存在していました。
さきほどクラスに1人か2人と書きましたが、大人になって周囲の人に話をいろいろと聞いてみると地方だと学年に1人か2人ぐらいのパーセンテージのようですね。
ま、人数の比率のことはさておき、とにもかくにも、そんな「ヘンタイよいこ」ちゃんのみが共有し共感していた「あのムード」が濃縮パッキングされているんですよ。
『ただいま。』と『愛がなくちゃね』の2枚には。
歌も音楽ももちろん素晴らしいのですが、当時の「あのムード」が、今再生してもまったく色褪せることなく部屋の空気を彩るのです。
左うでの夢 坂本龍一
上記2枚のアルバムの中でも、特に私が好きなナンバーのひとつに『ただいま。』のラスト曲、《ローズ・ガーデン》があります。
サウンドもアレンジも、すごく尖っていて、めちゃめちゃカッコいいナンバー。
楽曲全体のテイストがこれでもかというほどに坂本色に彩られていて、この時期の坂本龍一のセンスがいかに尖っていたのかがよくわかるナンバーでもあるんですね。
そして、このナンバーを聴いていると、同時期に発売された坂本龍一の3枚目のソロアルバム『左うでの夢』に収録されている《THE GARDEN OF POPPIES》や《RELACHE》とサウンド的に似た香りを感じます。
この2曲も『左うでの夢』の中では特にエッジの立ったカッコいいナンバーです。
つまり、この時期の矢野顕子が好きな人であれば、この時期の坂本龍一のサウンドも両方楽しめてしまうというわけです。
というより、当時リアルタイムでファンだった人たちは、当然のことながら両方楽しんでいたと思いますが。作詞に糸井重里が参加しているあたりも(愛がなくちゃね&左うで)、この時期特有の時代の匂いがしてきますね。
ちなみに『左うでの夢』というアルバムタイトルの命名者もあっこちゃん。
当時の「パルコ文化」的ともいうべき時代の香りを、これらのアルバムを聴いて懐かしむのもオツなものです。
記:1999/09/09