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ジャズと映画と本の日々:高野雲

ジャズを聴くと女性にモテるのか?

      2017/12/13

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結論から言ってしまえば「モテない」

「ジャズを聴くとモテるのか?」

これをテーマに、数年前に講演を依頼され、六本木ヒルズのカンファレンスルームでお話させていただいたことがあります。

講演のテーマは「ちょいモテオヤジのジャズ講座」(苦笑)。
参加された多くの方がたは、パソコンやIT関係の企業の方々でした。

そこで私が話したこと、結論から言ってしまえば「モテない」。
そう、男性は女性に対して「あること」を忘れてしまいがちなため、モテなくなる可能性の方が高いのではないか?でした。

その「あること」は後述するとして、まずは、なぜジャズを聞けば聞くほど、モテなくなる可能性が高くなるのかをお話しします。



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女性から嫌われる原因

とかくジャスを楽しむためには覚えることが多いです。もちろんあれこれ細かな用語など覚えなくてもジャズは楽しめるのですが、知識が増えることによって、ジャズ観賞の楽しみが深まることは確かです。

そして、これら楽しみの背景には必ず「言葉」があります。
ジャズマンの名前、レーベル名、曲名、奏法、楽器のメーカーなどなど、楽しみのバリエーションの広がりに比例して、身につけた言葉の数も増えてきているはずです。

また、所有するアルバムのが枚数増えれば増えるほど、多くの男性が潜在的に持つコレクション欲が増大し、レーベル、録音エンジニア、録音された作品の時系列、さらには時代背景などに対する関心も芽生えてくることでしょう。

つまり、ジャズが楽しくなればなるほど、好奇心や知識の量もそれに比例して増えるものなのです。

知識がつけばつくほど、それを人に語りたくなるのが人の常。
そう、ウンチクを並べたくなってしまうのです。
このウンチクこそが、女性がジャズマニアから遠ざかる大きな原因なのです。

データ好きな男子

男の子はデータが大好きです。

怪獣やウルトラマン、仮面ライダーの必殺技や身長・体重、カブトムシやポケモンの強さ、零戦や戦艦大和の性能や戦歴、鉄道やクルマのエンジンや開発エピソード、楽器の型番などなど、男子は小さな頃から興味を持った対象に関してのデータや数字を覚えたり、比較することが大好きなのです。

この気質は大人になっても続きます。
いや、自由に使える小遣いの額が増えたことによって、よりいっそうマニア度が高まる人も少なくないでしょう。

お金がかかる趣味にはデータの要素が絡むものが多いです。

たとえば、ジャズマニアに多いオーディオマニア。カメラにクルマにワインに鉄道模型……。
他と比較する数字の要素や、コレクション欲をくすぐる趣味が多いですよね。

ジャズも同様です。

知れば知るほど楽しみが増すし、勉強している過程そのものが楽しかったりします。

頭の中のデータの量が増えれば増えるほど、人と話すのが楽しくなってきます。

それが同好の士との会話であれば、それはとても有意義で楽しいひとときなのでしょうが、女性にとっては、固有名詞の羅列やデータの比較や分析を鬱陶しく感じるのです。

男性と女性の「好き」の違い

男性は「興味の対象」ありきですが、女性は「自分」ありきです。

戦艦大和
⇒46センチ砲
⇒すごい!
⇒存分に活躍できる機会がなかったことが惜しい!

ウルトラマンの飛行速度はマッハ5だが、セブンはマッハ7
⇒さすが「7(セブン)」!

こんな感じで、自分が好きな対象物のみならず、付随するデータも愛好する傾向があります。
あくまで、男性にとっての主役は「好きなもの」なのです。

一方、女性の場合は、主役はあくまで「自分」です。

自分を気持ち良くさせてくれる音楽、自分が主人公になれる音楽であれば、たとえそのアルバムが名盤でなくとも彼女にとっては名盤ですし、仮に世紀の大傑作と呼ばれている大名盤であっても、自分自身の感性にぴったりとフィットしないものであれば、駄盤であり駄演なのです。

「女子ジャズ」著者のジャズ観

私のこの漠然とした感覚が実感に変わったのが、ジャズライターである島田奈央子さんとの対談でした。

以前私はラジオのジャズ番組でパーソナリティをしていたのですが、その時に当時話題になった『女子ジャズ(Something Jazzy)』の著者である島田さんをゲストに出演していただいたことがあります。

Something Jazzy 女子のための新しいジャズ・ガイド

女子が良いと思うジャズと、男子が良いと思うジャズを交互にかけながら、男女が感じるジャズのツボの違いなどを話し合うことが番組のテーマでした。

島田さんと私の選曲は、同じジャズでありながらも、まったく肌触りの異なる音で非常に興味深いものでした。

銀座のアップルストアでイベントもさせていただきました

島田さんは、ジャズのことを「エスコートミュージック」と呼ばれていましたが、この一言からも女性にとってのジャズは、いや、音楽は、あくまで自分自身を心地よい気分にさせてくれるものなのだということが分かります。

女性にとってのジャズは

そう、女子にとってのジャズは、勉強するものでも、覚えるものでも、比較するものでも、コレクションするものでもないのです。

この女性の気質を理解しないまま、「このマイファニー、マイルスのミュートがたまらないんだよね」などとバーのカウンターで、決めゼリフを放ったつもりでも、それは大きな勘違いなのです。

男子にとっては、マイルスのトランペットが感動の対象なのでしょうが、女子にとっては「美しいトランペットの音色に包まれた自分自身」が重要なのです。

つまり「このジャズは素敵だね」ではなく「君に素敵なジャズが似合う」と語ることこそが重要なのです。

「あ~面倒くせ~」と思った時点で、「ジャズ=モテ」という幻の公式はほぼ潰えたといってもよいでしょう(笑)。

拡張する聴覚

もっとも、そんな下心でジャズを聴き始める人などいないでしょうから(いませんよね?!)、もう少し真面目にジャズを聴くことによる効用をお話ししたいと思います。

それは、「聴覚が広がる」という点です。

ジャズを聴き、ジャズに親しみ、演奏のポイント等が自然とつかめるようになってくると、確実に音楽の聞き方が変わってきます。

「聞こえ方」が変わってくるとでも言うのでしょうか。今までに何気なく聞いていた音楽も、新しい角度から新鮮な感動を味わえることもあるのです。

また、様々なジャンルの音楽に抵抗なく受け入れられるような耳が育ってくるでしょう。

ジャズと親和性の高いボサノバ、あるいはファンキージャズなど黒人特有のノリや甘い旋律に慣れ親しんでいくとソウルミュージックなどのブラックミュージックにも興味の触手が広がります。ソウルを起点にR&Bやファンク、ヒップホップなど、ブラックミュージック全般にも興味が広がっていくかもしれません。

また、ジャズ特有の粘りのあるアフタービートの感触が心地よく感じられてくると、レゲエなどリズムに粘りとバネのあるリズムの音楽にも触手が広がるかもしれません。

椎名林檎≈JAZZ

私の場合は、ジャズ以外の音楽としては、椎名林檎をデビュー当時から好きでした。

もちろん今でも彼女の大ファンですが、デビュー当時の彼女を聞いたときには、なぜか強烈に「ジャズの匂い」を感じたものです。

無罪モラトリアム

参考記事:椎名林檎は、よい。~無罪モラトリアムを聴いて

実際、彼女自身4ビートののリズムの歌を初期の頃から歌っていますが、そのようなリズムの形態がジャズっぽいから好きになったのではなく、ジャズが持つ特有の危険な匂いや、刹那的な香りを彼女の歌声や楽曲をから感じ取ったからなのかもしれません。

ヴォーカルが主役、バックのバンドはあくまでオケという関係ではなく、林檎ちゃんの楽曲の多くは、それぞれの楽器が有機的に絡み合って一つの演奏を形作っていることが多く、特にベースがヴォーカルに対して時に挑みかかるように、時に粘着質なほどに絡むかのように演奏している曲が多かったことも、ジャズっぽさを感じたのかもしれません。

私が直感的に感じたこの感覚、「椎名林檎はジャズっぽい」とファンの掲示板に書いたら、多くの人から「彼女はパンクだよ」「彼女はロックだよ」と鼻で笑われたものですが、多くの人から笑われたものですが、年を経るごとに、彼女のボーカルのスタイルはジャズヴォーカル的な表現に近くなってきており、例えば代表曲の《丸の内サディスティック》などは、初期の頃には見られなかった、ブルーノート(音程を半音下げること)を効果的にサビの箇所で使用しているので、初期に比べると、よりジャズ的濃度が濃くなってきていると最近は感じています。

また、最近では、サチモスという若手バンドにも注目しています。彼らの並外れたセンス、演奏力は、街中でBGMで流れていた数小節を聴いただけでピン!ときました。重たく安定感のあるリズムと、ビターなテイストは、まるで、良質でスリリングなジャズを聴いているようなヒリヒリした感触がリアルに迫ってきます。

参考記事:サチモスの《ステイ・チューン》がカッコ良い!

「モテ」以外のメリット

このように、言葉や理論で括れるジャス的な要素がない音楽でも、ある時街中で耳の中に飛び込んできた瞬間に「はっ!」となる瞬間が増えるのもジャズを聴くことによって感性が拡張した証なのかもしれません。

「モテ」には直接つながらないかもしれませんが、ジャズを上手に楽しむことができれば、それがひいては幅広く音楽を楽しめる感性が育まれ、より豊かに日々の生活を彩ってくれる。これこそがジャズを聴きはじめて味わうことが出来る大きな変化なのかもしれません。

じつはボツ原稿でした

さて、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

じつは、上記テキストは「ボツ原稿」だったんです。

昨年書いた『ビジネスマンのための(こっそり)ジャズ入門』用の原稿だったんですね(一部手を加えてあります)。

章と章の間に、軽い気分で読める「ちょっとした小話コラム」を挿入することになったのですが、その時のコラムのテーマが「ジャズを聴くと女性にモテるのか?」。

2時間ぐらいでグワワ~ッ!と書いて、どーだ!と編集を担当してくださった富永虔一郎さんにメールをしたら、「つまらない」との返信がw(゚o゚)w

まずは、せっかくこれからジャズを聴こうと思っている入門者の気持ちをハナから打ち砕く内容であると同時に、内容そのものが「あんまり面白くない」からボツ!ってことになりました。

でも、富永氏の判断は正しかったと思います。

出来上がった本をパラパラめくっていると、やっぱり、上記内容は本が持つトーンには明らかにミスマッチ。
でも、こういうバランスみたいなものって、書いている本人は目の前の「書かなきゃ」という気持ちばかりが先行してしまっているので、なかなか分からないものなんですよね。

このあたりは、やっぱり編集者が上手にリードしてくれないと書き手はあらぬ方向に暴走してしまう可能性もある。
そのあたりの手綱を握るのが編集者の力量なのでしょう。

さすが、中山康樹氏、後藤雅洋氏、寺島靖国氏と、名だたるジャズ評論家の編集を手掛けてきた編集者なだけあり、本当に私は上手に富永さんの手の平の上で転がされた感じですし、私自身も喜んで全力でコロコロと転がりました。

『(こっそり)ジャズ入門』が出版されて、1年以上経過したので、そろそろイイかな?と思って、ボツになったコラム原稿を公開してみました。
「つまらな」かったらゴメンナサイ。

記:2017/12/04

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