カフェモンマルトル

text:高野雲

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3つの《ファー・イーストマン》

      2017/08/11

大村憲司の『春がいっぱい』

中学生の頃、ギタリスト大村憲司のソロアルバム『春がいっぱい』にぞっこんだった。

春がいっぱい(紙)春がいっぱい/大村憲司

冒頭を飾る心ワクワク《インテンシヴ・ラヴ・コース》。

坂本龍一作曲でメロディがほぼ《フラッシュバック》(高橋幸宏の3枚目のソロアルバム『What Me Woorry?』に収録)な《セイコ・イズ・オールウェイズ・タイム》。

サポートメンバーとして大村憲司が参加していた際のツアーでYMOも演奏していた《マップス》。

シャドウズのカバー《春がいっぱい(スプリング・イズ・ニアリー・ヒア》。

ラストの《プリンス・オブ・シャバ》などが、最初に虜に成ったナンバー。

名曲揃い、名音揃い、名アレンジ揃い。

最初は上記の楽曲に夢中になっていたが、だんだんアルバムに慣れ親しんでゆくにつれ、チャキチャキと勢いのあるナンバーよりも、重く気だるい《アンダー・ヘヴィ・ハンズ・アンド・ハンマーズ》や《ファー・イーストマン》のほうに魅了されるようになった。

特に《ファー・イーストマン》の気だるさといったら!

う〜ん、気持ちえぇ!

気だるさに加え、とろーり蕩けるような旋律とギター、矢野顕子のサポートヴォーカルなど、聴きどころ満載、もう最高!

とにかく独特な雰囲気が漂うこの曲は、何度もカセットテープを巻き戻してリピート聴きをしていたものだ。



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ジョージ・ハリスンの原曲

これだけ1つの曲に愛着を持つと、オリジナルのナンバーも聴きたくなってくる。

この《ファー・イーストマン》は、ジョージ・ハリスンとロン・ウッドの共作だ。

オリジナルナンバーは、'74年に発売されたジョージのソロ『ダークホース』に収録されている。

Dark HorseDark Horse

演奏には、なぜか共作者のロン・ウッドは参加していないが、ジョージ・ハリスンのバージョンは、大村バージョンよりも、さらに気だるくとろ〜り蕩けるような心地よさを覚えた。

いや、逆にいえば、サポートメンバーがテクノポップ全盛期のYMOのメンバーが参加していた『春がいっぱい』のバージョンの方がカチッとし過ぎていただけなのかもしれない。

さらに、同年発表されたロン・ウッドのバージョンを聴くと(こちらにはジョージ・ハリスンも参加)、さらに輪をかけたように、極上のトロ〜リ具合。

うん、脳が溶けるほど気だるいわ。

え〜気分じゃ。

I've Got My Own Album to Do & Now LookI've Got My Own Album to Do & Now Look

スライドギターとベースラインの違い

同じ年に発表され、それほど曲調には大きな変化がないにもかかわらず、ハリスン・ヴァージョンよりも、ロン・ウッド・ヴァージョンの方が、よりいっそう気怠く感じるのは何故か?

この差は、スライドギターの使われ方の違いが大きいのではないだろうか。

両ナンバーともスライドギターがとろ〜りと使用されているが、ロン・ウッドのバージョンの方が、ヴォーカルにまとわりつくようにギターが奏でられている。

この蛇のようにネチっこく絡みつくようなスライドギターがダウナーな気怠さをより一層強調しているのだろう。

それに加えて、ジョージ・ハリスンのヴァージョンは、ベースラインに動きがあることに対して、ロン・ウッッドのバージョンは、ダラ〜リと全音符でルートを奏でている箇所が多い。

このような気怠い曲の場合は、ベースは頑張りすぎない方が良いようだ。

もちろん、大村憲司のカバーヴァージョンも大好きだが、やっぱり、この《ファー・イーストマン》は、あの曲調、メロディゆえ、トロ〜リ蕩ける演奏になればなるほど、曲からコクと味が出てくるように感じる。

そうなると、やっぱり個人的にはロン・ウッドのヴァージョンがベストかな。

大村憲司、ジョージ・ハリスン、ロン・ウッド。

この3人のミュージシャン(ギタリスト)たちが奏で、歌う《ファー・イースト・マン》は、そのどれもが、ミュージシャンのスタイルや個性が浮き彫りになるので、どれもが大好き。

でも、やっぱり気だるいナンバーゆえ、一番聴く頻度が高いのはロン・ウッドのバージョンなのかもしれない。

あひゃ〜、気怠い。

記:2017/08/10

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