雑想 2020年2月
2022/02/25
『Jazz Japan』の追悼ジミー・ヒース記事
今月号の『Jazz Japan』のメイン特集は「ニッポン・ジャズ100年」。
表紙の写真や特集内のカラー写真は、なかなかインパクトがあり、興味深いものがありますが、それ以上に「えっ?!」となったのが、テナーサックス奏者、ジミー・ヒースの追悼記事。
なんと、先月に亡くなられていたのですね。
追悼93歳。
ご冥福をお祈りいたします。
この追悼記事を書かれているのが、「コテコテ」かつ「コルトレーンを聴け!」の原田和典氏。
原田さんのテキストを読んで思い出したのですが、そうそう、ムトゥーメ(エムトゥーメ)は、ジミー・ヒースの息子なんですよね。
よし、『パンゲア』を聴こう!
また、ジミー・ヒースは、《ジンジャー・ブレッドボーイ》の作曲者でもあります。
よし、『マイルス・スマイルズ』を聴こう!
関節的にもマイルス繋がりの濃かったテナー奏者だったのです。
では、直接的な繋がりは?
やっぱり、ブルーノートのマイルスでしょう。
『マイルス・デイヴィス・オールスターズ』。
よし、《テンパス・フュージット》を聴こう!
流れるようで緊迫感のある個人的には印象に残るフレーズと、その背後で叩かれるアート・ブレイキーの印象的なフィルインの「例の箇所」が、とても印象的なのです。
分かる人には分かりますよね?!
ラルフ・ペーニャの豪腕ベース
豪腕、豪腕。
グイグイ低音。
ラルフ・ペーニャのベースは、「おらおら、ピアノよ、どんどん弾け!」的な強引さがあります。
そこがまた気持ちよい。
1961年に録音された『マスター・オブ・ザ・ベース』。
3人のピアニストとデュオ演奏をしています。
一人は、ジョー・オーバニー、
もう一人は、ハーブ・ゲラー、
そして、ピート・ジョリー。
ドラムなしでも、ガツンと行くぜ!と言わんばかりの、強靭ベース。
前へ前へとのめりこむような少々ツッコミ気味のタイム感は、それはそれで気持ちよいですね。
ウォルター・ビショップ Jr.の『スピーク・ロウ』で、後ろへ後ろへと引っ張るジミー・ギャリソンのベースと聴き比べてみると面白いかもしれません。
2人とも、強靭でガリッ!とくる骨太な低音を奏でるベーシストですが、
ギャリソン⇒プル
ペーニャ⇒プッシュ
という大きなタイム感の違いがあります。
『マスター・オブ・ザ・ベース』に収録されている《スピーク・ロウ》のツッコミ気味のぐいぐいベースとぜひ聴き比べてみてください。
ドイツ人女性ドラマー キャロラ・グレイ
ドイツ生まれの女性ジャズマン。
音楽活動の拠点はニューヨーク。
というと、私の場合、まずはユタ・ヒップ(p)を思い浮かべますが、ピアニストだけではなく、ドラマーもいます。
キャロラ・グレイ。
1992年に彼女は、観光でニューヨークを訪れ2週間ほど滞在しました。
いったん本国に戻ったものの、ニューヨークの魅力にはまってしまった彼女は、すぐに舞い戻ってきます。
シャイアンという「南アメリカのマイケル・ジャクソン」と呼ばれていたシンガーのバンドに参加するなど、ニューヨークではすぐに仕事にありつき、やがて自分のグループでレコーディングした音源を故郷・ドイツのレーベル「ジャズライン」に持ち込んだところ、オーナーのアレックス・ラインがいたく気に入り、発売されたのが初リーダー作の『ノイジー・ママ』です。
決まってほしいところに「パスッ!」とスネアがはまってくれる軽妙な心地よさ。
これは、おそらく15歳でドラムを始めた際、最初にお手本にしたジーン・クルーパの影響によるものだと思われます。
アート・ブレイキー、フィリージョー、トニー・ウィリアムスらのドラミングも勉強したそうですが、彼女のドラムの核となる部分は、黒人ドラマー特有の「揺らぎ」よりも、白人ドラマーの正確無比な音の配列が生み出す心地よさにあると感じます。
この北半球なリズム感覚に、ラテンやアフリカンなどの南半球のメロディ感覚が融合して生み出されるサウンドが、キャロラ・グレイならではの世界観を形成していると感じます。
エルヴィンやディジョネットのような「重くうねる」ドラミングではありませんが、軽やかにビシッ!と決まるところに決めてくれる「打」は、なかなかの聴きごたえ。
彼女のドラミングは、ジャズのみならず、ロック方面のドラマーにとっても、模範となるパターンも多いのではないかと。
相性良し!ベンとピーターソン
テナーサックス奏者、ベン・ウェブスターと相性の良いピアニストは?
といえば、真っ先に思い浮かぶのが、アート・テイタム。
『アート・テイタム~ベン・ウェブスター・カルテット』で極上の演奏を披露しているからね。
では、もう一人相性の良いピアニストを挙げるとしたら、それはオスカー・ピーターソンかな。
ピーターソンは、そのスタイル自体がテイタム直系ということもあり、2人とも音数の多い饒舌なピアノながらも、フロントの管楽器奏者を引き立てる伴奏の巧さも突出したピアニストだと思う。
ピーターソンのサポートの巧みさ、そして、シブい貫禄をゆったりとしたリラクゼーションをもたらすバイブレーションに乗せて提供してくれるのが、『ベン・ウェブスター・ミーツ・オスカー・ピーターソン』だ。
映画においても、昔から寡黙な人と饒舌な人のコンビが活躍する作品は面白いものが多く、たとえば、『メン・イン・ブラック』のトミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのコンビとか、『野良犬』の志村喬と三船敏郎のコンビなどは、それぞれのキャラクターが立つ絶妙なコンビだと思う。
それと同様、このアルバムでのベンとピーターソンは、まさにそのような名コンビっぷりを醸し出し、楽しく味わいのある演奏に仕上げてくれている。