ザ・ビリーヴァー/ジョン・コルトレーン

   

そろそろハードバップの枠にはおさまらなくなってきた

すいすい、するする。

まさに、文字通り、演奏が、気持ちよく、なんの破綻もなく、するすると流れてゆく感じを味わえる。

しかも、アルバムの最初から最後まで。

BGM的な聴き方ではないのに、しっかりとした名演なのに、それなのに、するすると気持ちよく流れてゆく演奏って珍しい。

チェンバースとルイス・ヘイズ(曲によってはアート・テイラー)。

彼らの安定したリズムが、まずは、するりするりの第1要因。

次いで、レッド・ガーランドのなめらかなバッキングと、流れるようなピアノソロ。

これが、するりするりの第2要因。

そして、コルトレーンの、ほぼ完成されたシーツ・オブ・サウンズ。

この音数の多さと破綻なく、流れてゆくさまは、いつまでも聴いていたいと思わせる不思議な催眠効果をも有する。

これが第3要因。

ドナルド・バードのサラリと気持ちよくフレーズが流れてゆくトランペットソロも、するりするりの第4要因かもしれない。

なんの変哲もない要素ばかりによって組み合わされているのかもしれないが、これだけの条件が揃うことも珍しい。

そういえば、マッコイ・タイナー作曲の3拍子ブルースも、するすると気持ちよい曲だ。

新しい境地へと向かいつつあるコルトレーンの姿を捉えたリアルなレポート。

もうそろそろ、ハードバップという枠組みとは彼のスタイルが折り合いがつかなくなりつつある時期。

しかし、かろうじて、この枠組のなかに収まりつつも、ときどき、コッソリとはみ出てしまっているという、微妙なギャップぶりをも楽しめる、興味深い1枚でもある。

記:2010/07/15

album data

THE BELIEVER (Prestige)
- John Coltrane

1.The Believer
2.Nakatini Serenade
3.Do I Love You Because You're Beautiful?

John Coltrane(ts)
Donald Byrd(tp)#1,2
Freddie Hubbard(tp)#3
Red Garland(p)
Paul Chambers(b)
Louis Hayes(ds)#1,2
Art Taylor(ds)#3

1958/01/10 #1,2
1958/12/26 #3

 - ジャズ