パンゲア/マイルス・デイヴィス
2021/11/21
怒涛の傑作
ヤバスゴい音楽の筆頭格といっても良いだろう。
マイルス・デイヴィスが到達した、ジャズもファンクもロックを呑み込み、己の内部でごちゃまぜに掻き混ぜ、混然一体となったまま吐き出された、怒涛のサウンド攻撃。
これらのことをイヤというほど味わえるのがマイルスの最高傑作と呼ぶ人も多い『パンゲア』というアルバムなのだ。
ロックなど目ではない
肉体的な高揚感が、やがてダウナー状態な精神的心地よさに繋がり、前半の《ジンバブエ》といい、後半の《ゴンドワナ》といい、いつも聴き終えるたびに、心地よい疲労感を味わうことが出来る。
空間を捻くりまわすマイルスのワーワーを装着した「電化トランペット」もたまらないが、ジミヘンにも影響を与えたというピート・コージーのぶっ飛んだギターもこのアルバムの聴きどころの一つ。
凶暴かつグジャグジャなサウンドの塊は、聴き手のマインドをかき乱すだけかき乱すが、このカタルシスは、どの種の音楽からも得られないもの。
へヴィメタルもスラッシュメタルも目ではない。
重たくスケールの大きなウネリはハードロックの比ではないのだ。
その上、このアルバムは、何度聴いても新たな発見が尽きない演奏なのだ。
ゴンドワナ
ところで最近の私は、2曲目の《ゴンドワナ》のほうに夢中になっている。
というより、ようやく長らく続いた興奮がおさまり、2枚目(2曲目)をじっくり聴ける境地に達したというべきか。
奥底では猛るマグマがふつふつとしていつつも、それをクールに抑制したサウンドの《ゴンドワナ》。
表面的な清涼感のみにとどまらず、休火山がいつ爆発するか分からない静寂さと、不気味な予兆をはらみつつも演奏が進行してゆく。
よって、《ジンバブエ》とは対照的なスタティックな佇まいにもかかわらず、感じる緊張感は《ジンバブエ》と同等、あるいはそれ以上かもしれない。
不気味に蠢く底知れぬ妖気を暗示しつつも、あくまで演奏そのものは、あくまでクール。
こんなテイスト出せる人って、やっぱりマイルスしかいない。
記:2007/07/26
album data
PANGAEA (Columbia)
- Miles Davis
1.Zimbabwe
2.Gondwana
Miles Davis (tp,org)
Sonny Fortune (ss,fl)
Pete Cosey (g,syn,per)
Reggie Lucas (g)
Michael Henderson (elb)
Al Foster (ds)
Mtume (per)
1975/02/01 大阪フェスティバルホール